鶴岡地区医師会だより

三原一郎目線で鶴岡地区医師会の活動を配信しています。

No.592 (日本プライマリケア連合学会誌投稿論文)

2016-01-19 11:26:05 | 日記


鶴岡地区医師会 地域医療連携室「ほたる」の活動の一環として行った、「介護サービス事業所における医療依存度の高い人の受け入れの現状調査」を日本プライマリケア連合学会誌に投稿した論文が昨年末に掲載されました。

鶴岡・三河地区に存在する102事業所(全事業所205か所)に直接出向き、看護師の配置の有無、経管栄養、喀痰吸引、人工呼吸器、透析、がん、精神疾患、認知症の受け入れ状況と看取りの実施状況について、調査したものです。

結果として、看護師の夜間配置は、老健など一部の事業所にとどまり、そのことを主因として、経管栄養、喀痰吸引、人口呼吸器などの疾患をもつ患者の受け入れが困難なことが示されました。喀痰吸引は、介護員等による喀痰吸引の制度化でむしろ受け入れが狭まっていることが分かりました。また、看取りは、特養、老健以外での実施率は低く(25%以下)、その要因として人員不足、地域・技術上の問題などが挙げられましたが、医師の協力・理解が得られないという回答も少なからず聞かれました。

本論文の意義は、単なるアンケート調査ではなく、鶴岡・三川地域のほぼすべてのサービス事業所に直接訪問しその実態を調査したことにある思っています。このように一次医療圏をほぼ網羅した実態調査は、調べた限りではありませんでした。

直接訪問して聞き取り調査をおこなった渡邊さんはじめほたるの皆様の尽力に敬意を表したと思います。

論文が掲載されるまでには、厳しい査読があり、医学論文を書くことことの大変さを思い知りましたが、いろいろな意味で大変勉強になりました。

以下にアップロードしましたので、お読み頂ければ幸いです。


日本プライマリケア連合学会誌
B地域における介護サービス事業所での医療依存度の高い人の受け入れの現状と課題

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鶴岡みらい健康調査とこれからの地域医療

2016-01-16 15:34:38 | 日記


鶴岡タイムスの新春座談会

出席者:
 慶応義塾大学医学部教授:武林 亨
 鶴岡市立荘内病院院長:三科 武
 鶴岡地区医師会会長:三原一郎
 鶴岡市健康課課長:原田真弓
 鶴岡市長寿介護課課長:菅原 繁


新春座談会2016 鶴岡みらい健康調査とこれからの地域医療


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No.591 (緩和ケア研修会 in 荘内病院)

2016-01-12 15:58:20 | 日記



日時:2016年1月10-11日
会場:荘内病院3F講堂

PEACE 緩和ケア研修会に参加してきました。

本研修会は、厚生労働省「がん対策推進基本計画」に基づき、がん診療に従事するすべての医師が緩和ケアに関する基本的な知識・技術を身につけること目的として行われているものです。
、、
また、がん診療連携拠点病院の指定要件として、「緩和ケア研修会標準プログラム」に準拠した「緩和ケア研修会」を定期的に実施することが明示されています。

緩和ケア研修会標準プログラムの詳細は以下のHPにあります。

緩和ケア継続教育プログラム:PEACE

研修会のプログラムは以下の通りですが、2日間に及ぶ長丁場でした。

1日目
・緩和ケア研修会開催に当たって(20分)
・緩和ケア概論(50分)
・がん疼痛(110分)
・呼吸器症状に対する緩和ケア(50分)
・がん性疼痛についてのワークショップ:事例検討(100分)
・がん性疼痛についてのワークショップ:ロールプレイ(100分)

2日目
・消化器症状に対する緩和ケア(50分)
・精神腫瘍学(90分)
・コミュニケーション技術に関する講義およびワークショップ:ロールプレイ(120分)
・コミュニケーション技術に関する講義およびワークショップ:講義(60分)
・地域連携(60分)

プログラムは、座学ばかりでなく、所々にアイスブレークがあり、グループワークやロールプレイを通して実践的なスキルを学ぶことができるなど内容がとても工夫されており感心しました。また、持ち帰りができるマイカップが配られたり、お菓子や各種飲み物が準備されていたり、また、おしぼりのサービスなどもあり、とても気持ちの良い雰囲気での研修会した。ランチは鶴岡の美味しい食材を使ったもので、丁寧なお品書きまであり、スタッフの皆さんの心配りに感激しました。

緩和ケアは、疼痛コントロールやがんの終末期医療を指すものではありません。

緩和ケアは、その人らしく過ごすためのサポートであり、医療の基本的な考え方のベースであり、医療全般に関わる心構えと言っても良いかもしれません。

緩和ケアの基礎的な知識は、例えがん患者を診る機会がない医師であっても、身につけておくべきものと思いました。

本研修会は、毎年、荘内病院で行われております。

大変ですけど、それなり得ることも多い研修会です。参加してみてはいかがでしょうか。


なお、参加者は、医師:14名(うち、歯科2名、研修医3名)、看護師:7名、療法士:3名
ファシリテーターは15名でした。

ファシリテーターの皆さん、スタッフの皆さんには、大変お疲れ様でした。





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No.590 (新年のあいさつ)

2016-01-04 16:36:57 | 日記
明けましておめでとうございます。
本年もどうぞよろしくお願いします。

今年は異常に暖かいですね。
正月の2-3日と、かみのやま温泉一泊で、蔵王へスノボーを楽しみいったのですが、
ほとんど雪がない状態で、滑走は断念して帰ってきました。
こんな年は経験したことがないと旅館の仲居さんも言っていましたが、異常気象ですね。
私の子供の頃(50年前)からみると、雪の量は半分程度になっているのではと思います。
50年後には、多くのスキー場が閉鎖になるのでしょうか?
雪のない暖かい冬は歓迎ですが、温暖化が地球にもたらす影響を考えると、漠然とした不安を覚えます。

さて、今日の昼、職員に向けて新年の挨拶をしてきました。

一昨年は、「グループとチーム」、「サービスとホスピタリティー」、
昨年は、「なぜ組織は人は変われないのか」、「吉田松陰名言に学ぶ」
という話をしましたが、何を話したかを本人が忘れているくらいですから、
聴講して頂いて皆さんには、何も響かなかったのでしょうね。

今年は、反省を踏まえて、私が20年近く関わってきた、Net4U、連携パス、緩和ケア、拠点事業などの概要と、それらを活動を通して学んだ以下について話をしました。

・組織マネジメントとPDCAサイクル
・人材の活用、育成、信頼関係の醸成
・外部への情報発信
・地域外からの介入
・ITの活用
・鶴岡地区医師会の存在

職員に向けて強調したかったことは、鶴岡地区医師会という存在があってこそここまで成長できたということです。全国から注目されている医師会であることを誇りとして、今後も努力して欲しいと述べました。

最後に、「地域(人)は、志と仲間で成長する」、とし、
志(世のため人のために事をおこなうこと)を高くもつこと、
また、仲間(同志)を増やしていくことの大事さについて述べました。

話の前段で以下の動画をみてもらいました。
ドローンの空撮を交えた鶴岡の紹介動画です



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年頭のあいさつ(「めでぃかるとる」掲載)

2016-01-01 11:16:58 | 日記
年頭のあいさつ ~2015年を振り返り今後を展望する~

新年あけましておめでとうございます。皆様におかれましては、決意を新たに良き新年をお迎えのことと思います。

昨年は医師会長として4年目の年でした。鶴岡地区医師会の活動は医師会長だよりで報告している通りですが、役員、会員また職員の皆様の温かいご支援とご指導のおかげで、なんとか大過なく新年を迎えることができました。この場を借りて御礼申し上げます。

・悲しい出来事
 一方で、昨年は今野拓先生がトライアスロン競技中に亡くなるという痛ましい事故があり、さらには、五十嵐裕先生が病に倒れ閉院という不測の事態となってしまいました。お二人とも、将来を嘱望された優秀な内科医でしたので、当地区の医療体制にとって大変な痛手となりました。今野先生のご冥福をお祈りするとともに、五十嵐先生の早期の復帰を祈念したいと思います。また、両院に通院しておられた患者さんについては、内科系の先生方に引き継いで頂きました。ご支援、ご協力に深く感謝申し上げるとともに、会員・職員の皆様には、健康に十分留意されるようお願い致します。

・湯田川温泉リハビリテーション病院の今後
 各種事業の運営は、多少苦戦している事業体もありますが、全体として概ね順調に推移していると評価しています。湯田川温泉リハビリテーション病院については、老朽化、狭隘化が喫緊の課題となっていますが、昨年末に鶴岡市から今後の方向性についての回答がありました。既存建物の大規模改修、病院が要望している施設整備などを市が実施し、少なくとも今後15年間は施設運営を継続していくとの内容でした。整備計画を平成28年度中に作成し、改修は次年度以降早期に実施するとのことです。

・医療連携に関する組織のあり方の検討
昨年のめでぃかるとる新年号の年頭のあいさつにも書かせていただきましたが、緩和ケア推進協議会と地域連携パス推進協議会との統合など、地域全体としての組織のあり方を検討する場として「医療連携に関する組織のあり方検討準備委員会」を立ち上げました。メンバーは、鶴岡市、荘内病院、医師会から10名程を募り、計6回の話し合いを行いました。結論から述べると、少なくとも来年度は統合せず、現状維持という結果となりました。マンネリ化しつつあるとはいえ、両協議会共に順調に運営されていること、それぞれの協議会の経済的な基盤が異なること、さらには、これまでさまざまな努力を積み重ね、築いてきた庄内プロジェクトという活動を縮小させたくないという関係者の思いも強かったのだと思います。現状を変えることの難しさを思い知りましたが、今後とも現状に甘んじることなく、より良い方向を目指した提言を行っていきたいと思っています。

一方、6回の話し合いは決して無駄ではありませんでした。地域にとっての課題は何なのか、それを解決するためにはどんな組織がふさわしいのか、じっくりと議論する時間を持つことができました。話し合いのなかで、これからの超高齢社会において地域に求められるのは「地域包括ケアシステム」の確立であり、それを検討する場としての組織が必要ではないかとのことで概ね意見が一致しました。これら議論を踏まえ、来年度は今までの枠組みとは異なったかたちでの体制になる可能性があります。今後のことは、市の予算のこともあり、未確定ですが、少なくとも委員会での率直な意見交換を通して、当地区に必要とされる組織への共通の認識が醸成されたのではないかと考えています。コミュニケーションはすべての出発点であることを再認識しました。

・庄内脳卒中地域連携パス
鶴岡市民が日本海総合病院を受診する機会が増え、鶴岡地域の医療機関と日本海総合病院とのより密な連携が求められる時代となりました。現在、脳卒中地域連携パスは、酒田、鶴岡それぞれで運用されていますが、今後は庄内全域での統一した連携パスの運用が期待されています。そのような状況のなか、昨年よりは脳卒中の酒田・鶴岡統一連携パスの検討が始まりました。今年度は、数回の合同検討会議を重ね、本年4月には、IT化された新たなパスの運用が開始できそうです。刷新された庄内脳卒中地域連携パスのデビューを楽しみにしたいと思います。

・地域医療構想
地域医療構想は、高齢者人口がピークを迎える2025年を目処に、病床の機能分化・連携を進めるために、医療需要と病床の必要量を推計し、病棟単位で病床の再編を進めるというものです。山形県においても、県保健医療推進協議会の下に、「地域医療構想病床機能検討部会(県全体)」と「地域医療構想地域検討部会(村山、最上、置賜、庄内)」が設置され昨年から検討が始まりました。2025年における庄内医療圏における必要な病床数は、高度急性期が現在の稼働病床665から208床へ、急性期が1052から613床へ、回復期が316から709床へ、慢性期が627から594床へと推計されております。しかし、必要病床数が示されたとして、それをどう実現していくのか、地域で利害を超えた調整ができるのか、行政主導ではなく、現場(地域)主導での率直な話し合いの場が不可欠と思われます。

・医療事故調査報告制度
昨年10月から医療事故調査報告制度の運用が始まりました。制度の目的は、予期しなかった医療に起因する死亡または死産が生じた場合、医療事故の第三者機関(医療事故支援センター)への報告を義務化することで医療事故を集積・分析し、再発を防止することで医療の安全性を確保することにあるとされています。本制度は、個人の責任を追及するものではないとされていますが、報告することで、むしろ病院や個人の責任が追及されるのではないかという危惧が払拭されておらず、病院側には慎重な姿勢が伺えます。この制度が機能するには、報告はあくまで医療事故に起因する予期しない死亡・死産に限定され、過誤の有無に関わらず責任は追及されないことが保証される必要があると思います。

以上、昨年の当地区医師会や地域医療を取り巻くトピックを紹介し、年頭のあいさつとします。本年も、どうぞよろしくお願いします。

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