伊藤浩之の春夏秋冬

いわき市遠野町に住む市議会議員。市政や市議会、日常の活動などを紹介していきます。

紙すき練習 

2022年03月16日 | 遠野町・地域
 作業場となる遠野和紙工房「学舎」に着くと、地域おこし協力隊が作成した和紙製のつるし雛を持参していた。オートキャンプ場に展示していたものを撤去したのだろう。写真に撮らせてもらった。



 後ろの赤い紙は、鮫川和紙だという。
 作品を見せてもらった後、作業に入った。
 しょしとり作業は、2日間でだいたい8時間。約30Kgのコウゾの皮を処理し白皮を作り出した。コウゾの皮から黒皮、甘皮をそぎ落とすと、残るのはだいたい3分の1。10Kg程度の白皮を作ったことになるだろう。



 作業では、この間に作成したしょしとり台と座台を利用してもらっている。





 しょしとり台は、傷んできたワラ製の台の代わりに作ったものだ。台の黒い部分(ゴムをはってある)に皮を乗せ、包丁をあてて、黒皮、甘皮をそぎ落とす。台の面が平らになったことで作業がしやすくなり、台の板に座るために尻が痛いと改善を求められた点も、座台を作ったことで改善された。おおむね好評のうちに使ってもらっている。作った甲斐があるというものだ。

 私は相変わらず、白皮を乾燥させるためにハンガーにかける作業をメインにしている。

 15日は、朝まで降った雨が上がるという条件だった。





 雨上がりの山並には層雲が残り、やがて空には入遠野入定側から青空が広がり始めた。

 雨上がり、晴れた空、おまけに吹き出した風。白皮を干しながら目に入る杉林は、もやがかかって見える。よく見ると、風にあおられて杉の木から濃いもやが吹き出していた。花粉の飛散だ。



 これだけの花粉が飛んでいるなら、花粉光環が見えるのではないか。案の定、見える条件を整えてみると、やはり花粉光環が見えていた。



 手前にたなびいているのは白皮だ。先に書いた条件とは、太陽を物陰に隠すことだ。通常は、太陽の光が強すぎるため白い光が花粉光環を隠してしまい、光環は見えてこない。この強い光をを隠してやると、周りの光環が見える。つまり、太陽を、何かで隠してやればいい。電柱、木の梢など何でもいい。うまく隠れれば、太陽の周りを近接して彩る虹色が見えてくるだろう。

 しかし、これだけの花粉が飛んでいる環境は、私にとっては最悪の作業環境と言うことになる。40年ほど前から患っている花粉症が悪化するのだ。
 この日の作業では、飲み続けている花粉症薬が功を奏しているのか、症状はそれほど悪化しなくてすんだ。

 さて、畑の作業は、コウゾを植え付ける場所のマーキング作業。結果、だいたい100株を植えることができそうだ。株は、先週、廃止される畑から採取されたもので、けっこう大きく成長している。来週の植え付けは大変な作業になりそうだ。

 作業の終了後は2日続けて菊判(新聞紙よりおおよそ縦横100mm大きいサイズ)の紙漉きを練習した。今シーズン、地域おこし協力隊のみなさんに呼びかけられてしている練習だ。



 簀桁を揺すりながら、ああでもない、こうでもないといいながら練習している。



 和紙すき(抄紙)は、漉き舟(大きな流し台と思えば良い)に作った紙料を簀桁ですくい上げる方法で行う。流しすきという手法だ。紙料は漉き舟に水を貯め、コウゾの繊維とトロロアオイの根から抽出した粘性のネリを加えたものだ。



 最近の菊判の和紙すきの練習は、黒皮や甘皮などのちりをたくさんいれた紙料を使って行っている。貴重な白皮を残存させるためだ。出来上がる紙は、濃い鶯色の紙に、たくさんのちりが散ったものになる。

 昨日の和紙すきは、最初、紙料に黒皮などのちりを少し加えた紙料を使った。程よくちりが入った和紙をすくためだ。この紙料を使って気がついた。練習で使っているちり中心の紙料に比べると、はるかに扱いやすいという印象を受けたのだ。

 実際、5回ほどすいてみて、使いようもなく失敗したのは1度だけだった。普段使っている練習用の紙料では、逆に5回のうち1度程度の成功となるので全く逆転している。

 紙料の質の問題もあるのだろうが、白皮の繊維以外の不純物が加わることで紙すきの際の水の保持や繊維の定着が難しくなる結果、普段の紙漉きは苦労しているのではないだろうか。とすると、普段の紙料で紙すきが上手にできるようになれば、白皮の繊維の紙料では苦労なく紙をすくことができるようになるといえそうだ。これは普段の練習でよりがんばらなくちゃ。

 今日の練習は、いつものようにちりがたくさん入った紙料を使った。それでも、何とか、それなりの形を作れた。これは良い傾向といえそうだ。

 ちなみに、紙をすいている写真のアップの画像で、手にもつ簀桁(すげた)の向こう側で水が大きく盛り上がっていることが分かると思う。この画像は失敗したことを示すものではないので、言い訳をしておきたい。

 紙すき(抄紙)はこのようにすすむ。ちなみに練習亭居るのは流しすきという手法のすき方だ。
 まず、道具の説明。和紙の材料となる紙料(以下、水)が入っている容器が漉き舟、紙料をすくいとる道具を簀桁という。簀桁は手前側で水をすくう形で使う。

 紙すきでは最初、浅くすくいとった水を簀桁の表面にざっと流し、向こう側に流し落とす。「化粧水」(他にも「掛け流し」「初水}などの呼び方もあるよう。ただ遠野でどう読んでいたかは不明)という。これで簀桁の表面に繊維の薄い膜ができ、これが和紙の表面となる。
 次ぎにすくいとった水を簀桁の上に保持し、縦横の揺すりを加えながら紙料を簀桁に定着させ、残った水は向こう側からざっと捨てる。この作業を数回繰り返して、紙の厚さを作る。「調子」と呼ばれる工程だ。
 一定の厚さができたら、簀桁を手前に若干傾けて手元に水をよせ、その後、簀桁を向こう側に傾けて押しだすように水を捨てる。「捨て水」という。これによって、表面のちりや汚れを取り去るのだという。

 写真で水が盛り上がっているのは、「調子」の段階で余分な水を捨てている瞬間をとらえたもので、失敗ではないということをご理解ください。
 とにかく、言い訳をしておきます。


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