「スチームボーイ」(2003年、126分)
監督・原案・脚本: 大友克洋、CGI監督: 安藤裕章
声の出演: 鈴木杏、小西真奈美、中村嘉葎雄、津嘉山正種、児玉清、
子供に安心して見せられる映画になってしまった。これはどういう観客を対象に作られたのかわからないが、もし子供連れの家族を対象にしたのであれば、これでいいのかもしれない。
しかし「AKIRA」を見たものはどうしても別の期待で見てしまう。少年レイが守ることになったスチームボールとは何なのか。産業革命の後、蒸気機関と複雑に発達する機械の世界に、圧倒的なパワーとその長時間持続力を閉じ込めた小さなボール、それは後の時代の原子力、そしてAKIRAというものなのか。
19世紀イギリスのマンチェスター、そしてロンドン、その雰囲気といろいろなマシーン、暴走するスチーム城、これらの動きは、CGを加え「AKIRA」に比べれば格段にスムースだ。
しかし、話は機械への過信に対する罰、経済的強欲への罰、それを救う少年少女という、これまでにもあったようなドラマという枠から結局出て行かない。ないものねだりだったのだろうか。
いや、大友克洋はおそらく彼の作劇、作画を突き動かすものが生まれてくるのを待っていたはずなのだが。
それとも、セル画からCGの活用という移行時期には、手法と表現との葛藤も生まれにくかったか。