著作権の世紀 ― 変わる「情報の独占制度」 (福井健策 著)(2010年1月20日、集英社新書)
このテーマに関し、適格な視点と一般読者へのわかりやすい表現、事例提示で、優れた解説となっている。
デジタル化とネットワーク化で、著作権への侵害、つまりコピー、変形・パロディなどへの言及、取り締まり要求は強くなっているものの、その一方で、創作、普及に関しての息苦しさもますます強くなっており、この後者に対してどうしていくかということは、専門家の間では議論されているものの、一般・マスコミではその人たちが悪者あつかいされてきたきらいがある。
この本は一般向けでかなりの人たちに読まれる形態だからか、表現にバランスをとってはいるが、こういう議論に一つ風穴をあけていくだろうし、それを期待したい。
デジタル化とネットワークで、作品とそれに関係していく人たちの広がりは飛躍的に大きくなっていったということの説明はうまい。
そして、そういう空間的な広がりに加え、「アーカイヴィングの現在」として、アーカイブというものの時間的な広がりとその影響について一つの章をあてているのは、この種の本として画期的である。(なぜかアーカイヴィングと進行形のところだけヴになっている)
コンテンツのさまざまな世界におけるデジタルアーカイブの現在についての紹介はコンパクトでわかりやすい。
また、参考文献に「デジタルアーカイブ白書2005」(デジタルアーカイブ推進協議会編)があげられているのは、編者としてうれしいことである。