月と六ペンス (THE MOON AND SIXPENCE )
サマセット・モーム著 金原瑞人 訳 新潮文庫
著者(1874-1965)が1919年に発表したもの。以前に読んでいたと感じていたが、調べたら2009年5月に新訳(岩波文庫)が出たから読んでみようと再読したことがわかった。三回;読むのはこういう長編では珍しい。
今回も新訳ということと最近新潮文庫の新訳、改版では文字が大きく読みやすいということがあった。
全体の印象は前回とそう変わらない。ゴーギャンの突然の変身とその後の生涯を題材にしているが、この画家をそう忠実になぞっているわけではない。それは書き方が「わたし」という作者を想像させる作家による体験というかたちであることと関係があるようだ。
この「一人称」ということは、前回のかなり後に「批評理論入門」を読んでからより意識して、今回受けとれた。
ゴーギャンとゆかりの人たちに取材して物語を書き上げるのであれば、「三人称」でも書けないことはない。
この作品では画家の名前以外にも、ゴーギャンとは違うところも多いが、それはまた書く側に引き付けて内容を積み上げていったのだろう。
つまり本作はゴーギャンのような芸術家、人生を見ている、想像している「わたし」(作者)について書いているという面も相当部分ある。芸術家の生き方をつきつめていくとこうなるのか、「わたし」はそれを感じ取り、理解し、しかしそうは生きられない「わたし」を認識しているようだ。
「批評理論入門」を読んでこういう読み方に至ったことはよかったと思う。
サマセット・モーム著 金原瑞人 訳 新潮文庫
著者(1874-1965)が1919年に発表したもの。以前に読んでいたと感じていたが、調べたら2009年5月に新訳(岩波文庫)が出たから読んでみようと再読したことがわかった。三回;読むのはこういう長編では珍しい。
今回も新訳ということと最近新潮文庫の新訳、改版では文字が大きく読みやすいということがあった。
全体の印象は前回とそう変わらない。ゴーギャンの突然の変身とその後の生涯を題材にしているが、この画家をそう忠実になぞっているわけではない。それは書き方が「わたし」という作者を想像させる作家による体験というかたちであることと関係があるようだ。
この「一人称」ということは、前回のかなり後に「批評理論入門」を読んでからより意識して、今回受けとれた。
ゴーギャンとゆかりの人たちに取材して物語を書き上げるのであれば、「三人称」でも書けないことはない。
この作品では画家の名前以外にも、ゴーギャンとは違うところも多いが、それはまた書く側に引き付けて内容を積み上げていったのだろう。
つまり本作はゴーギャンのような芸術家、人生を見ている、想像している「わたし」(作者)について書いているという面も相当部分ある。芸術家の生き方をつきつめていくとこうなるのか、「わたし」はそれを感じ取り、理解し、しかしそうは生きられない「わたし」を認識しているようだ。
「批評理論入門」を読んでこういう読み方に至ったことはよかったと思う。