メドレー日記 Ⅱ

by 笠羽晴夫 映画、音楽、美術、本などの個人メドレーです

グリンカ「ルスランとリュドミーラ」(ボリショイ)

2012-06-17 17:31:56 | 音楽一般

グリンカ:歌劇「ルスランとリュドミーラ」

指揮:ウラディーミル・ユロフスキー、演出:ドミートリ・チャルニャコフ、原作:プーシキン

アルビナ・シャギムラトヴァ(リュドミーラ)、ミハイル・ペトレンコ(ルスラン)、アルマス・シュヴィルパ(ファルラーフ)、ユーリ・ミネンコ(ラトミール)、アレクサンドリナ・ペンダチャンスカ(ゴリスラヴァ)、チャールズ・ワークマン(よい魔法使いフィン/バヤン)、エレーナ・ザレンバ(魔女ナイーナ)

2011年11月 モスクワ・ボリショイ劇場   2012年5月NHK BS (製作フランス)

 

序曲以外は聴いたのも初めてである。新装なったボリショイだからか、現代的なちょっと変わった演出だが全体としては豪華だ。

キエフの公女リュドミーラと勇者ルスランとの婚礼、恋敵だったらしい北方の戦士ファルラーフと南方の王子ラトミールもそこにいる。ところが魔法使いのしわざか何かよくわからないままリュドミーラは誘拐されてしまい、三人の男はリュドミーラを捜す旅に出る。

そこからは、戦場で死者の持っている(聖なる?)剣を得る話、魔女が支配する娼窟で誘惑に逢う話(ここのところはかなり長い)、リュドミーラがとらえられている不思議な組織(この演出では精神病院らしきもの)、などが続き、しかし最後はよい魔法使いの力もあって、また宮殿に二人は復帰する。

 

ある種のパターン的な叙事詩である。これをその時代に忠実にやると特に真ん中の部分が長く飽きると思うのは自然で、そこでこの演出では、発端と大団円の宮廷場面はそれらしい舞台装置と衣装、真ん中のリュドミーラを求めて苦労し、誘惑にあう場面は現代に見えるように割り切っている。娼窟や精神病院はかなりきわどい見せ方をしていて、今のロシアはずいぶん思い切ったことをやる。

 

確かに、この真ん中の部分は、普遍的な人間の悩みと成長の話と考えれば、この作品では割り切って現代とし、観客を引き込む、という発想は、まずまず許容できる範囲であろう。モーツアル、ワーグナーなどでもかなり現代という設定はある。

しかし、最後の場面で主人公たちだけが放浪でちょっと汚れた現代の衣装のままだったのはどういうことなのだろう。もう以前の彼らではないというのだろうが、大団円としてはそこまで説明的でなくてもよかったのでは。

 

音楽は、あの有名な序曲以外にすぐ耳につくメロディーがあるわけではないが、歌手のレベルも高く、そしてユロフスキー(まだ若い?)のフレキシブルな指揮もあって気持ちよく聴けた。

初演が1842年、そのころ好まれたイタリアオペラに対抗してということだから、歌手の技巧を楽しむ要素があるのもうなずける。南方の王子はカウンター・テノールだろうか。そして彼が誘惑に陥るのを救うために郷里から出てくる女奴隷ゴリスラヴァの出番も多い。この役はその後のミカエラ(カルメン)を思わせる。

 

それにしてもこの序曲は傑作で、オーケストラはどんどん早く弾きたい欲望にかられていくだろう。ここで思い出したのは、グレン・グールドがトロントの放送局でホストを務めていた音楽番組のビデオでこれをピアノで楽しそうに弾きとばしながら解説していたこと。

 


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川内倫子展

2012-06-13 15:02:36 | 写真

川内倫子展  照度 あめつち 影を見る

5月12日-7月16日 東京都写真美術館

 

川内倫子(1972- ) について、これまで何も知らなかった。

今回こうして少しまとめてみるととても新鮮である。まず目につくのは縦横約1mの正方形の作品群で、普通の横長のものより、何か集中して切り取られたものを見るという緊張感が心地よい。ポスターにもある(おそらく)朝の通学時の駅の階段、その真ん中にさす光、これが横長だったらこうはならない。フィルムは6x6だそうだ。

 

子供のころ、最初に買ってもらった安いカメラのフィルムも正方形だった。焼き付けると下のかなりの部分が白く残る。35㎜カメラはまだ高級品だったと思う。

 

考えてみれば、人間の視野は長方形というか長楕円みたいで、それで今もTVや多くの写真が横長になっているのだろう。ただ片目で見てみるともう少し正方形に近い。そして両目で見ていても、片方が効き目であるから、案外人間は視野の中で少し狭いところを見ているのかもしれない。

 

川内の最新の写真は4X5が多いようで、これは正方形より少し横に広い。阿蘇の野焼きの作品にはぎりぎりこのサイズが合っているようだ。

 

この人にはこれからも注目していきたい。

 


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マスターズ水泳

2012-06-11 16:01:08 | スポーツ

昨日、東急マスターズ水泳に参加した。場所はあざみ野。

今回も前回と同様、100m個人メドレーと25m平泳ぎ。

 

個人メドレーは4つの泳ぎがこのところ少しよくなっているということがレース中にも感じられたし、スタミナ配分もまずまずだったが、記録は前回より1秒ほど良かった程度。

やはり1秒以上縮めるのはかなり大変ということだろうか。年齢でパワーが落ちた分、技術でカバーできたと考えられればいいのだろう。

 

平泳ぎはこれまで毎回やっていて、これも前回を1秒ほど上回ったが、前回がおそらく2つめのレースで体が冷えていたとか、別の理由で遅かったわけで、横ばいと考えたほうがいい。パーソナルベストはかなり以前のもの。

 

飛び込みスタートは2つともうまくいった。いつもこうならいいのだが。

それと前回こりて、個人メドレーの後はロッカーで体を拭き、別の水着に着替えて平泳ぎの準備に入った。選手ならあたりまえなのだが、これまでちょっと軽く考えていたようだ。


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ロッシーニ「セヴィリャの理髪師」(メトロポリタン)

2012-06-02 16:45:21 | 音楽一般

ロッシーニ: 歌劇「セヴィリャの理髪師」

指揮:マウリツィオ・ベニーニ、製作:バートレット・シャー

ジョイス・ディドナート(ロジーナ)、ファン・ディエゴ・フローレス(アルマヴィーヴァ)、ペーター・マッティ(フィガロ)、ジョン・デル・カルロ(バルトロ)

2007年3月24日 ニューヨーク・メトロポリタン歌劇場  2012年4月 WOWOW放送録画

 

このオペラ、レコードで全曲を聴いたことはあるが、映像で見たのはおそらく初めてである。音だけで聴いてどれほど頭に残っているかあやしいものだが、おそらく「フィガロの結婚」(モーツアルト)の前段階の話という意識を強く持って聴いたと思う。

しかしこうしてみると、これはこれ、「フィガロの結婚」はコメディとはいえかなり時代背景や何人かの登場人物が抱える問題を描き、回答を出そうとして作られているけれども、「セヴィリャの理髪師」はまず楽しめる、劇場を沸かせるコメディとして作られている。

 

ロッシーニによくある、歌の技巧を駆使した必要以上に長い見せ場を作っているし、この演出ではドアの形状の板をいくつも組み合わせて使い、家や部屋を構成したり、人物の出現のめりはりにしたりしている。オーケストラピットの外側に回廊を設け、客席とのやりとり(?)の効果もおもしろい。

 

こうしてみると、この作品とか、19世紀前半のイタリア・オペラ特にコメディは、多くの人にとって娯楽であり、特にニューヨークなどで今日こういう形で上演されると、これはここで盛んなミュージカルとの境目があまりなくなっている。

 

気がついたのだが、「フィガロの結婚」とくらべ、アルマヴィーヴァはまだうぶで直情的で、フィガロはこっちのほうが享楽的である。それは台本から見ても自然なようで、だから前者がフローレス、後者がマッティというのはぴたりである。特にマッティはあの「ドン・ジョヴァンニ」(こちらのほうが後の出演だが)の印象につながるし、フローレスは「オリー伯爵」(この演出もバートレット・シャー)でもう少し悪い役をやるけれども、そこで小姓役をして共演したディドナートがここではロジーナで、まったく対照的な役柄を見せている。ロジーナのほうが先だから、むしろ小姓役は意外(その素晴らしさで)だったかもしれない。

 

マッティはモーツアルトでもフィガロを歌うそうで、両方というのはかのヘルマン・プライもそうだが、このセヴィリャを見るとプライは少し善人すぎるかな、とも思ってしまう。

 

シャーがインタビューで語っていたのは、コメディをうまく作るには、悪役をひとりにうまく集中させることで、ここではロジーナの後見人でありながら実は彼女と結婚することをもくろんでいるバルトロである。ジョン・デル・カルロは体も大きいし、その身振りも期待にこたえている。

 

評判の演出、出来ばえだったようだ。

ところで幕間のインタビューでこういう関係者の組み合わせがうまくいったとして使われる言葉にchemistry があった。この公演以外のインタビューでも出てきていて、相性・人間関係という意味のようだ。これは単なる組み合わせというより、やっているうちに起こった化学反応、化学変化という時間軸を含んだものを示唆していて面白いし、いい表現だと思う。 

 


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