神奈川県立近代美術館 葉山 2012年6月9日(土)-7月22日(日)
松本竣介(1912-1948) の名前を知ってからまだ15年くらいだが(洲之内徹著「気まぐれ美術館」で知った)、いろんな機会をとらえてみてきた。特に没後50年展(1998年練馬区立美術館)は充実したものであった。
今回こうして再度まとめてみると、これまで思っていたよりもっと落ち着いて画業を追求していった人だなと思う。夭折ではあっても生き急いだという感じはなく、また何かを描くというより、描くことののなかで発見があり、それを洗練させていった、それも多様な見地と技法で、といえるのではないか。
女性、郊外、建造物、街、そしてそういうものの混合と、他の画家からの影響を隠さないところ(たとえば細い線の効果が野田英夫を思わせるところなど)に、ひきつけられる。
こういう時でないと見る機会がない「街」(大川美術館)は、その大きさと細部の出来を考えれば収穫。
これまで印象が強かった緑色に加え、茶、赤の使い方も印象的。赤が勝っているけれどなぜか「黒い花」という絵、これは筆致は違うけれど麻生三郎の影響があるのだろうか。
今回、全体に額の位置が通常より少し低い。これは意識的にされたことだろうが、この画家の絵にはよくフィットしている。