三流読書人

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ドングリ小屋住人 

ムダなダム

2005年12月09日 10時15分03秒 | 教育 
滋賀県東近江市に農水省が計画している永源寺第2ダムをめぐり地元住民らが、国にこの計画の中止を求めた訴訟の控訴審判決で、大阪高裁はこの計画を違法とし、住民側逆転勝訴となった。
判決の骨子は、
「本件事業計画決定には、決定の時点でダムの規模を誤って設計した重大な瑕疵がある。この瑕疵は、ダムの貯水量を算定し、また、ダムの規模を設計するために国(農林水産省)側が定めた通達等所定の地形調査の一部やボーリング調査等の地下地質調査の一部を実施せず、事業計画の決定の際に把握すべきであった建設予定地の地形や地質が正確に把握されなかったことにより生じたものである。そのため、少なくとも、通達による投資効率の算定基準を充足しない可能性が生じる結果となり、結局、経済性の要件についての適正な審査がされずに、その点が看過されたまま本件決定がされたというべきである。その点が看過されると、国や自治体の多額の公金を含む多額の費用の投入が予定されている大規模な国営の土地改良事業である本件事業について、法及び令国民経済的な観点から規定した経済性の基本的な要件が無意味になってしまいかねないというべきである。そして、土地改良法は、本件事業計画の決定が専門的知識を有する技術者の調査・報告に基づいてされなければならないとしているころ、本件事業についての調査・報告は、上記の諸点に基づく瑕疵について調査された形跡がなく、またその旨の報告もなく、不十分であり、土地改良法の趣旨に反するものと言わざるを得ず、本件決定は、実質的に専門的知識を有する技術者の調査報告に基づいたものともいえない。このように、本件事業計画の決定には、極めて重大な瑕疵があり、それは適正手続きに反するもので、その決定が専門的知識を有する技術者の調査や報告に基づかなければならないと定めた土地改良法の趣旨に反し、いずれの観点からも違法であって、本件事業計画の決定は取り消しを免れない。」(12月9日付『毎日新聞』より)

ずさんな計画に基づくムダな公共事業、多額の公費の投入に対する警鐘というか痛烈な批判である。
「経済性の要件についての適正な審査がされず」
「実質的に専門的知識を有する技術者の調査・報告に基づいたものともいえない」
と言いきる。そして違法であるとした。
画期的な判決というべきであろう。
他にも、熊本県川辺川ダム、群馬県八ッ場ダム、千葉県追原ダム、岐阜県徳山ダム、兵庫県武庫川ダムなどダム事業計画をめぐる住民と国側との争いは枚挙にいとまがない。長野県田中知事の脱ダム宣言というような動きもある。
ダムを計画する地域はほぼ100%過疎の、「発展」から取り残され、あえいでいる自治体である。ダムを造れば一時的にはお金が入り、雇用も生まれる。ダムを造ってくれればと思う自治体の気持ちも理解できなくはない。もちろん、いちばんもうけるのは大手ゼネコンであるが。
しかし、木を切り、山を崩し、工事用の道をつけ、立ち退きの住民のための宅地を開発し、大型工作機械が轟音を立てる。水系はもちろん破壊され、動植物の生態系も荒れ果てる。すさまじい環境破壊、賛成派、反対派住民の人間関係、補償の額の違い、地域社会の崩壊にもつながりかねない。
投入される公金はいずれも数千億円という巨額である。

脱ダムである。しかし、ダムだけではないのだろう。