冷たいコーヒーはあまり飲まないが、これは究極のおもてなし。エスプレッソのストロングがぼくの定番だが、
「アイスを始めました。うちのアイスは一味違います」
と、いわば試供品を戴いた。ホットにしろ、アイスにしろ、温度管理が行き届き、適正な頃合を見計らって出してくれる。冷たければよいというものでなく、氷をぶち込んで冷やすなんて横暴だとばかり、その冷やし方に無理が無い。どちらかと言うと「待たされる」感じなのだが、これがスロー・ライフ。尖ったエッジは微塵も無く、こくがあり柔らかい。
「レイコ」
なんて、畏れ多くてとても呼べない優雅な味わい。目の前を簾(すだれ)が降りるようで涼しげな空気が漂う。
ルピナスの里にはひまわりが。その後、夏草から築地を抜けて、恵利原まで、今まで遭遇した中でもっとも急峻な峠を越えた。コンビニの前までたどり着いたとき、膝が笑った。それでも降りることなく、歩くことなく、自分のペースでクリアしたことに意義がある。ささやかな自信めいたもの。
いただきもののベーグル。横にスライスしてカリカリに焼いたベーコン、トマト、とろけるチーズを挟んでみた。隠し味に市販のバジル・ソース。このソースは何にでも合うのか、ぼくにぴったりハマるのか、たまらないうまさ。もちもち感があって、腹持ちもよい。ひとつで終えるのに強い意志を要する。このベーグル自体が別格で、そもそも美味しすぎるだ。