「プラダを着た悪魔」(The Devil Wears Prada、2006米、110分)
監督:デヴィッド・フランケル、原作:ローレン・ワイズバーガー、脚本:アライン・ブロッシュ・マッケンナ
メリル・ストリープ、アン・ハサウェイ、エミリー・ブラント、スタンリー・トゥッチ、エイドリアン・グレニアー
この映画、娯楽映画としてある程度ヒットしたし、評判も悪くはなかったが、見てみるとアメリカ映画ってこの程度?という感じである。
確かに最後まで飽きずに見ることはできたものの、それはカメラと編集が優れていたせいで、あたかもトニー・スコットが監督したアクションもののようである。
話は、このアンドレア(アン・ハサウェイ)がジャーナリストとしての成功を夢見てたまたま入ったのが有力ファッション誌、その鬼編集長(プラダを着た悪魔)ミランダ(メリル・ストリープ)に馬鹿にされながらどうやって認められ、自らも仕事を身につけていくか、その忙しい過程で彼女の男関係は、、、というよくあるものだ。
しかし、登場人物個々の動機、感情など、いま一つ説得力を欠く。なにしろアンドレアはファッション志望ではなく、この世界をよく知らない。ドルチェ&ガッバーナからかかってきた電話でガッバーナといわれても何もわからず切られてしまうありさま。ミランダも含め、とにかく成功が目的で、ファッションそのものはそう好きでもないみたいである。これがアメリカなのだろうか。
男たちが妙に物分りよく、悪い人がいないのも非現実的である。
登場人物の志と、そのぶつかり合い、好き嫌いの感情、そして結末のカタルシス、これらはこの映画からすぐに思い浮かぶ「ワーキング・ガール」(1988、監督:マイク・ニコルズ)に遠く及ばない。
メリル・ストリーブ、確かに悪くはないが、もうちょっと若い人の方が意地悪さが似合うと思う。前半途中から、そんなに悪い人ではないのではと思わせていいのかどうか。一番ピタリときたのは最後のところで、ビルから出て車に乗り込むまで、なんともごつい脚にグレーのストッキングで男みたいな歩き方であった。
確か彼女はオスカーにノミネートされたが、ハリウッドのレベルはこんなになったのだろうか。調べてみたら「ワーキング・ガール」では、メラニー・グリフィスが主演、シガニー・ウィーヴァーとジョーン・キューザックが助演でノミネート、こっちは納得がいく。
今回の演技でなかなかなのは、結果としてアンドレアに押しのけられてしまう役のエミリー・ブラント、男性スタッフ ナイジェル役のスタンリー・トゥッチである。
パリのレセプション場面で、ヴァレンチノ本人が出てくる。やはりちょっと違う存在感。