ショスタコーヴィチ:ヴァイオリン協奏曲第1番イ短調作品77
ヴァイオリン:ヴィクトリア・ムローヴァ
ピーター・ウンジャン指揮NHK交響楽団
2013年4月13日NHKホール、 2013年6月NHK放送録画
この曲は大変な曲、内容もそうだが、とにかくスターリン独裁下におけるショスタコーヴィチの苦闘を象徴する曲でもある。
とはいえ、ショスタコーヴィチを集中して聴きだしてからそんなに経っていない。この曲もムローヴァよりだいぶ若いバティアシュヴィリの演奏に動かされ、それからオイストラフ(この人のためにこの曲は書かれた)の録音を注意して聴いた。
ムローヴァはソ連時代の終盤に亡命しており、この曲の持つ緊張感を身を持って経験しているようだ(インタヴュー)。
それはこの曲の当局の目をごまかすためとも思われる明るい舞曲がいかにも韜晦ですという演奏ではなく、さらっとしていて、勝負は第3楽章のパッサカリアとはっきりしているスタイルに現れている。
この楽章、無駄な力が入っていないが、次第に聴いている方の胸の中がいっぱいになっていく、経験と自信のなせる見事な演奏だった。特にカデンツァ!
ムローヴァはどちらかというと美音と技巧で酔わせるというより、強い表現が印象的な人であるが、ここはそれがむしろ自然に感じられてくるものになっていた。
指揮のウンジャンは一時期東京クァルテットの第1ヴァイオリンをしていた人で、カナダ国籍だがアルメニア系らしい。この曲の指揮は的確だったと思う。