メンデルスゾーン: ヴァイオリン協奏曲ホ短調 op.64
ヴァイオリン:神尾真由子、BBCフィルハーモニック管弦楽団、指揮:ジャナンドレア・ノセダ
今年の6月29日、チャイコフスキー・コンクールで優勝したことから、先ごろNHK BSで放送されたものを録画して聴いた。2004年11月18日ミューザ川崎。
優勝するまでこの人の名前を知らなかったが、コンクールでの実績は随分あったひとらしい。この演奏は18歳のとき。
曲の冒頭から粘りのある音で、ちょっと遅いのではと一瞬聴くものに注意を向けさせて自分の音楽に引っ張り込んでしまう、なかなかだぞと思わせる。そしてこの最初きれいだなと思わせてあとはなかなか興味が続かない曲を緊張が途切れず、表現的というか、ちょっと表情が過剰気味だが、大変な説得力で持っていく。第一楽章のカデンツァは短いからこれくらいやらないと、オーケストラと張り合うコンチェルトにはならない。第2楽章はもう少し柔らかさが欲しいけれど、意識してそれをやると今の彼女には力を抜くことになるのだろう。しばらくこれでもいいのかもしれない。
それにしても音が大きく、オーケストラに埋没しない。確かサントリーが貸与したストラディヴァリの名器のはず。楽器がいいと違うのだろうが、それを弾く資格を取るのもその人の器だろうか。
第3楽章のフィナーレなど、気持ちよさそうだった。また、終わってオケ団員も皆感心したように拍手していた。
この曲だけで判断は出来ないが、聴く方としてちょっと苦手なこの曲以外で、例えばチャイコフスキー、シベリウスなど、聴いてみたいものである。
高い方の弦を弾くとき、弓をほとんど垂直に立てる姿が、彼女が桐朋で習ったといわれる原田幸一郎が東京カルテットのトップを弾いていた頃を髣髴とさせる。師のリリカルなところに表現の強さが加わっていると見た。期待しよう。