クリュセスは、外衣を身にまとい憂いを湛えて、連合軍の幕舎をあとにした。
波打ち寄せる海辺を、外衣のすそを早春の冷たい風になぶらせながら、歩んできた道をひきかえした。クリュセスの目は、怨念に燃えていた。
海辺を離れ、小高い丘にたどり着いた。
新しく芽吹いた草の緑が、二月の陽光に輝いていた。そこには、祈りの場にふさわしい張りつめた気があった。
クリュセスは、ひざまずいた。そして、祈った。自分の祈りが、怨念が、あの男の心情を打ち砕き、愛娘を膝を屈して、我が手に返すことを祈った。
波打ち寄せる海辺を、外衣のすそを早春の冷たい風になぶらせながら、歩んできた道をひきかえした。クリュセスの目は、怨念に燃えていた。
海辺を離れ、小高い丘にたどり着いた。
新しく芽吹いた草の緑が、二月の陽光に輝いていた。そこには、祈りの場にふさわしい張りつめた気があった。
クリュセスは、ひざまずいた。そして、祈った。自分の祈りが、怨念が、あの男の心情を打ち砕き、愛娘を膝を屈して、我が手に返すことを祈った。