ロッシーニ:歌劇「アルミーダ」
指揮:リッカルド・フリッツァ、演出:メアリー・ジマーマン
ルネ・フレミング(アルミーダ)、ローレンス・ブラウンリー(リナルド)、ジョン・オズボーン(ゴッフレード)、バリー・バンクス(ジュルナンド/カルロ 二役)、ゴービー・ヴァン・レンズブルグ(ウバルド)
2010年5月1日 ニューヨーク・メトロポリタン歌劇場 2013年7月 WOWOW
ベルカント唱法が、それも曲芸的なほどのものが楽しめるロッシーニ得意分野のオペラである。
ダマスカスの女王にして魔女のアルミーダ、対するは十字軍、その中のリナルドとアルミーダが恋仲になり、アルミーダは一方でそれを利用して勝利を導こうとする。話は荒唐無稽というかおとぎ話だが、コメディではなくセリアといえばそう。特にフィナーレは「えっ」というハッピーエンドでも悲劇でもない中途半端なもの。
いろんな作曲家が扱った題材らしいが、ロッシーニが1817年に作曲してしばらく後からは忘れられていたそうだ。その後復活したが、メトではこのシーズンが初上演。
ルネ・フレミングはまだそれほど評価されていなかった時期、急遽代役でこれをやり大当たりとなり、その後順調なキャリアを積んだらしい。
アルミーダ、そしてなんと6人のテノールがくりひろげるベルカントのサーカスは楽しめる。リナルドのブラウンリーは同じメトのロッシーニ「ラ・チェネレントラ(シンデレラ)」で王子役だった。こういうのは当たり役なんだろう。欲を言えばシンデレラのガランチャほどの長身に見合うのは無理としても、今回のフレミングと並んでももう少し身長があれば、、、
アルミーダの心中を表す「愛」と「復讐」を象徴する二人のキャラクターが無言で飛び回るが、これは演出家のしかけ。まずはうまくいっている。
ところで幕間でフレミングが言うには、歌で繰り返しになるところは歌い手が自由に装飾していいことになっているそうで、そういう決まりはロッシーニではこれ、他にはヘンデルのいくつかだそうだ。
そういう形、進行は、ジャズ演奏の構成に通じるところがあって面白い。考え方は連綿と続いているのかもしれない。