メドレー日記 Ⅱ

by 笠羽晴夫 映画、音楽、美術、本などの個人メドレーです

アルゲリッチ 私こそ、音楽!

2015-12-27 21:35:11 | 映画
アルゲリッチ 私こそ、音楽!(ARGERICH BLOODY DAUGHTER、2012仏/スイス、96分)
監督:ステファニー・アルゲリッチ
 
ピアニスト マルタ・アルゲリッチの映像、インタビューで構成されたドキュメンタリー映画である。ステファニーは写真家
・映像作家でマルタの娘、この作品の前にもマルタに関する映像作品を見たような気がする。
 
これまで知っているようでそうでなかった(とわかる)家族関係が、かなりあっけらかんと語られる。マルタがかかわった男性は有名な音楽家でもかなりいるが、ここではまずステファニーの父親のビショップ・コヴァセヴィッチ(ピアニスト、私が初めて知ったころはスティーヴン・ビショップといっていた)が出てきて、夫婦関係でなくなっても親しいことがわかる。それは私がよく知っているシャルル・デュトワ(指揮者)も同様で、だから別れた後だいぶ経ってから一緒にコンチェルトを録れたりしているのだろう。デュトワとの間にステファニーの姉がいる。驚くのは、デュトワとの前に、それも日本で有名になったころより前、すでに中国系の音楽家との間に娘をもうけていたこと。今回三姉妹とマルタが仲よく出てくる。マルタの母親はユダヤ系かつウクライナ系だったようで、よくも悪くも母親の影響が強いみたい。どうも母系家族、、、
 
そしてマルタは母であり娘であっても、妻ではないようだ。多くの男と仲よくなっているけれど、どちらかというと共同生活者としてらしい。
 
音楽の面でいえば、この歳になると、シューマンとベートーヴェンだそうで、それはなんとなく理解できる。また練習については人前での演奏の直前には、あまり練習しすぎないようにとのこと。なぜかというと、自分の真似はしたくないからだそうだ。そういえばかのホロヴィッツも、100回も練習すると本番が101回目の練習になりかねない、と言っていた。
 
細かいことで面白いことはここに書ききれないほどで、このピアニストが好きな人には退屈しない映画である。
ただ、ある年齢以降、ソロをあまりやらなくなった、特にリリースされる録音がほとんどないのは何故なのか、ということに答としてあてはまることは思いつかなかった。
 
それと今回の発見は、彼女が通常使う言語がフランス語だということだ。デュトワと一緒のころなら不思議はないが、コヴァセヴィッチのネイティヴが英語でも、娘たちや周囲が皆フランス語で、アルゼンチン生まれというところはほとんど感じられない。
 
ところでアルゲリッチの演奏を生で聴いたのは一回、1976年6月12日(土)東京文化会館である。予想通り大変な美人だが、ずいぶん無造作な動きで舞台に登場したな、と感じたのを記憶している。あれからもう40年!
曲目は、幻想小曲集(シューマン)、夜のガスパール(ラヴェル)、ピアノソナタロ短調(リスト)、いいプログラムだった。




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