5月23日、地域連携パス推進協議会主催の学術講演会を行いました。
今回は、産業医大の高畠先生をお呼びして、口腔ケアと地域連携パスの2つの講
演を拝聴しました。高畠先生とは、昨年やわら温泉で行われた日本クリニカルパ
ス学会で、妻が座長を努めたシンポジウムで遠藤さんと同じシンポジストだった
というご縁で今回招聘したという経緯があります。
高畠先生は、元々は脳神経外科医、とくに脳血管内治療が専門でしたが、現在は
産業医科大学でリハビリテーション専門医を目指して活躍中とのことでした。
講演内容のメモを以下に記しておきますが、
「食べること」が「生きること」でもあります。肺炎を防ぎながらも、自分で食
べらることを支援することが求められています。それには、介護職を含めたチー
ムで支えることが重要です。これからは地域NSTが必要と感じました。
また、"脳卒中地域連携クリティカルパスの話では、連携パスは連携情報を渡す
だけの連絡帳ではない。在院日数を短縮するための予定表でもない。検証作業を
繰り返しながら、あくまで地域医療の質を向上させるためのツールという話は、
パス活動の原点を見直すという意味でも刺激になりました。
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日本の医療を口から変えよう!
~急性期から始める口腔ケアと経口摂食訓練~
"クリティカルパス"でもない"脳卒中地域連携"でもない
"脳卒中地域連携クリティカルパス"の話
日時:5月23日(土曜)18:00~20:00
会場:荘内病院3F講堂
講師:産業医科大学リハビリテーション講座 高畠英昭氏
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1、脳卒中と嚥下障害
脳卒中病型=脳梗塞(70%)、脳出血(20%)、くも膜下出血(10%)
肺炎:日本人の死因の第3位
嚥下障害の過半数は脳卒中患者
嚥下障害とは、固形物や液体が口から胃へ通過することが困難なことであり、咽
頭の感覚低下や、嚥下に関連する他の様々な障害が関与する。
2、脳卒中と誤嚥性肺炎
PEG2年後の死亡率:アメリカのデータで74.5%、日本で50%
口から食べられなくなると、2年で半分以上は死ぬ
PEG(絶食)では、致死的肺炎を予防できない
誤嚥
マクロアスピレーション(食事に伴って起こる誤嚥) 、
マイクロアスピレーション(食事以外で起こる誤嚥)
不顕性誤嚥(むせない誤嚥)= 寝ている間に細菌が肺に流れ込む(誤嚥)
3、脳卒中と口腔ケア
寝ないことが最大の予防
口腔ケアとの肺炎との発症との相関は証明されていない(ハイレベルのエビデンスはない)
一方で、どんな方法であれ、口腔ケアはやった方が良い
3食食べられるようになったら退院 在院日数が短くなった
oral アセスメントガイド
やってることと、成果がでていることは違う
口腔ケアの目的は肺炎予防だけではない
4、脳卒中後の嚥下障害治療
高畠先生らの研究
コントロール群(N=90)、介入群(N=129)
介入群
発症直後からの積極的口腔ケア・早期離床・適切な栄養介入、早期経口摂取
結果
肺炎の発症が減少、
抗菌剤使用量が減少
在院日数が減少
脳卒中の予後が改善、
入院直後、昏睡状態からの口腔ケア
早期の経口摂取訓練
起立歩行訓練ができる
食事介助はなるべく家族へ
食事中に誤嚥性肺炎はおこらない
まとめ
・誤嚥性肺炎の原因は、食事をしていないときに起こる誤嚥である。
・口腔ケアを行ったために肺炎が増加したという報告はない
・脳卒中患者の多くに口腔への介入が必要である
・肺炎の予防は、口腔ケア・薬剤投与(ACE阻害剤、アマンタジン、シロスタゾー
ル、肺炎ワクチンなど)および経口摂取訓練である。
こんな人に食べさせるのは危ない!
無理して食べさせるのは危ない!
ではなく、急いで食べるための介入を始めなければ危ない!
脳卒中地域連携パスの話
これからの予測がわかるパスが必要:
病型ごと、重症度ごと、病状に即した、患者の状況に合わせたパス
パスとは、医療チームが共同で開発した、患者の最良のマネジメントと信じた仮説
パスは連絡帳ではない!予定表でもない!
情報ネットワークが充実しつつある現在、連携情報は要らない
脳卒中パスの目的は、機能障害を改善する、軽減する、回復させることにある
地域連携パスとは、
標準化され、無駄のない、合併症の少ない、良い医療の提供するためのツール
配布資料