鶴岡地区医師会だより

三原一郎目線で鶴岡地区医師会の活動を配信しています。

No.270 (社説が暴露する「病院の論理」)

2014-01-31 16:25:38 | 日記
大熊由紀子さんのFACEBOOKへの投稿のシェアです。

精神病床は日本でだけ異常な増え方をしています。他の国々が退院を促進し地域
で支えるように政策転換し始めたときたとき、日本は病院を増やす政策を取り始
めました。しかも質は問わないという……。そのため、入院日数も日本は飛び抜
けて長いのです。

グラフ

http://www.yuki-enishi.com/psychiatry/psychiatry-02.html


日本の精神科の入院数が減らないのは、「入院の必要な人が減らない」から、で
はない。「地域での社会資源・受け皿が足りない」から、でもない。

精神科病院の経営問題・雇用問題ゆえに、入院患者数が減らないのだ。

精神科病院に長期入院している人の多くが、「病状の改善が見られないから」で
はなく、「精神科病院の安定的経営」および、「そこで働く人々の雇用の場の確
保」のために、そこに入院させられているのである。

社説を題材に、少壮学者、竹端寛さんが分析しています。

http://www.surume.org/2014/01/post-620.html

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No.269 (樹氷)

2014-01-30 16:35:44 | 日記


雪山、とくに晴天下の雪山に魅了されている私は、2週連続で休診日を利用して
蔵王へ出かけました。もちろん、滑ることも大好きですが、雪山とくに樹氷を撮
りたいという願望も大いにありました。

友人には、休みの日に2時間もかけて、ボードに行くなんて気が知れんと言われ
ていますが、こんな気持ちのいいことを経験できないなんて、もったいないと私
はひそかに思っていました。

さて、昨日の山形の天気予報では午後から晴れ、青空を期待して出かけました。
蔵王(大森)に着いたのは11:30過ぎ、ユートピアまで登ると、まだガス(雲)
が多く、視界不良、青空は全くありません。仕方ないか、雪質がいいのでがんま
しょうと、ユートピア、パラダイス、大平コース、黒姫などを写真を撮りながら、
滑っていたのですが、2時頃になり少し晴れ間がみえるようになりました。

そこで、ダメもとでも、山頂まで登ってみようとケケーブルに乗ったのですが、
登るにつれて、視界は悪くなり、これじゃ、ざんげを下るのはきついな~などと
少し後悔していました。

さて、山頂に着き、ガスのなかで地蔵の写真を撮り、下りようと思ったその時、
突然青空が現れたのです。なんという幸運!夢中で写真を撮りまくりました。そ
の一部が以下です。その後に、滑ったざんげ坂、人も少なく、こんなに綺麗なざ
んげ坂を滑ったのは初めての経験でした。幸せな気分にどっぶり浸った、気持ち
いい一日でした。

写真集



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No.266 (アルツハイマー病をくい止めろ!)

2014-01-27 10:12:22 | 日記

先週放映されたNHKスペシャル「アルツハイマー病をくい止めろ!」、ご覧になった方も多いかと思いますが、私にとっては、まさに目から鱗の内容でした。復習を込めて、概要をまとめておきます。

NHK健康ホームページ
http://www.nhk.or.jp/kenko/n_special/

・DIAN研究
 アメリカ・ワシントン大学を中心としたドイツ、イギリス、オーストラリアが参加した国際研究。
 遺伝子の働きで高い確率で発症する「家族性アルツハイマー病」の家族の協力を得て進められている。
 300人以上が参加。
 発症前から、脳の画像、遺伝子、血液などの変化を経時的に徹底的に検査。
 成果として、発症25年前から、脳に異変(「アミロイドβ」の増加)が始まり、
 その後発症15年前から「タウ」や「海馬の萎縮」が起こることが明らかになった。
 タウ:神経細胞内に沈着し、とくに海馬の神経細胞を破壊する


・あたらなる治療薬 LMTX
 イギリスで治験が行われている
タウを分解する薬、発症後の患者に投与し、効果がみられている
治験は最終段階、現在 被検者1300人を対象とし、効果と安全性の確認を行っている
一方で、過去に、アルツハイマー薬の101が、その開発に失敗している
結果は、2年後


・G8認知症サミット
患者の増加は、経済も影響するとの危機感
急増に直面するのは日本
462万人 7割がアルツハイマー型
1000万人を突破する


・運動による海馬の萎縮予防プログラム
 国立長寿医療研究センター(愛知県大府市)が開発、
 有酸素運動をしながら、同時に脳に負荷をかけるプログラム
 海馬を鍛えて、委縮するのを防ぐ (もっとも効果がたかい)
 発症5年前 MCI(軽度認知症障害)に効果、
 MCI:400万人、8人にひとり、認知症発症率50%
 認知機能を簡単な検査で点数化 MCI疑いの人を抽出
 認知症予防プログラム
  頭(計算、しりとり)を使いながらの運動、週1回 90分
 運動療法後海馬にあらたな神経細胞の再生、神経細胞の活性化がみられた
 1年後、脳の萎縮の進行がとまる、記憶、年相応へ改善する。


・九州大学 久山町研究所
 なぜ、認知症が増えるのか
 町民4000人、50年にわたるコホート研究
 認知症増加の背景:ライススタイルの変化、とくに食事 糖代謝異常
 食生活の欧米化、動物性脂肪の摂取、生活習慣の変化


・睡眠の質とアミロイドβ沈着の関係
 ワシントン大学
 睡眠の質と髄液からのアミロイドβ量を計測
 寝ている間に、アミロドβを排出する。
 睡眠の質を高く保つことがアミロドβの沈着を防ぐことにつながる


・アミロドβを取り除く薬:ガンテネルマブ
 アミロドβは、発症後は減少する
 したがって、発症後に投与しても効果は限定的
 家族性アルツハイマー病(まだ、発症していない214人)を治験対象に現在治験中
 最初の結果ができるのは2年後


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No.265 (ほたる運営委員会)

2014-01-24 16:44:44 | 日記
昨晩(1月23日)は、本年度最後となるほたるの運営委員会でした。

ほたるの活動については、何をやっているのか分からないという声を聞くことが
ありますが、実にさまざまな活動を行っています。以下に活動の一端です。

ほたるホームページ

歯科との連携
 歯科医師会との定期的なミーティング
 在宅訪問歯科診療窓口の設置
 湯田川温泉リハビリテーション病院での脳パス患者を対象とした
  チェックリストを用いた口腔スクリーニング
 医科歯科連携を考える会の共催
 地域の集いでの口腔ケア普及活動
薬剤師との連携
 薬剤師会との定期的なミーティング
 薬の相談窓口の設置とその周知
 在宅訪問服薬指導リーフレットの作成
 薬剤師と他職種との意見交換会の共催
在宅医療域資源マップの公開、更新
24時間在宅医療体制の構築
 ゆきちネットの運用
Net4Uの活用促進
 施設、薬局への説明会の実施
 Note4U(患者、家族、ヘルパー向けシステム)のスマホアプリ開発
施設のショートステイ空き情報の提供
 毎週水曜日更新
南庄内在宅医療を考える会の企画、開催(3回)
介護施設の医療依存度の高い患者の受け入れ体制などに関する聞き取り調査
市民への在宅医療への普及啓発
 健康の集いへの参加、市民公開講座などの開催
在宅医療関わる総合相談窓口の設置と相談への対応
在宅医療に関する多職種向けの教育、研修
 ほたる多職種研修会、医療と介護の連携研修会(それぞれ2回)
介護施設に勤務する看護師へのインタビュー調査と意見交換会の実施
地域ケア会議への参加

以下、委員会報告

報告事項
1、アクションプラン進捗状況
 活動状況についての報告(表記参照)
 施設の看護師が集う会
  12月18日 15:00~17:00、医師会講堂
  参加者:施設に勤務する看護師 13名(9施設)
 1)開会
 2)看護と医療の連携の阻害要因と考えること
    ~連携にアンケート自由記載より~
    ほたる 梅木美枝氏
 3)日本看護協会 都道府県かんごきょうかい 職能Ⅱの活動について
    山形県看護協会 庄内支部長 叶野真弓氏
 4)終末期ケア ~どのように向き合ってますか~
    荘内病院 緩和ケア認定看護師 剱持朝子氏
 5)意見交換会
  連携の必要性を再認識
  今後の継続することに賛同
  看護協会も連携に加わったことは有効

 出張勉強会
  介護事業者を対象( 5事業所、GH,デイホームなど)
  前もって希望のテーマを聞き取り、講師を調整している
  周囲の目を気にすることなく聞ける、実際のケースで学べる、
  講師とつながる関係ができるなど好評
  課題は、施設が主催なので、担当者との連絡不足、講師への対応、プロジェ
  クターなど機材の準備不足

2、Note4Uについて

 スマートフォン用アプリを開発中
 どのようなケースで使えるかは今後課題
  → 庄内PJコアメンバー会議で、緩和ケア症例で利用してもらえるよう提案
  した

3、一般会計での重点項目

 1)地域連携パス事業への協力
 2)在宅緩和ケア体制への協力
 3)地域包括ケアシステム等への参画
 4)地域電子カルテ「Net4U」および「ちょうかいネット」の普及・促進


協議事項

1、市民公開講座
  3月23日(日) 13:30 ~ 16:00 東京第一ホテル鶴岡 鳳凰の間
  テーマ: 認知症を正しく知ろう
  ~ 住み慣れた地域で安心して暮らし続けるために~
内容:寸劇、地域医師講演、特別講演

2、平成26年度の活動
 1) 多職種研修会 4回を予定
・平穏死について、意思決定のガイドライン、倫理、
市民公開型、 長尾先生?を招聘、
・end of life care 緩和ケア認定看護師からの講演
・認知症の症例検討会
 成功事例ではなく、困難事例で、考える会を

 2)施設訪問調査、相談業務からみえてきた課題
 ・医療依存度の高い患者(要喀痰吸引、レスピレーター、透析など)の
  施設の受け入れは難しいのが現状
 ・相談業務
  相談件数は増えていない、
 ・歯科医師会との連携
  相談件数はまだまだ少ない
  歯科の出張講演(お茶のみサロンなどへの)は、ルールづくりが必要
 3)そのた
  ほたるのホームページについては、アクセス数が伸びておらず、
  内容や更新頻度など工夫が必要

次回:5月第3週を予定

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No.264 (冬の鶴岡公園)

2014-01-24 10:33:08 | 日記


冬は、ほとんど晴れることない当地ですが、束の間の晴れ間に撮ったものです。
青空のもとでの雪景色、大好きです。

写真


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No.263 (新医療)

2014-01-23 12:41:18 | 日記


昨年末には、もうひとつ「新医療」からの依頼原稿があり、本日雑誌が届きまし
た。早速、以下にアップしておきます。

地域で選ばれるITシステムの要件


今回の特集は、「他施設から選ばれるIT連携の要点を説く」とのことで、

私に与えられたテーマは、ITを利用した医療連携の中で、他の施設から積極的に
選ばれるための戦略と具体策を診療所の視点から言及して欲しいということでし
たが、Net4Uのような地域密着型システムに、どうしたら参加してもらえるか、
どのようなこと選ばれる要件であるのか、という視点で書いてみました。

章立て。

はじめに

1、当地区におけるIT活用の現状
 1)地域電子カルテ「Net4U」
 2)Net4Uとちょうかいネット
 3)Net4UとNote4U
 4)Net4Uと地域連携ITパス

2、地域から選ばれるネットワークシステムであるために
 1)理念と組織化
 2)顔の見える関係の構築
 3)セキュリティーと同意
 4)運用コスト
 5)さらなる参加を目指して

おわりに

目を通して頂ければ幸いです。

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No.262 (看護展望)

2014-01-21 17:08:15 | 日記


昨年末、「看護展望」臨時増刊号に掲載された原稿をアップロードしました。

特集「退院支援・地域連携」
 Part1 座談会/退院支援・地域連携について 今、考えるべきこと
 Part2 ぬくもりのある退院支援・退院調整のしくみづくり
 Part3 顔の見える地域連携をどうつくるか
 Part4 問題に応じた知音支援・地域連携の実際

Part3への原稿を依頼され、以下のタイトルで書いたものです。

■在宅緩和ケア、地域連携パス、在宅医療連携拠点事業のとりくみから
 地域の連携体制づくりの経験から学んだノウハウ 

以下にアップロードしてあります。
関心のある方は、目を通して頂ければ幸いです。

山形県鶴岡地区医師会:地域の連携体制づくりとその経験から学んだノウハウ

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コミュニティー新聞 新春座談会(庄内の医療の現状と将来を語る) 4回目

2014-01-20 12:19:43 | 日記



司会 これだけ高度な庄内の医療技術や医療があるということで、それを地域の振興に結びつけていこうという視点も必要なのではないかと思う。そこで産業との連携ということで少し話を伺いたい。事前に松田先生からこういうものがあるということを話していただいたものが、ここに例として載っている。まず先端研の「うつ病の研究」について、松田先生から説明をしていただきたい

三原先生、鶴岡市で進めている未来健康調査というのはどういったものか。

三原 松田先生から話のあった先端生命科学研究所が持っているメタボローム解析というのは世界最先端の技術で、血液や尿などに存在する多数の物質を網羅的に測定できる。ものすごい数の物質を検出できるのだが、どの物質がどのような疾患に関わっているのかはまだよく分かっていない。今はうつ病やがんの診断などに応用されているが、それを検診に利用できないかという試み。
血液を採取するだけで、「あなた糖尿病になりやすいですよ」、「がんに少しかかっていますよ」ということが分かるようなことを目指している。まずは、1万人分の血液を採取し、その人たちを25年間追跡調査することにしている。

例えば、登録した人が10年後に糖尿病に罹ったら、遡ってどの物質が高くなっているのかを調べる。そうした研究を重ねることによって、こういう物質が上がっていれば糖尿病になりやすい、がんになりやすいということが将来分かるのではないのかと期待している。このような、壮大な研究を鶴岡市で始めていて、今年が2年目。登録数は現在7000ぐらいになっている。3年間で1万人を登録し、今後25年間フォローするという夢のあるプロジェクトである。

司会 これは鶴岡市でやっているのか。

三原 鶴岡市と慶応義塾大学と鶴岡地区医師会の共同研究として進めている。また、生命先端科学研究所の富田所長がすごいなと感じるのは、研究を通しての人材育成を重視していること。現在、市内の高校生を研究生として招き入れ、「鶴岡からノーベル賞を」というメッセージのもと、自由な発想でのさまざまな研究を支援している。従来、先端的な研究は大都市発であったり、国が主導したりということが多かったと思うが、これからは鶴岡のような地方都市から全国、あるいは世界へ発信していきたい、そんなモデル地区になりたいということもおっしゃっている。非常に勇気づけられているし、地域の時代だなとも感じている。

司会 未来健康調査は最終的には創薬というか、薬を開発するというところまで考えているのか。

三原 もちろん、創薬もひとつの目標だが、検査キットの開発など、先端技術をさまざまに応用可能なのではないかと思う。

三原 私の高校の同級生が鶴岡戻ってきて、地域にある優秀な技術を持った会社の人たちを集めて、医療・介護向けの商品開発をしている。例えば荘内病院で、使いにくかった回診車をオーダーメイドで作るなど、介護や医療の分野で地域にある技術を生かしたものづくりができなかと活動している。地域には、優れた技術を持った中小企業がある、それらは東京の下請けになったりしているが、地域ならでは独創的な商品づくりをし、全国に展開できないかという動きもある。そういった意味では、医療介護分野はさまざまな機器があるし、参入の余地がある分野ではないかと思う。

抱負
2025年をピークに高齢者は減少に転じるが、2040年までは医療依存度、介護依存度の高い85歳以上の高齢者が急増する。さらに、高齢化に比例して認知症も増加するし、さらには独居世帯も増えていく。今後20数年間は、高齢者をどう支えていくかがどの地域においても大きな課題。これからの超高齢社会では、認知症なっても、障害を抱えていても、独居であっても、その人らしく、安心して暮らせるシステム(地域包括ケアシステム)が必要。その実現のため医師会としても尽力していきた。

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コミュニティー新聞 新春座談会(庄内の医療の現状と将来を語る) 3回目

2014-01-20 12:19:03 | 日記


司会 非常に多岐にわたる問題提起を頂戴した。次に、ちょうかいネットの現状、地域医療機関との連携の現状がどうなっているのか。これからどういう方向で動いていくのか

司会 では三原先生、鶴岡地区のほうでは「地域医療連携室ほたる」もやっているようだが。

三原 在宅医療連携拠点事業というは、在宅医療に係る多職種の充実を図るべく、多職種間のコーディネート役としての拠点を地域に置き、多職種協働による在宅医療の支援体制の構築などを目的とした始まった国の事業。この事業の背景には、在宅医療を推進する上で、医療と看護の連携がうまくいっていないということがある。地域のコーディネート機能は、本来であれば地域包括支援センターが役割を担うべきなのだが、地域包括支援センターは、介護寄りの組織でなかなか医療との連携ができていないという背景もある。

鶴岡地区医師会は、3年前の事業開始初年度に全国10のモデル地区の一つに選ばれた。この事業は、医師会、在宅療養支援病院、訪問看護ステーション、行政など多様な組織に拠点を置き、どれだけの成果があるのかを調査研究する目的であった。翌年には、全国で105か所に展開し、各県に最低1つの拠点が設置されている。山形県では鶴岡地区医師会に一か所だけあるが、将来的には、二次医療圏に1つぐらいを設置する構想のようである。

しかし、この事業は、民主党の仕訳作業での指摘もあり、2年間で終了した。その後は、国から県へ事業が移行し、多くの県では、県の事業として継続されている。一方、山形県では、在宅医療連携拠点事業に対する認識が低く、当県には在宅医療連携拠点事業は存在しない。当地区医師会では、地域医療連携室「ほたる」と名称を変え、医師会の一つの部署として、現在4人体制でして活動している。

先般、国の議論のなかで、在宅医療連携拠点事業は在宅医療支援事業として制度化し、今後は市町村が地域包括支援センターや地区医師会へ委託することにすべきとのこと。2015年度からは、鶴岡市が鶴岡地区医師会に委託するかたちで、在宅医療連携拠点事業を継続するという流れになるのではないかと思っている。

Net4Uは、地域電子カルテとしては草分け的な存在。2000年の経産省の補助金事業で開発したシステムだが、当時開発されたシステムのほとんどがとん挫した。現在も稼働しているのは鶴岡のNet4Uだけだと思っている。13年間地域で使い続けた中で、もっとも利用価値が高いのは在宅医療の分野だ。病診連携という医師同士の連携よりも、むしろ、医師と訪問看護師、ケアマネジャーなど、多職種連携の中で有用性を発揮している。

とくに有用なのは在宅緩和ケア。がんの末期の患者さんが病院から在宅療養に移った後は、在宅主治医、訪問看護師、薬剤師、理学療法士など、さまざまな職種が患者さんに関わるが、それぞれが違う組織に属していることが多く、顔を合わせる機会が少ない。そのような多職種の情報共有、コミュニケーションツールとして威力を発揮している。

なかんずく有用なのは、病院の緩和ケア専門医のNet4Uへの参加。がん末期では、麻薬の使い方とか輸液の量とか、緩和ケアに慣れていない一般のかかりつけ医には判断が難しいことも多々あるが、Net4Uを介して、病院の緩和ケア専門医からリアルタイムにさまざまなアドバイスをもらえることは在宅主治医や訪問看護師の安心感につながっている。

さらにNet4Uは、ちょうかいネットとも繋がっており、病院の治療内容や検査結果もNet4Uを介して閲覧できる。地域の全ての医療機関がNet4Uに参加すれば、患者さんの情報を病院から施設まで網羅できる仕組みはすでに出来上がっている。あとはそれをどうやって普及するかという時代に入ってきた。

司会 普及させる上での課題は何か。

三原 まずは、コスト。仕組みを運用する資金を誰が負担するかが最大の課題。幸い鶴岡の場合、医師会に経済的基盤があるので、ある程度の費用を負担できている。しかし、収入のない医師会では難しい。医療情報ネットワークのようなある種の公共インフラにかかる費用を誰が負担するのかというのは、普及に際しての大きな課題と思っている。


三原 急性期から回復期という流れの中で、地域連携パスの話をしたい。鶴岡では2006年から地域連携パスを導入した。最初のきっかけは、荘内病院では、大腿骨骨折の患者の手術数が多く、これ以上増えたらパンクするかもしれないという危機感から、鶴岡地区に2つあるリハビリテーション病院にパス化を呼び掛けたことに始まる。パス化することで、転院がスムーズになり、荘内病院の在院日数は4週から2週間へと半減した。
続いて取り組んだのが脳卒中。多くの寝たきりの患者の原因になっている脳卒中対策は、地域での大きなテーマ。脳卒中患者は、急性期の治療を経て、回復期病院でしっかりとリハを受け、社会へ復帰するというコースをとることが多いが、この流れの中で、必要な診療情報を共有し、切れ目のない医療を継続することが求められており、そこに地域連携パスの必要性がある。当地区ではさらにパスをIT化、疾患データベースを構築することで、再発、日常生活機能低下を予防する疾病管理に取り組んでいる。

データ分析の例として、2010年1月から2年間に登録された1041名の脳卒中患者のうち、維持期へ移行した症例742名を、維持期パス移行群(742名)と非移行群(306名)とで比較した。データを分析した結果、維持期パス参加群においては、再発率の低下と再発までの期間の長期化がみられ、さらに再発の危険因子として心房細動が有意に高いという結果が得られた。このような成果は、IT化された地域連携パスの運用で初めて明らかできたことであり、地域のなかでのIT化、情報ネットワーク化を進めることが、疾病管理を通して、地域の医療の質の向上に寄与できることを示したという意味でも価値があると考えている。


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コミュニティー新聞 新春座談会(庄内の医療の現状と将来を語る) 2回目

2014-01-20 12:18:01 | 日記


司会 医師、看護師の確保が大きな課題となっている。日本海総合病院は今年4月1日時点で医師数は136人、荘内病院は73人ということだが、この数字をどうとらえるか。地域の今後の医療体制の在り方にも非常に絡んでくる問題だと思うが、どうか。

三原 医師不足、看護師不足は地域医療の最大の問題で、特に病院の勤務医不足は深刻。荘内病院の勤務医数は全国平均の約半分でしかない。総合病院としてやっていけるも、あやしくなっている。

看護師に関しては、鶴岡地区医師会は多数の施設を運営しており、多くの看護師を雇用しているが、募集してもほとんどこない。看護師不足を実感している。

看護師が定着しない要因のひとつは、特に病院勤務の看護師の仕事が過酷なためだと思う。職場環境を改善し、働きやすい、働き続けられる環境整備が重要。看護学校をつくれという意見もあるが、いくら養成しても労働環境が厳しければ辞めてしまう。男女共同参画と言われて久しいが、まだまだ女性の働く環境は改善の余地があるのではないか。看護師としての仕事を続けられる職場環境、潜在看護師の再雇用、どちらも並行してやらなければ抜本的な解決にはならないと思う。

医師不足の背景にあるのは、医師の偏在(地域の偏在と科の偏在)である。山形県内をみても村山地域だけが勝ち組で、ほかの地域では医師不足が深刻化している。それをもう少し改善できる仕組みにしてもらうと、我々としても助かる。

司会 忌憚のないところで、お一人ずつ伺いたい。今、三原先生から「これからは病院の役割分担が必要になってくるのではないのか」という発言があったが、そのあたりについてどう考えているか。お話ししていただける範囲で結構だが、将来の地域の医療を考えた場合に、医療体制、医療資源を有効に使うということを考えた場合にどうなのか

三原 これからさらに高齢者が増えていく中で、医療のあり方は大きく変わらないといけないし、たぶん病院のあり方も変わらなければならない。その単位をどこにするのかという問題だと思う。庄内全体の方が良いのか、鶴岡、酒田にそれぞれに急性期病院があった方が良いのか、ということだ。

高齢者対策というのは、介護保険で高齢者を支えていくという仕組みになっているので市町村単位になっている。そうなると、鶴岡市には開業医、さまざまな老人施設、ヘルパーステーション、訪問看護ステーションなどを支援する病院が必要。もちろんそれぞれの機能は違うのだが、地域を一つのユニットとして考え、包括的にサービスを提供できないと、高齢者が40%になる超高齢社会を生き残ることは難しい。さらには住民を巻き込んで、少子超高齢社会をどうするのか、というような議論もしていかないと、たぶん乗り切れない大きな課題を突き付けられていると思う。

だから私は、統合というのは確かに効率的だが、一方で、まちづくり、おらが町の病院というような地域としてのまとまりも必要なのではと考えている。そういう意味でも、荘内病院には、地域の支援病院としての機能を期待している。


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