『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

第3章  戦端を開く  14

2007-09-06 09:06:02 | トロイ城市は炎上消滅の運命であった。
 アキレスは、一方的な攻勢で、やるかやられるかの果し合いを制した。
 アキレスは、神殿内部にこだまする雄叫びを上げた。闘争の興奮が、その者を占拠する一瞬であった。
 
 軍団本部は、ヘレスポントス海峡の件を協議した。これを制圧の上、権益を我が方のものとして、管理することが話し合いで決まった。制圧に向かう軍団は、事情に通じているメネラオスの率いるスパルタの軍団とアイアースの軍団がこれに当った。
 トロイ側も、隣国の軍団が、この方面の警護に当っていた。ポリス連合軍は、トロイ側の兵数の3倍を越える兵数を動員して、これを制圧した。
 連合軍は、海峡通航の権益を奪い、自国の船舶の通航領は、無料とした。また、この海峡の管理と警護については、メネスチス率いるアテネの軍団が、この任に当った。こののち、3日に一度は、軍団の衝突があり、小競り合いは、たびたび繰り返された。

第3章  戦端を開く  13

2007-09-05 08:02:42 | トロイ城市は炎上消滅の運命であった。
 トロイロスは、神殿に逃げ込んだ。祭壇にむかい、神アポロに庇護を祈った。
 アキレスは、神殿に踏み入ってきた。祈るトロイロスの前面に、憤怒の表情もあらわに、仁王の如く立ち塞がり、トロイロスの視野をさえぎった。アキレスの右手には、切っ先鋭い剣が握られている。アキレスは、トロイロスにも、剣を手にすることを促した。トロイロスは、起ちあがり、一歩退いて、きらり、腰の帯剣を引き抜いて身構えた。
 勝負は、決まっていた。対手の気を呑んでしまっていた、アキレスの撃剣の威力は凄まじい。その突きは鋭く、トロイロスの胸のとどめを刺し貫き、抜いた剣で首を薙いでいた。噴出した鮮血は、祭壇を、神殿の中を紅に染めた。
 トロイロスの双眸は、二度と光を見ることはなかった。

第3章  戦端を開く  12

2007-09-04 08:30:50 | トロイ城市は炎上消滅の運命であった。
 日の経っていくのは早かった。ポリス連合軍がトロイの戦野に戦端を開いて、はや二ヶ月、春花はおわり、木々に実がついてくる。
 戦野に、はやい夏の光が降り注ぐ、昼下がりであった。
 プリアモスを父とするトロイロスが、二頭立ての戦車に乗って戦場を見回りに出てきたようである。
 アキレスは、この様子を遠くから見ていた。アキレスは、シモエース河畔の森の中に身をひそめて待ち伏せた。目の前を通り過ぎるトロイロス。アキレスは、これを追った。みるみるうちに追いついた。
 逃げ切れないと判っているのに、トロイロスは、馬を叱咤して懸命に逃げた。
 トロイロスの向かう先に、アポロの神殿があった。

第3章  戦端を開く  11

2007-09-03 08:13:36 | トロイ城市は炎上消滅の運命であった。
 ヘクトルが比較検討したのは、ポリス連合軍の兵数とであり、表面上の総合兵力とであった。
 軍団が内包している、隠された兵力については、ヘクトルのまな板の上には、載っていなかった。軍団を率いる将帥の戦闘企画力、民族の持っている創造性が生み出す戦闘技術、育った環境による戦闘意欲、民族個有の獣性等については、ポリス連合軍に拮抗していただろうか。しかし、これらはそんなに差のあるものではないと思われるのだが、総合したときに大差がつく。故に、ないがしろにすることが出来ない諸点であると考えられる。
 戦争の大義名分、勝って我が物とする戦利と自発的戦争参加、そして、闘争と人間の根元の性についても比較する必要があったのではなかろうか。ヘクトルの思考は、これらの諸点に波及しなかったのではなかろうか。
 その点、アガメムノンと、その取り巻きの連中は、この諸点に気付いて、軍団を指揮したものと思われるのである。

第3章  戦端を開く  10

2007-09-01 07:49:42 | トロイ城市は炎上消滅の運命であった。
 ポリス連合軍は、そのポリスの動員数によって、大軍団もあれば、中軍団、小軍団もある。軍団によっての攻略目標については、メネラオスの事前調査に基づいて、各軍団に割りふり、指示を与えた。出来るだけ混乱を避けるように留意した。この指示を誤れば、たちまち、軍団、将兵の戦意に係わることだけに慎重に行われたのである。
 ヒッサリクの丘の麓より、アキレス、アイアースの軍団の防衛線の間の各所において、小ぜりあいの戦闘が起きているが、ことごとく、両軍団はこれを押し返していた。

 ヘクトルは、敵連合軍について、ある程度、解析理解した。それに基づき戦闘構想を描いて、軍団の編成を考えた。近隣諸国からの応援、遠くは、黒海沿岸の諸国からも応援の意思表示が届いていた。連合軍を恐れることはない。ヘクトルは、自信を持って、作戦計画を策定し、トロイ軍及び近隣諸国の将帥を集めて、打ち合わせを行い、指令を発した。
 トロイ軍と連合軍軍団の交戦力が拮抗していることが理解された。この力の拮抗が戦争終結まで、10年という長い戦役となる、所以(ゆえん)であった。