一昨日(8月27日)、「2型導尿病の病態と治療 -日本人の大規模臨床エビデン
スー」 と題した新潟大学大学院 医歯学総合研究科 血液・内分泌・代謝内科
学分野 教授 曽根 博仁先生の講義を拝聴しました。
曽根先生の略歴
横浜生まれ、
筑波大学医学専門学群卒
筑波大学附属病院内科研修医(代謝・内分泌)
1997年米国ミシガン大学医学部 代謝内分泌内科研究員
1999年 筑波大学大学院人間総合科学研究科(旧 臨床医学系内科)講師
2006年 お茶の水女子大学 人間文化創成科学研究院
ライフサイエンス専攻 准教授、
筑波大学医学群、東京大学医学部 非常勤講師 兼任
2009年 筑波大学附属病院水戸地域医療教育センター 教授
2011年 新潟大学大学院 医歯学総合研究科
血液・内分泌・代謝内科学分野 教授
曽根先生は、厚生労働科学研究JDCS(Japan Diabetic Complication Study)の
主任研究者ですが、その研究成果を基に糖尿病の最新の知見について、分かりや
すく講演頂きました。
糖尿病は、40歳以上の3人に1人(曽根教授)ともいわれ、予防も含め地域全体
での取り組みが必要な疾患です。理想的には、地域に糖尿病あるいは生活習慣病
センターを設置し、そこに糖尿病専門医、眼科医、腎臓内科医などの医師、看護
師、管理栄養士、薬剤師、理学療法士、健康運動指導士、臨床心理士などによる
多職種チームを配置し、地域の診療所、行政、検診センターなどと連携しながら、
患者をトータルにケアする体制が望まれています。
一方、講義の冒頭、500床規模の病院に糖尿病専門医がいないのは由々しき問題、
改善したいとの話がありましたが、糖尿病センター、中核病院に専門医がいない
という当地域では夢のような話ではあります。しかし、だからこそ、地域連携パ
スなどを活用し、糖尿病患者をより効率的に多くの職種で支える戦略を考える必
要があるのではと感じています。
以下、講義メモ
■JDCS(Japan Diabetic Complication Study)
国内の糖尿病専門医療機関59施設に通院中の2型糖尿病患者2033例を対象とし
た前向き研究。1996年に開始。生活習慣指導を積極的に行う介入群と、標準的な
外来治療を行う対象群に分け、糖尿病合併症の予防における、生活習慣介入の効
果の検討と、日本人患者における糖尿病の合併症の臨床的特徴の解明を目的とし
ている。
■東アジアの2型糖尿病患者の病態は、欧米とはかなり異なっている
BMI
日本人の糖尿病患者のBMIは23.1と欧米のBMI約29と比較して低い
→日本人ではインスリン抵抗性、分泌能など基本病態が異なる可能性がある
日本人糖尿病患者の大血管障害死は、20%に過ぎない (欧米は70-80%)
むしろ、1/3はがんでなくなっている
網膜症
発症率 38.3/1000人、欧米(4.4-8.6%)に比し、低い
強力なリスク因子は、HbA1c高値
→厳格な血糖コントロールは必要
腎症
発症率 6.7/1000人、英国UKPDSの3-4分の1、
網膜症同様、リスク因子は、HbA1c
冠動脈疾患
リスクファクターは、TG,LDLコレステロール、HbA1c
欧米でリスク因子とされるHDLコレステロールは含まれない
■A1C 7%以下にコントロール!するのが原則
一方、 下げられるなら 6未満がベター
8未満(治療が困難なケースの目標)は、あくまで特殊例であり、
目標とはしない方がよい
■多面的なアプローチが必要
血糖はコントロールできるようにはなったが、糖尿病は克服できていないという
指摘がある。健康寿命を延長することが最終目標であり、そのためには、血糖以
外の血圧、脂質、生活習慣も同時にコントロールする必要がある。
■運動療法
運動療法による介入では、毎日、30分以上の早歩きに相当する運動を行った患
者は、ほとんど運動しない患者と比べて病気が悪化し死亡するリスクが半分以下
になるというデータがでている
NHK生活情報ブログ
http://www.nhk.or.jp/seikatsu-blog/400/148327.html
参考論文
http://www.dm-net.co.jp/seasonalpost/pdf/vol02no1.pdf