『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  575

2015-07-25 05:44:12 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 『パリヌルス、今日の事前協議これで決着だな。ヘルメスの事、明日、三人が集散所に出かけること、軍団長に通しておいてくれ』
 『おう、判った』
 『おう、二人とも、ちょっと待ってくれ。話に集中していて、すっかり忘れていた。新しいスペッシャルパンだ。味を見てくれ。俺もまだ十分に味わっていない』と言って、オロンテスは小袋よりパンを取り出し三つに引きちぎって二人に手渡した。パリヌルスとオキテスは、パンのちぎりぐちをに見入った。
 『このパンはだな、蜂蜜と羊乳を練りこんで焼いたのだ』
 オロンテスは二人の口元を見て問いかけた。
 『口当たりはどうだ?』
 『おう、オロンテス、これは旨いっ!旨いぞ。蜂蜜と羊乳でこんなにうまいパンできるのか。感動もんだな』
 『こいつはいい!明日、スダヌスに持って行ってやろう。奴の驚く顔が見たい。その驚いたところで我々の思うところへ畳み込む。パリヌルスにオロンテス、明日一日で考えていることの大半にめどがつく。俺の想いでは、話のまとまりが向こうからやってくる。そのような気がする、事は成る!残るは新艇の価格の問題だ。これを決めるのは、容易ではないぞ。このことに携わる統領以下五人が心してかからねばーーー』
 『俺の考えているのは、この商品の取引きをするであろう当事者たちの市場規模が如何なるものかと気にしている。また、テカリオンが来るのは、何時かなとも気にしている。このことに携わる者は問題を共有してしっかり対処していこう』
 『おう、オロンテス、パンはすこぶるうまい!しかしだ。蜂蜜、羊乳を使用するに限りがあるだろう。限定生産だな』
 『そうだ、頭を痛めているのはそのことだ。まあ~、集散所で求めるわけだから、コントロールは出来るが、コストの問題がある。値段が高くてもうまければ売れると思うが、客に甘えたくもない』
 『力を貸す。そのためにオキテスも俺もいるのだ』
 『おう、ありがとう。頼りにしている』
 『よしっ!終わろう。オキテス、いいな、明日はキドニア行きだ』
 三人は場を解いて各自の持ち場へと向かった。
 パリヌルスは、ヘルメス艇の使用の承諾と三人の明日の行動予定を伝えにイリオネスの宿舎へと向かった。
 イリオネスは、アヱネアスを迎えて話し合いの最中である。
 『なあ~、イリオネス、親子の間柄とはいえ、話そうと身構えるとなかなか話しづらいものだな』
 『その様なものですか。私には判りかねる問題です』
 『それは、俺の想いの中に、親子の私情を持ち込んで、我々の一族を統べていくことはしないという強い想いを抱いている』