ぼくの承知するところでは、教室に5本、お隣りに3本のトコロテンがあるはずである。製造元は由緒正しいかねよ旅館。ピンとエッジが立ってしっかり腰がある様は、まるで女王様のようで、凛としている。
フレンチのシェフともなると、こういった食材に接するやいなやたちまちインスパイアされ、三杯酢や二杯酢といった固定概念を超越して、ロココ調の歎美で官能的なソースを合わせるのかも知れない。自由な発想の持ち主だから思いがけないソースができ上がるに違いない。うらやましいことである。
トコロテン突きで突いてグラスに入れて写真を撮ったまではよいが、タレを用意していないことに気づいた。
「シェフぅ、トコロテン突き、お貸しできますけど…。」