ヴェルディ:歌劇「ナブッコ」
指揮:ニコラ・ルイゾッティ 演出:ダニエレ・アバド
レオ・ヌッチ(ナブッコ)、リュドミラ・モナスティルスカ(アビガイルレ)、ヴィタリー・コワリョフ(ザッカーリア)、ヴェロニカ・シメオーニ(フェネーナ)、アレクサンドルス・アントネンコ(イズマエーレ)
2013年2月 ミラノ・スカラ座 2013年12月NHK BS
ヴェルディの出世作と言われていて、「想いよ、金の翼で飛んでいけ」はヴェルディ作の合唱でもっとも有名なものといってよい。
確かに音楽の熱気はたいへんなもので、発表時の印象は強かっただろうし、それを狙っていたことはまちがいない。なにしろ劇としては欠陥が多く、場面から場面への間、どうしてそうなったのか見ていて戸惑うことが多い。オペラというよりオラトリオに近いという人もいる。
アッシリア、バビロンとヘブライの間の話。アッシリア王のナブッコ、その娘の異母姉妹、姉の方は奴隷に産ませている。ヘブライ虜囚の一人と姉妹の恋、その争いに、反乱がからみ、ちょっと信じられないプロセスで物語は進んでいく。どの程度、本当にあったことを下敷きにしているのかはわからない。また当時イタリアが置かれた状況を反映しているのかどうか、それも不明である。
おそらく場面、場面で、イタリアの人たちは何かを感じ、音楽からエネルギーをもらうのだろう。
今回はじめてじっくり見て、それほど長くないし音楽だけなら飽きなかった。
ナブッコのヌッチはとても評価の高い人で名前はもちろん知っているが、私が聴いてきた流れではカップチルリとレパートリーが重なっているせいか、じっくり聴くのは初めてである。カップチルリと比べるとちょっと渋いかもしれないが、これは年齢のせいもあるだろう。もっと前にも聴いてみたかった。このナブッコ役、もう少し狂気があれば。
ほかに歌唱ではリュドミラ・モナスティルスカ(アビガイルレ)とヴィタリー・コワリョフ(ザッカーリア)、初めて聴くがこういう実力がある人たちが現在いるのはいい。
ダニエレ・アバド(クラウディオ・アバドの息子)の演出は、今風のシンプルな装置と色彩、現代の衣装で、こういうストーリーでも違和感がないのはこっちもこの種のものに慣れてきたからだろうか。
ところどころ、周囲で起こっている騒ぎを説明するためか、あらかじめ撮ってあったシーンかアングルを変えて舞台上の動きを撮ったものかはわからないが、モノクロの映像が背景のスクリーンに出てくる。
映画ではあるまいし、ライヴの公演でこういう編集的な要素が目に入ってくるのはどうなのか。ちょっと違うんじゃないか、と考える。