アイ・ソー・ザ・ライト(I saw the light、2015米、123分)
監督:マーク・エイブラハム
トム・ヒドルストン(ハンク・ウィリアムズ)、エリザベス・オルセン(オードリー)、チェリー・ジョーンズ(リリー)、マディー・八ッソン(ビリー・ジーン)、レン・シュミット(ボビー・ジェット)
私がものごころついたころ、またポピュラー・ソングに親しみはじめたころ、つまり中学校あたりだが、ウェスタンと呼ばれるジャンルは珍しいものではなく、ラジオ番組などでも、アメリカのロックと隣り合ったもののような感じだった。
この映画はその分野で最も有名なハンク・ウィリアムズ((1923-1953)の半生を描いたものである。生涯後半の6年間ほどの活動で、自作自演の名曲、それもヒットパレード上位に入ったものは数多く、それは今手元にあるベスト盤CDを見てもわかる。
時代はプレスリーのちょっと前だから、リアルタイムで聴いていたとはいえないが、この人がカントリーからロック、ポップスへの架け橋の役割を結果として果たしたことは実感としてよくわかる。
ハンクは人気が出始めたころ、妻のオードリーもともに歌手活動をしたいという欲求が強かったため、摩擦が多く、家を空けているときの酒と女の問題で家庭が荒れていく。離婚までの決心がなかなかできなかったり、そのあと別の女性とも同様にうまくいかなかったり、酒をたちきれないまま、あとでわかった生まれながらの脊椎の疾患に苦しみ、結局最後は公演に行く途中の車の中で息絶える。
ハンクのそういう人生についてはまったく知らなかったわけだが、知ってみると自作の大きい部分をなす悲痛な歌は、そうだったのかとも思えてくる。
ただ、そういう背景があったからかどうかは本当はわからない。悲しみ、苦しみがあってもそれをそのまま表現して聴くものに伝わるものなのかどうか、一度何かを通さなければ長く残るものにはならないはず。それはたとえばシューベルトの多くの曲が底知れない悲しみを感じさせるとしても、それはなにも人生にあった具体的なことの反映ではないのだし、どうしようもない、音楽になるしかない悲しみのようなものがあるのだろう。
タイトルの「アイ・ソー・ザ・ライト」は、子供をさずかったシーンで歌われる。これは映画の演出なのかどうかはわからない。讃美歌、ゴスペルの趣がある曲である。舞台で歌われる「Your cheatin' heart」は名曲だが、映画としてはこれもこのストーリーにフィットしている。
そのほか私も歌ったことがある「Cold cold heart」ももちろん入っている。ノラ・ジョーンズもファースト・アルバムで取り上げている息の長い曲、古典だろうか。もっともノラはカントリーの出身だから不思議はない。
歌われているかなと思っていたら、出てきてうれしかったのは「Hey good lookin'」、こういう楽しい歌も残してくれたハンクに感謝。
ドラマという観点からは面白みにとぼしく、主人公、この分野の音楽に関心がない人には退屈かもしれない。
主演のトム・ヒドルストン、主人公のつらい人生はよく演じているが、これだけのスターを演じるのであれば、時に華をみせてほしいところ。容貌はよく似ている。ハットはアルバム・ジャケットにあるものの忠実なコピーのようだ。
監督:マーク・エイブラハム
トム・ヒドルストン(ハンク・ウィリアムズ)、エリザベス・オルセン(オードリー)、チェリー・ジョーンズ(リリー)、マディー・八ッソン(ビリー・ジーン)、レン・シュミット(ボビー・ジェット)
私がものごころついたころ、またポピュラー・ソングに親しみはじめたころ、つまり中学校あたりだが、ウェスタンと呼ばれるジャンルは珍しいものではなく、ラジオ番組などでも、アメリカのロックと隣り合ったもののような感じだった。
この映画はその分野で最も有名なハンク・ウィリアムズ((1923-1953)の半生を描いたものである。生涯後半の6年間ほどの活動で、自作自演の名曲、それもヒットパレード上位に入ったものは数多く、それは今手元にあるベスト盤CDを見てもわかる。
時代はプレスリーのちょっと前だから、リアルタイムで聴いていたとはいえないが、この人がカントリーからロック、ポップスへの架け橋の役割を結果として果たしたことは実感としてよくわかる。
ハンクは人気が出始めたころ、妻のオードリーもともに歌手活動をしたいという欲求が強かったため、摩擦が多く、家を空けているときの酒と女の問題で家庭が荒れていく。離婚までの決心がなかなかできなかったり、そのあと別の女性とも同様にうまくいかなかったり、酒をたちきれないまま、あとでわかった生まれながらの脊椎の疾患に苦しみ、結局最後は公演に行く途中の車の中で息絶える。
ハンクのそういう人生についてはまったく知らなかったわけだが、知ってみると自作の大きい部分をなす悲痛な歌は、そうだったのかとも思えてくる。
ただ、そういう背景があったからかどうかは本当はわからない。悲しみ、苦しみがあってもそれをそのまま表現して聴くものに伝わるものなのかどうか、一度何かを通さなければ長く残るものにはならないはず。それはたとえばシューベルトの多くの曲が底知れない悲しみを感じさせるとしても、それはなにも人生にあった具体的なことの反映ではないのだし、どうしようもない、音楽になるしかない悲しみのようなものがあるのだろう。
タイトルの「アイ・ソー・ザ・ライト」は、子供をさずかったシーンで歌われる。これは映画の演出なのかどうかはわからない。讃美歌、ゴスペルの趣がある曲である。舞台で歌われる「Your cheatin' heart」は名曲だが、映画としてはこれもこのストーリーにフィットしている。
そのほか私も歌ったことがある「Cold cold heart」ももちろん入っている。ノラ・ジョーンズもファースト・アルバムで取り上げている息の長い曲、古典だろうか。もっともノラはカントリーの出身だから不思議はない。
歌われているかなと思っていたら、出てきてうれしかったのは「Hey good lookin'」、こういう楽しい歌も残してくれたハンクに感謝。
ドラマという観点からは面白みにとぼしく、主人公、この分野の音楽に関心がない人には退屈かもしれない。
主演のトム・ヒドルストン、主人公のつらい人生はよく演じているが、これだけのスターを演じるのであれば、時に華をみせてほしいところ。容貌はよく似ている。ハットはアルバム・ジャケットにあるものの忠実なコピーのようだ。