鶴岡地区医師会だより

三原一郎目線で鶴岡地区医師会の活動を配信しています。

医師会勉強会 第111回

2016-08-27 10:08:42 | 日記


医師会勉強会 第111回

妊娠・授乳中の薬の使い方

国立成育医療研究センター 
周産期・母性診療センター(母性内科)
(妊娠と薬情報センター)
主任副センター長 村島 温子 先生


慢性疾患(膠原病など)疾患管理のために必要な薬剤を中止してしまう。
薬のために妊娠を延期してしまう。
人工中絶をしてしまう。

など、正しい情報がないまま、妊娠希望、妊娠中の女性が不利益を受けているという現実がある。

妊娠希望の女性、妊娠中の女性であっても、適切な治療を受けられるようにする!


■総論1:リスク評価


サリドマイドによるアザラシ肢症で、薬の胎児に対する催奇形性~毒性がクローズアップされることになった。

安全性は、安全性と危険性で、評価する。
 評価レベルには、動物実験、 症例、 疫学的研究がある。


動物実験をヒトへ適応することは難しい
 ヒトで催奇形性がある薬剤の97%がいずれかの動物実験で催奇形性が認められれた。
 ヒトで催奇形性のない薬剤の72%がいずれかの動物実験で催奇形性が認められれた。
 
 
 *疫学研究で安全性が証明されたとしても、添付文書の記載が変わらることはない

FDA分類には問題点あり、分類から記述式へ移行している
 
厚労省(安全対策課):添付文書の妊婦の項のあり方を検討している SEA-U分類
 現実的ではないため → 産婦人科診療ガイドラインへ(お墨付き的位置づけ)


妊娠と薬情報センター
 全国からの症例を収集し、疫学的研究を行っている。→添付文書へ反映。
 

■総論2:臨床現場での考え方

 受精時期はall or none
 催奇形性は、概ね妊娠12週まで
 それ以降は、胎児毒性が問題になる

・催奇形性薬剤
 サリドマイド、ビタミンA誘導体、クマリン誘導体、抗てんかん薬・・・


胎児毒性のリスクのある薬剤
 NSAIDs
 ACE阻害剤
 AⅡ拮抗薬
 アルコール
 タバコ
 過剰なヨード

妊娠中の薬剤の使用方針

 必須でない薬剤、代替薬があるば場合は、添付文書優先

 禁忌であるが必須な薬剤は、エビデンスに基づいて判断する(妊娠と薬情報センターの利用)
 

■妊娠と薬(各論)


精神科関連
 SSRI :問題ないと思われるが、パキシルはレキサプロに変えた方が良い
 ベンゾジアゾピン、抗不安薬 :使っても問題ない
  新生児薬物離脱症候群:小児科医が理解していればそれ程問題にならない

胃腸薬
 サイトテック:禁忌

H1受容体拮抗薬(第二世代抗ヒスタミン薬)
 セルテクトは禁忌
 クラリチン、ジルテック、アレグラ、ザイザルは、まずは問題ない。

妊婦禁忌の抗アレルギー薬
 アタラックスP,セルテクト、リザベン、アレギサール


・抗菌剤
 キノロン系はあえて使わない方が良い、

・抗ヘルペス薬
 ゾビラックス、バルトレックス、ファムビル、問題ない、むしろ積極的に使うべき

・ステロイド(催奇形性)
 奇形性全体のリスクは上昇させない
 口唇口蓋裂の数倍増えるという疫学研究がある
 妊婦への安易な投与には、注意が必要、

・NSAIDs
 催奇形性は否定的
 妊娠後期の連用はしない!
 ケトプロフェン(モーラステープ)は、妊娠後期は禁忌に
 妊娠後期の鎮痛剤としてはアセトアミノフェンが優先される


・降圧剤
 Ca拮抗薬は、妊娠初期は禁忌、催奇形性の報告はない、
 ACE-1、ARB、DRI。:禁忌

・糖尿病
 禁忌薬は多いが、催奇形性の最大のリスク因子は血糖コントロール不良であることに留意する


■妊婦に薬を投与する場合の考え方

 医学的に必要か

 添付文書で

  有益性投与 →リスクを否定できそうか? YES→投与できる NO→投与しない

  禁忌 →リスクを否定できそうか? YES→ IC上で使用可(流産、奇形の自然発生率を説明する) NO→投与しない


■授乳と薬に関する基本的考え方

 母乳のメリットを考えて判断するべき
 ダメな薬剤は、放射線物質、抗がん剤などで、ほとんどの薬は問題ない
 注射薬は、消化管で吸収されないため乳児には影響しない

妊娠・授乳中の薬剤使用に関する主な情報源

この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 鶴岡市医療と介護の連携研修会 | トップ | 検査・画像情報提供加算と電... »
最新の画像もっと見る

日記」カテゴリの最新記事