メドレー日記 Ⅱ

by 笠羽晴夫 映画、音楽、美術、本などの個人メドレーです

捜索者

2017-07-15 17:27:04 | 映画
捜索者(The Searchers、1956米、119分)
監督:ジョン・フォード、脚本:フランク・S・ニュージェント、撮影:ウィントン・ホック、音楽:マックス・スタイナー
ジョン・ウェイン(イーサン)、ジェフリー・ハンター(マーティン)、ナタリー・ウッド(デビー)、ヴェラ・マイルズ(ローリー)、ウォード・ボンド(クレイトン)、ヘンリー・ブランドン(スカー)
 
テキサスの巨岩と砂漠がおりなす美しい平原、そこに住む兄夫婦の家に、南北戦争が終わって、南軍にいたイーサンが帰ってくる。兄夫婦には姪が二人、そしてマーティンという先住民の血が少し入っている若者(孤児?)がいる。
 
そしてコマンチ族の牛泥棒を追跡にかかるのだが、これは罠で、帰ってみると兄の家は襲撃され、家族で生き残っているらしいのはさらわれた姪二人。イーサンとマーティンの二人は姪二人を探しに、またコマンチ族のスカー達への復讐に燃えて、執拗な捜索を続ける。
 
私は西部劇の多くはどんなものということには疎いが、この映画はそれにしても復讐の感情表現の連鎖というようなものが表面にでてくることはなく、一つ一つの場面が精密に物語るのものを、見る者は繋げていくことになる。物語のすじからすると、登場人物の性格、感情の流れというものを想像するのだが、これは一つ一つのカットを見事につなげた、つまり舞台ではなく映画の妙でが創造した様式美とでもいえようか。それには素晴らしいカメラワークも貢献している。もちろんロケ―ションもこれ以上ないといってよいだろう。
 
このところいくつかジョン・ウェインを見ていて、この人が主役に据えられるのは何故と考えていたが、スクリーンで映える風貌もさることながら、動きがせかせかしてない、ここというときのアクションは早いが、その前はそうでもなく、充分に見せるというか、ためがあるというか、そういうところだろう。
 
連れ去られた下の姪デビーは唯一の生き残りだが、イーサンは成長してコマンチの一員になりきっていることを許さず討とうとする。この行為が彼にしては?と理解が難しいところである。長じてのデビーはナタリー・ウッド(幼時はナタリーの妹ラナ・ウッド)で、出番の時間は少ないが難しい場面でいい演技を見せる。ただ不思議なのはこの前年の「理由なき反抗」よりは幼く見えること。これも演技のなせる業なのか。
 
この作品、上映からかなり長い間、評価は低かったそうで、それもあって西部劇をある程度みていたころ、タイトルも知らず、その間に今回初めて見るはめになってしまった。今では、ジョン・フォード、ジョン・ウェイン、そして西部劇のベストワンという評価もいろんなところであるようだ。
 
大きな自然の中で(街は全く出てこない)、極限まで贅肉をそぎ落としたような、ハード・ボイルドといえばそう。これに比べれば、ジョン・フォードの最高傑作と一時期言われ、私もそうなんだろうなと思っていた「荒野の決闘」はかなりヒューマンなものであった。
 
アメリカ先住民の扱いは公開時からどう言われたのだろう。何もないとは思えないのだが、あまり大きな動きはなかったようだ。コマンチというものは、コマンチだから、という要素は極力避けられているといえばそうである。



  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする