伊藤浩之の春夏秋冬

いわき市遠野町に住む市議会議員。市政や市議会、日常の活動などを紹介していきます。

海外の目から改憲論否定、貧困克服理由に国民に対立軸――同じ紙面でもこんなに違う

2012年05月05日 | 憲法
 3日の憲法記念日、昼ごはんを食べながら朝日新聞を読んでいると、「日本国憲法今も最先端」の見出しが目に飛び込んだ。「世界に民主化を説く米国の憲法は、急速に時代遅れになっている。一方、日本の憲法は今でも先進モデル――」と書きだした記事は、米国の法学者たちが世界の憲法を分析した結果、「65歳」になる日本の憲法は、「世界の最新版と比べても遜色がない」と書く。

 分析によれば、戦力の不保持と戦争の放棄をうたった日本国憲法9条は、似た条文を持つ国が結構あるが、手付かずで生き続けた長さに特徴があり、さらに、世界で主流になった人権の上位19項目までをすべて満たす先進ぶりだという。

 一方、米国の憲法は、「女性の権利や移動の自由のほか、教育や労働組合の権利など、今では世界の7割以上が盛る基本的な権利がいまだに明文化されていない」上、「武装する権利という世界の2%しかない「絶滅」寸前の条文」を大切に守り続けている」と指摘する。

 記事は分析をしたワシントン大学のデービット・ロー教授の言葉でしめる。
 「日本の憲法が変わらずにきた最大の理由は、国民の自主的な支持が強固だったから。経済発展と平和の維持に貢献してきた成功モデル。それをあえて変更する清掃の道を選ばなかったのは、日本人の賢明さではないでしょうか」。

 改憲の必要性に、日本に改憲を求めた米国から疑問の目を向けた、気持ちの良い外信面(12面)の記事だ。

 同じ紙面で社説はこう書く。
 「日本国憲法は、だれのためにあるのか。答えは前文に記されている。『われらとわれらの子孫のために……、この憲法を制定する』と。基本的人権は、だれに与えられるのか。回答は11条に書いてある。『現在及び将来の国民に与えられる』と。」

 社説は、だからいまの世代の利益ばかりでなく、将来世代も含めて「全国民」のために主権を行使することを訴え、貧困を克服していくために再分配の仕組みと雇用慣行を改めることを呼びかけた上で、こう主張する。「反発はあるだろう。実現するには他のだれか、たとえば子育てを終えた世代や正社員が、新たな負担を引き受けなければならないからだ」

 まとめれば、憲法を根拠にした国民間での負担の付け替えをせよ。世代や正社員・非正社員など国民の間に対立軸を置いた考えのようだ。

 対立軸は別のところにあるのではないか。そのことを通じて莫大な利益を得ている者との間に対立軸を置かなければ、単なる国民間の対立を煽ることにならないだろうか。広く国民の上に貧困という薄膜をかぶせていくことになってしまうのではないだろうか。

 非正規雇用の拡大や国民の社会保障を削減しながらすすめられた減税で、大儲けをしてきたのが大企業・財界だ。ため込んだ内部留保は、1985年の62.4兆円から2009年には252.4兆円と4倍に増え、08年から09年には1年間で19.4兆円も増やしている(日本共産党の佐々木憲昭衆院議員の作成資料)。

 大企業・財界が積み上げ続ける儲けを社会に還元させる、また金持ちに適正な課税をすることで、世代間や正規・非正規労働者間に対立軸を持ち込まなくても、貧困の克服を進めることができるのではないだろうか。

 消費税の議論でもそう。社会保障や年金にお金が回らないから消費税の増税が必要と、当然のごとく国民に負担を求める。別の視点には目を向けようとはしない。消費税導入の一方、大企業などには減税をすすめ優遇してきた仕組みに論及することなく、一足飛びに消費税増税に向かう。ここでも肝心の視点がかけ落ちている。

 憲法を根拠に国民に対立を持ち込むような視点の社説と、一方での改憲論を海外の目から否定した12面記事。同じ紙面でもこんなに違う。外の新聞はどうなっているのか、後で読んでみよう。


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