日曜日には決まってアリソン・クラウスのLonely Runs Both Waysが聴きたくなる。頭ん中を空っぽにして、静かに沁みてくるサウンドに聴き入る。アリソンの澄み切って透明感のある優しいヴォイスとダン・ティミンスキーのハイロンサム唱法がみごとにマッチして、
これぞブルーグラス
と絶賛するばかりである。
ダンは、映画「オー・ブラザー!」のステージ・シーンに登場しているし、劇中、ジョージ・クルーニーが歌ってヒットさせたという設定の「マン・オブ・コンスタント・ソロウ」の吹き替えを担当している。力強いハイロンサムだ。
赤ん坊にはミルクと決まっているが、ぼくはブルーグラスをミルクに育って来た気がする。エエ歳こいて未だにこのミルクは手放せないし、さらに指を吸う代わりにフラット・マンドリンを握りしめている。なかなか上達しない難しい楽器だが、それでも放り出してはいない。
遠い昔、イギリスから、スコットランドから、アイルランドから、追われるように大西洋を渡った人々の荷物に忍ばせたバイオリンが、ギターが、マンドリンが、ブルーグラス・ミュージックに資する役割がいかに大きかったか。限られた移住の道具に楽器を忘れなかった彼らの心のゆとりを讃えたい。人間の営みの偉大さを思う。それがいつしか太平洋を越え、ぼくに届いている。音楽って強い。