船団は、クレタ島を離脱して1時間余りが経過している。
パリヌルスが太陽を仰ぎ見る、頃合いを計る、あとにしたニューキドニアの浜を振り返り見る、はるか後方に目にする。
パリヌルスは、ギアスと目を合わせる、手で招く、指示する。
『二番船に指示サインを送ってくれ。朝食の連絡だ。手のあいている者に朝食のパンを配らせてくれ、飲み物をつけてだ。飲み物の追加はなしだ、いいな。それから漕ぎかたの交替をやってくれ彼らへも朝食を渡してくれ』
『判りました』
指示サインが一番船から二番船に、二番船から三番船に、そして、四番船にと伝えられていく、こういった伝達手法は、船団の航海におけるシステムとして確立していたのである。
船団はまだ風を得ていない、風を待っている、洋上走行を漕ぎかたの漕ぎにゆだねている。
パリヌルスは、時折、進行方向を方角時板で確かめる、北西への進路を維持しているかと問われると自信のないところである。
イリオネスが声をかけてくる。
『パリヌルス、船は海洋の真ん中を進んでいる。沿岸に沿ってではない、頼りになる目標物のない海路だ。進行方向を間違えることなく進んでいるか?』
『はい、そのつもりでいますが』
『つもりか、少々頼りないな』
パリヌルスは、方角時板の磁石鉄棒を手でつるし下げて、方角時板の方角指示線にあわせて進路方向の確認作業をして、チエック結果を報告する。
スダヌスの書いてくれた航海図を信頼して、2時間の間に4回のペースで照合している、船団の先にたって、行く先を目指している船であることを自覚しての所作である。
『これは、俺が一番船に乗って、この航海の責任担当としての役務と心得てやっている』
陽は光をふりおろす、海を渡るソヨットした風、出航して1時間余りの時点、クレタ島から10キロ余りの沖の地点、風の力がたよりない、パリヌルスは考える、もう少し北上すれば風が来る、しかし、どこからの風かはわからない。
考えている時間も船は進んでいる、彼の思考から抜け落ちている、とんだ誤算である、海はただのでっかい水だまりではない、潮流を考慮していなかったことである。
『もうそろそろ来る』である船上にあって、風を感じる、空を仰ぐ、太陽の位置を見る、時を計る、クレタを離れて4時間余り経過している。
ギアスを呼ぶ。
『ギアス、来るものが来た!この風で帆張りをする。お前の考えは?』
『南からの風です。少々東に寄っています。帆張りのタイミングともいえます。帆を張って様子を見ます』
『よし!帆張りだ』
ギアスが指示を叫ぶ、『全帆を張れっ!漕ぎかたは続行!』一番船の様子を見て、後続する3船も帆張りする、帆の風ハラミを確認する、船の加速が感じられる。
『ギアス、昼食の時間だ。指示サインを送れ!一同にも昼食を頼む!』ギアスが手配する。昼食を終える頃には、風速、風力が強まっている。
『パリヌルス隊長、この風!船は帆走でいけます』
『よし!漕ぎかたをやめる』船団は快調といえる状態で航走する。
パリヌルスは戸惑う、進行方向左手側にあるはずの小島が見えない、小島の海域に到達しているはずなのにである、あるはずの小島が見えない、右手方向に目を移す、遠方に小島を発見する。
パリヌルスは、船と小島の離れている距離を目測で判断する、約20スタジオン(2キロ弱)と断を下す、彼は、どうしてと考える、結論する。
『そうか、海はでっかい水だまりではない、海に流れがある。そうか、忘れていた』と納得した。
スダヌスの航海図に目を落とす、『目指すは、キューテラ島の南西岸、このまま北西へ進めばそれでいい!』と決定する。
イリオネスにその旨を報告して船を航走させる、航海は順調である、小島を過ぎて、5時間後、キューテラ島の南西岸のキシラの浜を目にする地点に到達する。
太陽は、西の水平線上にある。航海が順調であったと感じる。アンラッキーと紙一重のラッキーを船上の者らと喜び合う。
船団は、キシラ浜近くの洋上に停泊して一夜を過ごした。
パリヌルスが太陽を仰ぎ見る、頃合いを計る、あとにしたニューキドニアの浜を振り返り見る、はるか後方に目にする。
パリヌルスは、ギアスと目を合わせる、手で招く、指示する。
『二番船に指示サインを送ってくれ。朝食の連絡だ。手のあいている者に朝食のパンを配らせてくれ、飲み物をつけてだ。飲み物の追加はなしだ、いいな。それから漕ぎかたの交替をやってくれ彼らへも朝食を渡してくれ』
『判りました』
指示サインが一番船から二番船に、二番船から三番船に、そして、四番船にと伝えられていく、こういった伝達手法は、船団の航海におけるシステムとして確立していたのである。
船団はまだ風を得ていない、風を待っている、洋上走行を漕ぎかたの漕ぎにゆだねている。
パリヌルスは、時折、進行方向を方角時板で確かめる、北西への進路を維持しているかと問われると自信のないところである。
イリオネスが声をかけてくる。
『パリヌルス、船は海洋の真ん中を進んでいる。沿岸に沿ってではない、頼りになる目標物のない海路だ。進行方向を間違えることなく進んでいるか?』
『はい、そのつもりでいますが』
『つもりか、少々頼りないな』
パリヌルスは、方角時板の磁石鉄棒を手でつるし下げて、方角時板の方角指示線にあわせて進路方向の確認作業をして、チエック結果を報告する。
スダヌスの書いてくれた航海図を信頼して、2時間の間に4回のペースで照合している、船団の先にたって、行く先を目指している船であることを自覚しての所作である。
『これは、俺が一番船に乗って、この航海の責任担当としての役務と心得てやっている』
陽は光をふりおろす、海を渡るソヨットした風、出航して1時間余りの時点、クレタ島から10キロ余りの沖の地点、風の力がたよりない、パリヌルスは考える、もう少し北上すれば風が来る、しかし、どこからの風かはわからない。
考えている時間も船は進んでいる、彼の思考から抜け落ちている、とんだ誤算である、海はただのでっかい水だまりではない、潮流を考慮していなかったことである。
『もうそろそろ来る』である船上にあって、風を感じる、空を仰ぐ、太陽の位置を見る、時を計る、クレタを離れて4時間余り経過している。
ギアスを呼ぶ。
『ギアス、来るものが来た!この風で帆張りをする。お前の考えは?』
『南からの風です。少々東に寄っています。帆張りのタイミングともいえます。帆を張って様子を見ます』
『よし!帆張りだ』
ギアスが指示を叫ぶ、『全帆を張れっ!漕ぎかたは続行!』一番船の様子を見て、後続する3船も帆張りする、帆の風ハラミを確認する、船の加速が感じられる。
『ギアス、昼食の時間だ。指示サインを送れ!一同にも昼食を頼む!』ギアスが手配する。昼食を終える頃には、風速、風力が強まっている。
『パリヌルス隊長、この風!船は帆走でいけます』
『よし!漕ぎかたをやめる』船団は快調といえる状態で航走する。
パリヌルスは戸惑う、進行方向左手側にあるはずの小島が見えない、小島の海域に到達しているはずなのにである、あるはずの小島が見えない、右手方向に目を移す、遠方に小島を発見する。
パリヌルスは、船と小島の離れている距離を目測で判断する、約20スタジオン(2キロ弱)と断を下す、彼は、どうしてと考える、結論する。
『そうか、海はでっかい水だまりではない、海に流れがある。そうか、忘れていた』と納得した。
スダヌスの航海図に目を落とす、『目指すは、キューテラ島の南西岸、このまま北西へ進めばそれでいい!』と決定する。
イリオネスにその旨を報告して船を航走させる、航海は順調である、小島を過ぎて、5時間後、キューテラ島の南西岸のキシラの浜を目にする地点に到達する。
太陽は、西の水平線上にある。航海が順調であったと感じる。アンラッキーと紙一重のラッキーを船上の者らと喜び合う。
船団は、キシラ浜近くの洋上に停泊して一夜を過ごした。