ロッシーニ:歌劇「ラ・チェネレントラ」
指揮:ファビオ・ルイージ、演出:チェーザレ・リエーヴィ
ジョイス・ディドナート(チェネレントラ)、ディエゴ・フローレス(王子)、アレッサンドロ・コルベッリ(父ドン・マニフィコ)、ラシェル・ダーキン(姉グロリンダ)、パトリシア・リスリー(姉ティスペ)、ピエトロ・スパニョーリ(従者ダンディーニ)、ルカ・ピサロ-ニ(哲学者アリドーロ)
2014年5月10日 ニューヨーク・メトロポリタン歌劇場 2015年8月 WOWOW放送録画
このチェネレントラ(シンデレラ)、見るのは3回目くらいだが、そのたびに楽しめ、またより傑作という思いが強くなっている。以前アップしたものは2009年のメトロポリタンで、演出は同じ人だった。二つを比べると、今回の方がよりコミカル、悪くいえばドタバタが強くなっているが、おそらくそれは確信犯だろう。装置、照明は今回の方が少し暗い色調のようだ。もっとも前の録画を再度確かめたわけではなく、なんとなくである。
キャストでは、継父と義理の姉二人以外はちがうものとなっている。特に今回は当然主役の二人、ディドナートとフローレスが呼び物だ。二人ともこの役を長く手掛けている。特にフローレスは本当に期待どおりで、こんなに魅力ある、そして歌唱が完璧な王子はちょっとないだろう。
ディドナートも期待通りで文句はないようなものだが、欲を言えばあまりにとびぬけて歌唱をこなしてしまうため、登場した最初から、これは彼女が最後は姉たちをやりこめてしまう、また王子に対しても優位にたつだろう、ということが見えてしまう感がある。まあここまで20年以上歌いこんで、これが最終公演、つまりこのあとはより重く強い声質の役に移る(これは普通)ようだから聴きおさめと思えばいいのかもしれない。
話しの筋に沿ってどうか、ということでいえば、前回のガランチャもよかった。その容姿も含めて。
その他では、従者のスパニョーリがなかなかいい味を出している。
今回あらためて思ったのは、このオペラでは、カボチャの馬車もガラスの靴も出てこず、王子が相手の生まれなどにとらわれていないか、そういう王子なら一緒になろうという自立した女性像を提示し、しかも最後に自分をいじめた家族を許そうと王子に言う、そのこと。ペローの童話のあと、ロッシーニのこのオペラが作られたことの意味は大きい。まだ見ていなけれどディズニーの実写版「シンデレラ」はアニメなどとはちがい、少し自立した女性として描かれている側面があるといわれている。ロッシーニの影響はおそらくあるだろう。
指揮はファビオ・ルイージ、この人はメトでもドイツ・オーストリア系のものが多く、それは経歴からも自然のようなのだが、そこは名前のとおりイタリア人、スピード感、ブリオ、カンタービレもよくまた柔軟で、前回のベニーニとは別の感じで、とても楽しめ、高揚感もあった。
指揮:ファビオ・ルイージ、演出:チェーザレ・リエーヴィ
ジョイス・ディドナート(チェネレントラ)、ディエゴ・フローレス(王子)、アレッサンドロ・コルベッリ(父ドン・マニフィコ)、ラシェル・ダーキン(姉グロリンダ)、パトリシア・リスリー(姉ティスペ)、ピエトロ・スパニョーリ(従者ダンディーニ)、ルカ・ピサロ-ニ(哲学者アリドーロ)
2014年5月10日 ニューヨーク・メトロポリタン歌劇場 2015年8月 WOWOW放送録画
このチェネレントラ(シンデレラ)、見るのは3回目くらいだが、そのたびに楽しめ、またより傑作という思いが強くなっている。以前アップしたものは2009年のメトロポリタンで、演出は同じ人だった。二つを比べると、今回の方がよりコミカル、悪くいえばドタバタが強くなっているが、おそらくそれは確信犯だろう。装置、照明は今回の方が少し暗い色調のようだ。もっとも前の録画を再度確かめたわけではなく、なんとなくである。
キャストでは、継父と義理の姉二人以外はちがうものとなっている。特に今回は当然主役の二人、ディドナートとフローレスが呼び物だ。二人ともこの役を長く手掛けている。特にフローレスは本当に期待どおりで、こんなに魅力ある、そして歌唱が完璧な王子はちょっとないだろう。
ディドナートも期待通りで文句はないようなものだが、欲を言えばあまりにとびぬけて歌唱をこなしてしまうため、登場した最初から、これは彼女が最後は姉たちをやりこめてしまう、また王子に対しても優位にたつだろう、ということが見えてしまう感がある。まあここまで20年以上歌いこんで、これが最終公演、つまりこのあとはより重く強い声質の役に移る(これは普通)ようだから聴きおさめと思えばいいのかもしれない。
話しの筋に沿ってどうか、ということでいえば、前回のガランチャもよかった。その容姿も含めて。
その他では、従者のスパニョーリがなかなかいい味を出している。
今回あらためて思ったのは、このオペラでは、カボチャの馬車もガラスの靴も出てこず、王子が相手の生まれなどにとらわれていないか、そういう王子なら一緒になろうという自立した女性像を提示し、しかも最後に自分をいじめた家族を許そうと王子に言う、そのこと。ペローの童話のあと、ロッシーニのこのオペラが作られたことの意味は大きい。まだ見ていなけれどディズニーの実写版「シンデレラ」はアニメなどとはちがい、少し自立した女性として描かれている側面があるといわれている。ロッシーニの影響はおそらくあるだろう。
指揮はファビオ・ルイージ、この人はメトでもドイツ・オーストリア系のものが多く、それは経歴からも自然のようなのだが、そこは名前のとおりイタリア人、スピード感、ブリオ、カンタービレもよくまた柔軟で、前回のベニーニとは別の感じで、とても楽しめ、高揚感もあった。