メドレー日記 Ⅱ

by 笠羽晴夫 映画、音楽、美術、本などの個人メドレーです

ノッティングヒルの恋人

2007-02-25 19:27:10 | 映画
「ノッティングヒルの恋人」(Notting Hill 、1999、米国、123分)
監督: ロジャー・ミッシェル、脚本: リチャード・カーチス
ジュリア・ロバーツ、ヒュー・グラント、リス・アイファンズ、ジーナ・マッキー、ティム・マキナニー、エマ・チェンバース、ヒュー・ボネヴィル
実質はイギリス映画。
 
あまり期待せずに飛行機の中で見てから今回で何度目だろうか。この脚本がリチャード・カーティスによるものと意識して見たのは初めてだ。
 
ハリウッド有名女優(ジュリア・ロバーツ)と小さな旅行本専門店を経営するバツイチ男(ヒュー・グラント)が偶然出会って、お互い好意をいだき、おきまりの障害と誤解から破局になるが、いろいろあってハッピーエンド。こういう筋書きで2時間もたせることは、今の映画では苦しいのではないか。
リチャード・カーチスも苦労しただろうと想像する。事実、何度目かの今回、進行がゆったりしすぎているなと感じることは何回かあった。しかし、これを書いたことで、「ブリジット・ジョーンズ」(脚色)を経ての「ラブ・アクチュアリー」では、オムニバスで始めながら、ポリフォニーとして大団円に持っていく傑作を書くことが可能になったのだろう。
 
そこそこの能力をもってはいるものの優柔不断な男をやらせるとその右に出るものはいないヒュー・グラントは、今回も力が入りすぎずうまい。しかしあらためて感心したのはここでのジュリア・ロバーツで、この頃で一番の出来だろう。そして、きれいで可愛い。
アンナ・スコットという役名だが、ほとんどジュリア・ロバーツherself という設定だから、彼女が演じるといっても難しいのだが、肩の力の抜けた物言い、表情が魅力的である。
少し前の「ベスト・フレンズ・ウェディング」(1997)で主役だがかなりいやな女を好演したことと対照的で興味深い。
 
このストーリー、立場を逆転させると「ラブ・アクチュアリー」の英国首相(ヒュー・グラント)と元官邸職員の女性の間柄が思い浮かぶ、というのも面白い。
そして最後の女優記者会見は明らかに「ローマの休日」を観客に思い出させるように作られている。これはこれでいい。
 
脚本家、監督、どっちのアイデアかわからないが、落ち込んだ男の主人公がロンドン下町を歩いていく場面が切れ目なくいつの間にか夏から秋、雪景色の冬そして春と後から気づくように作っているのは、遊びとしてよく出来ている。
 
男の家族、友人たちは皆、今のロンドンを反映してか、適度に変で適度にいい人たちで、俳優も皆いい。中でも、主人公が好きだったのに親友と結婚してしまい、その後事故で車椅子生活になった女を演じるジーナ・マッキーの人の良さと皮肉っぽさのバランスが絶妙だ。
 
びっくりしたのはロンドンにおせっかいに出てきた女優の(元)恋人役で出てきたアレック・ボールドウィンで、カメオ出演のような扱いなのだが、好感度のない役をうまく引き受けたという感がする。
 
テーマとして何度も流れる「She」は気分ぴったり、エルビス・コステロが歌っているらしい。どうも聴いた曲だと調べたら、これは最初シャルル・アズナブールが歌った日本題名「忘れじのおもかげ」、確かまだ持っているはずと彼のベスト版LP(1974)を取り出すとその最後に入っていた。もともとイギリスで大ヒットしたらしい。

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