吉田秀和「永遠の故郷-夜」(2008年、集英社)
著者の書くものでも、このように歌曲それもフーゴー・ヴォルフのものが中心となると、ちょっと苦手である。ドイツ・リートが好きでドイツ語も達者な人たちならいいのだが、そしてヴォルフの歌曲一般の評価が高いのは知っているのだが。
歌詞や楽譜がよく出てくるのはこの人の書くもので慣れているけれど、結果として演奏を論じた場合かこっちも曲をよく知っている場合には理解できるがそうでないと残念ながらその世界に入っていけない。
それでも、リヒャルト・シュトラウスの「最後の四つの歌」、「万霊節」について書かれたものは楽しめた。
「最後の四つの歌」などは、若い頃聴いて、部分的にはひきつけられるところがあったものの、この歌の核心までは行き着かない感が残り、それは年齢にまかせるしかないと、その後何度も聴いてきた。そして、興味が薄れることはなく、今はこの曲の中に埋もれてもいい気分がある。
よく聴くのは、ヤノヴィッツ、カラヤン・ベルリンフィルのもの。
「万霊節」もいい曲だ。日本でいえば秋の彼岸の墓参りで、誰かを思うということだろう。
エリー・アメリングのドイツ歌曲アンソロジー(LP)の中にたまたま入っていた。
「最後の四つの歌」でたいてい最後に置かれる「夕映えの中で」冒頭オーケストラの部分は、映画「ワイルド・アット・ハート」(1990年、監督デヴィッド・リンチ、主演ニコラス・ケイジ)のオープニングで使われている。この取り合わせにはうなってしまった。
最近、一青窈の「ハナミズキ」を聴くと、「万霊節」が頭にうかぶことがある。