『トロイからの落人』 FUGITIVES FROM TROY 第７章 築砦 563

　二人は、準備が整った夕食の場に着いた。場にいる者たちが、ドックスとノコギスを拍手で迎えてくれた。ドックスは皆の拍手に感じた。『これなら、いける！』群れがひとつの方向に向いていることを感じ取った。更に、彼は、群れが自分の思っている方向へのラポールを言葉で伝えてもいいときに来ていると感じた。
　『おう、諸君！ありがとう。君らに紹介しておく、新艇建造の用材の製材を担当した、ガリダ一族のノコギス製材担当だ。彼は、四日後より四人の製材担当者を率いて新艇建造の場で、向こう２か月間、新艇建造の部材の製材に携わる。一同宜しくな』
　『皆さん、只今、ドックス棟梁から紹介された、ノコギスです。宜しく願います』と丁寧に低頭してあいさつした。一同から拍手が起きた。
　ドックスが一同に声をかけて夕食を始めた。ノコギスは、一同の隔意のない言葉がけがうれしかった。
　ノコギスは、仕事の展開とチーム構想を頭の片隅の描いて、即、記憶の倉庫に格納した。ドックスに言われるままに宿舎の床に就いた。朝までぐっすり眠った。
　浜での朝を迎えた。ノコギスノ人生経験では珍しい出来事である。浜に展開するその喧噪に目を見張った。朝行事の彼らの生活習慣、キドニアに向けての船出の準備等、彼にとって物珍しい情景が見張る目に飛び込んできた。
　ドックスが彼を朝行事に誘う。今は、朝行事が気持ちのいい季節である。彼は辺りを見回し、海に身を浸した。水の冷たさが覚醒させる、気持ちが引き締まる、昇りいく朝陽を海に身を浸して眺めた。海からあがる、肌を撫でて過ぎる風、心地よかった。
　ドックスがノコギスの肩を叩く、
　『ノコギス、感想は？』
　『初めての経験です。とても気持ちがいいですな。癖になるかもです』
　『そうか。よし！今日の予定を言っておく。一番は、君たちに担当してもらう要務について説明する。二番目は、製材の道具揃えを考えてもらう。三番目は、道具揃えを検討して決定する。そして、早い時間に昼めしを終えて、キドニア行きの昼便で帰途に就く。そういうことだ、いいな。朝めしを終えたら直ちに始める』
　『判りました』
　ノコギスは、目を輝かせてうなずいた。
　ドックスは、新艇建造の場のチーフ５名をノコギスとの道具揃えの検討の話し合いに参加させた。手際よく話が進み、要件の決着をみた。