2001年8月(43歳)、ALSの診断
2005年11月、体動が全くできない全介助状態となり、在宅訪問診療開始。同時に訪問看護、訪問リハも導入される。なお、意思疎通には、眼球運動とパソコンが利用されている。
2010年7月、筋力低下が進行、喀痰排出障害が出現し、荘内病院入院、人工呼吸器管理となる。
2018年秋頃、顔面の潮紅と膿疱を含む丘疹を繰り返して認めるようになり、皮膚科紹介となる。
本事例では、皮膚科依頼の数日前に、Net4Uの導入されていました。
本患者さんの比較的最近のNet4Uのメイン画面です。
Net4Uについては、酒田の先生方や病院の先生方はあまり知らないと思いますので、少し説明させて頂きます。
Net4Uは、来年で運用開始から20年目を迎える、日本で最も歴史の古い、地域電子カルテです。
2012年には、医療と介護繋ぐヘルスケアSNSとして全面改訂、おもに在宅医療の分野で活用されています。
医師の参加数は、40名程度、
鶴岡地区には、訪問看護ステーション8施設ありますが、うち6施設に導入されています。、
訪問看護が導入されている在宅患者の約60%でNet4Uが利用されています。
画面の説明ですが、左側の欄には患者の個人情報、病名、ID-Link(ちょうかいねっと)への入り口となるアイコン、このカルテ患者に関わる施設が表示されます。
画面中央部には、カレダ―表示、右側には、医師および各職種の記載、処方、検査値などが、時系列で表示されます。
記載した内容を読んだユーザとその所属施設がリスト表示されます。
この患者さんには、ほぼ毎日訪問看護、訪問リハが入っていますが、その都度記載があり、居ながらにして患者さんの状況が分かる。
また、必要に応じて、Net4Uを介して相談を受けたりしている。
在宅医療におけるチーム医療には欠かせないツールとなっています。
さて、Net4上での岡田先生とのやりとりを示しています。
岡田先生からは、紅斑性酒さと診断し、デュアック、ロコイド、ヒルドイドを使用するも一進一退、
また、感情変化が激化すると手に負えない状態になり、患者さんの希望するがままの処置を行ってしまう
などの記載があり、治療方針を明らかにしたいという希望があります。
私からは、今後の治療方針として、デュアックが刺激になっている可能性があり、また、ステロイドで酒さ(様皮膚炎)が誘発された可能性もあり、
それらを休薬とし、ステロイドの離脱、タクロリムス軟膏への変更を目標とすることを伝える。
このような医師間のやりとりを他の職種が共有できていることは、治療の目標を多職種間で共有するためにもとても重要と考えます。
経過ですが、過酸化ベンゾイルなどの刺激性のあるにきび治療剤は中止とし、ステロイドの減量・離脱し、タクロリムス軟膏変更し、まだ紅斑は残るが、皮膚症状は徐々に改善し、かゆみや痛みなどの症状はほとんど訴えなくなった。
以上だと簡単に良くなったようにみえますが、納得して治療を進めるためには、メールでのやり取りが有用でした。
メールで原因がはっきりしない治りにくい病気であること、ステロイドは一時的に炎症を抑えるが、継続するとで病気がさらに治りにくくなること、そのためにステロイドを休薬し休薬し、タクロリムス軟膏へ変更すること。ステロイドの休薬で皮疹が悪化するが、我慢して治療を継続すれば必ず良くなっていくことを伝えました。。
その後、何度かメールでのやり取りで、 本人に納得してもらったうえで、治療を継続することができ、以前のように感情が爆発することはなくなりました。
酒さ~酒さ様皮膚炎
原因として、血管運動制御の異常、静脈還流障害などが示唆されてはいるが、不明。
ステロイド外用により誘発されることがあり、その場合はステロイド皮膚炎~口囲皮膚炎とも呼ばれる。
治療はざ瘡に準じるが難治であり、長期の治療が必要となる。
ステロイド使用例では、その中止によりリバウンドが生じ、皮疹がさらに悪化する場合が多い。したがって、治療に当たっては、十分な説明と同意が必要となる。
因みに、この患者さんは、指先のセンサーを利用してで詩を書く人だそうです。
先日、2回目となる「ALS声なき詩人 心の歌コンサート」が加茂のクラゲドリーム館で行われました。
詩に曲をつけて歌ってくれる人がいるんですね。
クラゲへの想い、庄内・鶴岡への思い、家族への思いなどがフォーク調のギター伴奏で歌われていました。
パソコンへの入力は指先のセンサーで行っているようです。
コンサートの時の状況も写真と共に、Net4Uに記載されています。
この日は、雨風が強く、搬送が大変だったようですが、無事にコンサートを終え、本人も大変満足した様子とのことでした。
なお、患者さんは、鶴岡市の観光大使に任命されたとのことです。