ヘンデル:歌劇「ロデリンダ」
指揮:ハリー・ビケット、演出:スティーヴン・ワズワース
ルネ・フレミング(ロデリンダ)、アンドレアス・ショル(ベルタリード)、ステファニー・ブライズ(エドゥイージュ)、ジョセフ・カイザー(グリモアルド)、イェスティン・ディヴィーズ(ウヌルフォ)、シェン・ヤン(ガリバルド)
2011年12月3日 ニューヨーク・メトロポリタン歌劇場 2013年7月 WOWOW
先の「アルミーダ」に続くような、つまり共通するところが多いものである。アルミーダを作ったロッシーニがベルカント・オペラを作るにあたり、ヘンデルのオペラはベースとなったことだろう。ヘンデル作は40もあるそうだが、この「ロデリンダ」は評価が高いようだ。
それはそうだろう。夫の王(ベルタリード)が戦いに出て死んだと伝えられ、後を襲ったグリモアルドから幼い王子の命と引き換えに結婚を強要されるロデリンダ、夫の妹はグリモアルドといい仲だったらしいが裏切られ、それにつけ込むガリバルド、実は生きていた夫に忠実になんとかしようとする部下・友人のウヌルフフォ、こういう風に少数の人間のからみあいが、ドラマとしてちょうどいい。
音楽はダ・カーポというか、繰り返しが普通だが、上記の設定からするとそんなに急がず進んで行っても、聴く方に違和感はない。
そして、ここではショルとディヴィーズという二人の優れたカストラートが聴く楽しみを与えてくれる。特に第2幕終盤のショルとフレミングの二重唱は、いわばソプラノとソプラノが抱き合って歌うわけだが、そのハモリ方はぞくぞくするほどだった。
フレミングはメトのこの分野を広げていくことに積極的なようで、彼女の立場からすると半分プロデューサーのようなものだろう。
ショルは先の同じヘンデル作「ジュリアス・シーザー」 でシーザーをやっていたが、あそこよりはより心情の表出が豊かな役で、これは大変な人である。容貌、長身の姿も主役にピタリである。シーザーの時はあのかなり飛んでる演出(衣装も含め)で、私もなかなか評価できなかったところはある。それにあの演出はザルツブルクではよくても、性的な面でお堅いアメリカでは受け入れられないかもしれない。
もう一人のカストラートのディヴィーズもとてもいい。幕間のインタビューも面白く、二人とも普段話す声はバリトンに近い。声変わりに時に、素質を発見した教師の勧めでこういう声を保てるようにしていったそうだ。
繰り返しも3回が多いわけだが、2回目での変化が重要で、それを受けての3回目というのはなるほどであった。