マスネ:歌劇「マノン」
指揮:ファビオ・ルイージ、演出:ロラン・ペリー、原作:アベ・プレヴォー
アンナ・ネトレプコ(マノン)、ピョートル・ベチャワ(騎士デグリュー)、パウロ・ジョット(レスコー)、クリストフ・モンターニュ(ギョー)、デイヴィッド・ピッツィンガー(伯爵デグリュー)
2012年4月7日 ニューヨーク・メトロポリタン歌劇場 2013年5月 WOWOW
マノンというとプッチーニ「マノン・レスコー」しか知らず、またこの作品も話が苦手という感じで、しっかり聴いたことがない。マスネにも同じ原作の作品があったのか、という恥ずかしい次第。
しかし、プッチーニのいかにもヴェリスモというイメージ(先入見かもしれないが)よりは、こっちをまず見てよかったと思う。
こういう話のわりにはとにかく音楽が全編美しく、そのなかで歌唱と演技でどうか、ということだから、見る方は楽しめる。
プッチーニほど際立ったメロディーはなくても、舞台を見ているといい気持ちになれる。それとフランス語の歌詞というのも、ぴたり。
それになんといってもアンナ・ネトレプコ、歌唱の素晴らしさはもちろんだが、妖艶な美人というよりはちょっとぽっちゃりの可愛い顔だけれど、その演技が嫌味でなく色気があり、修道院に入る予定の娘から、社交界のちょっといわくありげな花形、そして女囚と、一人で演じ分け、見ていて飽きない。
この人のレパートリーでも、コミカルな「ドン・パスクワーレ」(ドニゼッティ)と並んで代表的なものではないか。
ベチャワのデグリュー、姿も含め、マノンに翻弄される二枚目として、自然に受け取れる。この人の描き方、そして父親、宴会、博奕、、、はてどこかでと思ったら「椿姫」あたりの借用といえなくもない。それはかまわない。「ラ・ボエーム」もこれに通じるところがある。
ルイージの指揮は流麗で、オーケストラをうまく乗せている。この人のイメージからドイツものgが得意?と思っていたが、よく考えればイタリア人。
ロラン・ペリーの演出、うるさくない装置、時代的にもっと後の衣装で、ドラマ、音楽に集中できてよい。