学会2日目に、丸谷先生ご登壇のパネルディスカッション「地域連携パスのアウトカム評価とバリアンス分析」が行われました。
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パネルディスカッション 「地域連携パスのアウトカム評価とバリアンス分析」
座長:重田由美氏、下村裕見子氏
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・大腿骨頚部骨折地域連携パスのアウトカム評価・バリアンス分析
青森県立中央病院整形外科 伊藤淳二氏
パス登録数:1357例(適用率:77%)
中間アウトカムにより予後を予測し、最短時間で目標に到達できるようにパスを活用
約80%が元の生活環境へ戻れた
再骨折予防には骨粗鬆症の治療は不可欠、今後の課題!
・前立腺がん地域連携パスのバリアンス分析に基づいた課題
武蔵野赤十字病院 医療連携センター 田中良典
前立腺がん地域連携パス:医師会との二人主治医制による循環型地域連携パス
312例中、247例が継続されていた
運用上のバリアンスは、受診なし、受診遅れ、早期受診
→現場では気づけないので連携センターが介入した
連携が継続できる要因の関連性は、連携の「実績」と「主治医」であり、専門性、治療などは関連しない。
・医師会完全主導の脳卒中と認知症の地域完結型地域連携パス
広島市立安佐市民病院 神経内科 山下拓史氏
脳卒中パス、安佐地域完結型、医師会の協力で運用
維持期(かかりつけ医):106医療機関
登録数:715名 適用率 30%
在院日数:急性期:32.9、回復期、82.0日、維持期:3年間フォロー
認知症地域連携パス
医師会、行政、専門医療機関、地域包括支援センター、ケアマネ、介護職などで共有する
「脳の健康パスポート」(手帳で情報共有)を発行し、運用している。
・疾病管理を目指した脳卒中地域連携パスのデータ分析
鶴岡市立荘内病院 神経内科 丸谷 宏氏
地域の脳卒中患者をほぼ全登録、維持期までIT化し、リアルタイムにデータベース化して管理
初期のデータ解析から、30%が再発、70%に高血圧症
→「再発予防」と「ADL低下防止」をアウトカムとして疾病管理型地域連携パスを運用
年1回、データマイニング委員会で集計表を作成し、バリアンス分析を行っている、
データ解析から、維持期パス群で、非パス群に比し、早期再発率が低い傾向にある
また、心房細動が脳卒中のリスクとして有意に高いことが分かった
近年、患者向けあるいは介護系職種との情報共有ツールとして私の健康ノートを作成し、運用を開始した。
・医療ICTを介して糖尿病地域連携パスと疾病管理マップの開発
香川大学医学部附属病院 内分泌代謝内科 村尾孝児氏
かがわ遠隔医療ネットワーク(K-MIX)を利用し、
5年間、糖尿病の地域連携パスの普及に取り組んだが、その必要性に疑問が残った
疾病管理マップを導入し、糖尿病患者をミニマムデータセットで層別化し、
重症化、透析予防に取り組んでいる
地域連携パスは作成しただけでは十分ではありません。評価分析し疾病管理に活かしていくことが重要になります。5つの病院~地域から、大腿骨骨折、脳卒中、認知症、糖尿病の地域連携パスの報告があり、パネルディスカッションが行われました。
地域連携パスのデータをきちんと分析している地域は全国的にも限られているのが現状です。また、データ分析も個人の努力に負っているところが多く、鶴岡のようにデータマイニング委員会を組織して取り組んでいるところは聞いたことがありません。改めて、鶴岡地区に地域連携パスの先進性を再認識しました。
以下はパス学会における地域連携パス関連の演題数の推移をみたもの(ストロハット社作成)。
地域連携パスの報告数は年々減少傾向にあるようです。
また、山形県(鶴岡)からの報告数は突出しています。
https://drive.google.com/file/d/0BzItwTwB_6zeWnVMQ0diNTQyUWM/view?usp=sharing