メドレー日記 Ⅱ

by 笠羽晴夫 映画、音楽、美術、本などの個人メドレーです

プッチーニ「ボエーム」(ザルツブルク)

2012-12-21 21:51:30 | 音楽一般

プッチーニ:歌劇「ボエーム」

指揮:ダニエレ・ガッティ ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

演出:ダミアーノ・ミキエレット

アンナ・ネトレプコ(ミミ)、ピョートル・ベチャワ(ロドルフォ)、マッシモ・カヴァルレッティ(マルチェロ)、ニーノ・マチャイゼ(ムゼッタ)、アレッシオ・アルドゥイーニ(ショナール)、カルロ・コロンバーラ(コルリーネ)

2012年8月、NHK BS BS Pre 放送録画

 

今年夏のザルツブルク・フェスティバル、アンナ・ネトレプコのミミで期待していたが、やはりボエームは年末に見た方が雰囲気がと、これまで待っていた。

ほんとボエームは好きで、このところ久しぶりだが、何回も見ききしてきた。4幕全編2時間ほど、ほとんどメロディーは覚えているけど、こうして今回も年末に聴くと、悲劇ではあるが「生きていること、そして音楽があること、悪くない」と思えてくる。

 

いくつもの素晴らしいアリア、重唱があるが、とりわけ今回感じたのは後半の、つまり第3幕から第4幕フィナーレにかけてのオーケストラの素晴らしさ。指揮者ガッティは指揮台に上がって間髪入れず勢いのある音を出すけれど、これが効果的、そしてやはりウィーン・フィルを使っただけのことはある。

だから、ミミが息をひきとるところの、男たちのセリフだけの数秒、そしてそのあとオケが彼らに、そして聴衆に襲いかかってくるところはほんとに効果的である。

 

ネトレプコは今もっとも力があり、そしてコメディーもこなすチャーミングなひと、それだからもしかしてミミには元気すぎるかとの心配は杞憂だった。衣装のせいもあってかスタイルもいいし、どちらかというと私がこれまで聴いてきた比較的リリックなミミにくらべドラマティックな歌い方も十分に納得がいった。

 

他の人たちを聴くのは多分初めて、でも皆役にうまくはまっていて満足した。ロドルフォのベチャワは風貌も含め、いままでで一番いいかもしれない。パヴァロッティもトヴォルスキーもよかったが、ベチャワの現代的なのも、今の気分で浸れていい。

 

さて演出は、これまであまりにもつまりカラヤンからクライバー、そしていくつかのメトロポリタンなどでフランコ・ゼッフィレルリの演出は定番中の定番となっていて、それは納得はいくものだったが、そろそろほかのものでも、とおもっていたら、いかにも現代の舞台が出てきた。つまり装置も衣装も現代で、ストーリーや歌詞の細部とは対応つきにくいところはあっても、こういう何度も見ている人が多い舞台では、音楽に浸るには特に衣装などはその時はぴたりとくるのは確かで、だから昨今このたぐいが多いのだろう。今回も一応成功している。

 

また第2幕のモミュス・カフェのところは、あの二階建てのゼッフィレルリ演出とは全くちがった、今のアニメヒーローをフィーチャーしたもので、面白い。

でも、、、やはり最後に、ミミが落とした鍵をほんとうは早く見つけてしまったんでしょとロドルフォにいう件に対応する前半の部分は、もっと忠実にやってほしかった。

 

そして指揮のダニエレ・ガッティ、今まで聴いた中で、確実にカラヤン、クライバーに並ぶ名演!


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする