ヨーガ・スートラの第2章は「実践の章」です。
クリヤー・ヨーガ(ヨーガの勤行)こそホームヨーガの本命です。
クリヤーヨーガは熱行(タパス)と読誦(スヴァーディヤーヤ)と自在神への祈念(イーシュヴァラプラニダーナ)ですが、クリヤー・ヨーガは三昧を修するものであり、煩悩を弱めるためのもの、とあります。
さて、煩悩には5つあります。
無明、自我意識、愛着、嫌悪、生命欲。
ヨーガ・スートラではこの列挙の順番にも意味があり、最初の無明は母であり、4人の子どもを生み出すと説いています。
つまり、無明から、私意識→好き→嫌い→最後に恐れの源、生命欲が生まれるというのです。無明とは平たく言えば自然の摂理がわからないこと。
最後の生命欲は毎日の生活の中で感じられる不安感ですが、
「本然の性質に駆られて賢者でさえもまたこのように先導される」とありますから、生きている限りなくてはならない生きるエネルギーでもあります。
さて、私が大好きな役者さんは、坂東玉三郎さんです。
造形美に留まらない、内面が滲み出るような美しさ。「アマテラス」を観たときは息を飲みました。
もともと身体の弱かった玉三郎さんは、舞台をこなせるような体力を持ち合わせていなかったようです。
好きな踊りをいつまで踊ることができるのか?お若い頃から自問自答する毎日。うつ病にもなったそうです。
しかし、その不安感が、特出した舞台演出の世界に導いたのだということです。
つまり、不安をバネにしたのですね。
今なお舞台で異彩を放つ歌舞伎役者、坂東玉三郎さんの「遠くを見ない 明日だけを見る」
という言葉は重いです。
今日一日の舞台を一所懸命演じ、終演後は自宅に直行して明日の舞台のことだけを考える。この繰り返しで、気がついたら半世紀を超えていた…ということですから。
一瞬、一瞬、ひと息ひと息が輝かしい未来につながる…
まるで、ヨーガ・スートラを実践されているようです。
ただ、そこに立っているだけで輝きを放つ…
そして、そこはかとなくプラスのエネルギーを送ってくれる。
そんな人にひたすらに憧れる私です。
そうそう、田原豊道先生もそういう先生です。(荻山貴美子)