<記事転載>
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「悲惨なアイスランド」
朝倉 慶
8月13日、アイスランドの議会には、数千人のデモ隊が押し寄せました。
人口30万人のアイスランドからすれば、大変な数の人々です。日本で言えば、1,000万人がデモ隊になったようなものでしょうか。
今回の金融危機で、最初に国家破綻という危険に晒(さら)されたアイスランドですが、その後も悲惨な経緯をたどっています。
デモ隊が押し寄せた理由
今回、デモ隊が押し寄せたのは、同国のインターネットのオンライン銀行<アイスセーブ>の預金者の払い戻しに反対するためでした。
アイスランドの3大銀行は高金利を売りものにして、ヨーロッパ各地から大量の預金を集めていましたが、その運用に失敗し、多額の負債を抱えることになりました。その規模は同国GDPの約10倍。しかしながら、破綻すれば、預金者にお金を返すことはできません。アイスランド政府は当初、自国の預金者だけには「国家として預金を保証する」と宣言しましたが、これに大反発したのが、隣の英国をはじめとした欧州各国だったのです。
それはそうでしょう。そのような銀行破綻となれば、<アイスセーブ>を通じて、預金者を大量に抱えている自国の国民が多大な損失を蒙(こうむ)り、ひいてはヨーロッパ全体の金融危機にまで発展する可能性があるからです。今の脆弱な金融の状態からすれば、このような破綻から始まる全体的な危機、いわゆるシステマティック危機を封じることが難しいからです。
英国やオランダは、IMF(国際通貨基金)の緊急融資を使って、なんとかこの問題を収め、自国の預金者に被害が及ばないようにと最大限の努力をしたのです。結果、8月28日、アイスランド政府はインターネット銀行<アイスセーブ>について、現在預金を凍結中の英国、オランダの預金者に対して、政府保証をつけることを承認したのでした。
8月初めには、アイスランド政府と英国、オランダ政府は、この問題に関しては合意していたものの、アイスランドの民衆の大反対にあって、議会の承認は難航を重ねていました。
これは、アイスランドの国民からすれば当然のことです。なぜならアイスランドの銀行は同国のGDPの10倍もの資産を拡張して破綻したわけですから、この債務をアイスランドの国民が払うとなれば、一生ただ働きをして、その借金返済に自分の半生をささげることになりかねません。
日本のGDPは約530兆円ですが、もし日本の銀行が破綻し、その額が膨大で「日本国民全体で5,300兆円の負債を払え!」と迫られたらどうしますか?
そんなことを受け入れたら、日本国民は一生、借金を背負って働くしかないではないですか! それでも払いきれません。アイスランド政府が英国、オランダの人達の預金も保証する、という法案に多少の修正はあったでしょうが、アイスランドとしては、実質的にすでに国家破綻している状態であり、国を運営するためには、IMFの条件を飲むしかない状態に陥っているのです。
8月から難航したアイスランド議会でしたが、同国の銀行が背負った債務の負担に対して、年間返済額の総額を制限することで折り合いました。また、返済期限も2024年6月5日に終了するとしたのです。
いまは、かろうじて一息ついている状態
冷静に考えれば、このような巨額の負債を漁業が主産業であるアイスランド国民の働きで返しきるわけもなく、とりあえずIMFの融資で急場を凌ぎ、アイスランド政府も、英国、オランダも一時しのぎで、互いの国民を納得させているだけです。いずれまた、問題が噴出してくることでしょう。
アイスランドの借金は国家レベルだけではありません。個人も膨大な金額の住宅ローンをユーロなどの外貨建てで背負っており、自国の通貨安から返済不能に陥っているのです。市民のアンケートによれば、4割の人が今後半年以内にローンを払えなくなる、と言っているのです。
このような問題は東欧諸国も同じで、これもいつ破綻してもおかしくない。今、アイスランドと同じように、IMFの融資で、かろうじて一息ついているだけなのです。
東欧諸国には、西欧の銀行が山のように貸し出していて、その額はアイスランドのケースの比ではないのです。現在、世界中で紙幣を乱発し、IMFからも限りない資金を融通させているため小康状態となっていますが、借金の返済、不良債権処理という根本的な解決は不可能で、いつ、また、どこからマグマが破裂するか、わからないのです。
(※朝倉慶氏は、(株)船井メディア企画の『朝倉慶の21世紀塾』でも詳しい経済レポートやCD情報、セミナーを開催、お届けしています。よろしければご活用ください。)
<転載終わり>
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アイスランドが破綻していることは、日本でも報道されているので知ってましたが、これほどひどいとは思いませんでした。
GDPの10倍の借金があるので、数十年かかっても支払えないそうです。個人であれば自己破産もできますが、国家ではそうもいきません。チャラにはしてもらえないので、どうにもならないという状況です。IMFから今はお金を借してもらって、何とか急場をしのいでいる状況ですが、IMFもお金がないので先週400兆円の金を売ったばかりでした。いずれはIMFもお金を貸してくれなくなりますので、その時はどうなるのでしょうか。
しかも東欧はもっとひどい状況というのですから、返済に100年くらいかかるということでしょうか。いずれは何かのきっかけで爆発すると思われますが、その時は世界の国々に破綻の連鎖が起こっていくのだと思います。
アイスランドが資金の運用を失敗したといっても、そもそもお金がお金を産むということにウソが混じっていると思います。そのシステムの限界がついに来たということだと思います。
一時的には世界中金融が破綻して、ハイパーインフレになり、生活恐慌になる確率が高いですが、そのお金だけのシステムが終われば、その後は思いやりのある経済システムが生まれてくると思います。長い目で見れば、人間にとっても地球や動物たちにとっても、とても良いシステムが現れて来ます。嬉し嬉しの社会の実現ですね。
●船井幸雄.com
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