鶴岡地区医師会だより

三原一郎目線で鶴岡地区医師会の活動を配信しています。

No.534 (みずばしょう開所10周年記念祝賀会)

2015-06-30 12:10:12 | 日記



去る6月26日、鶴岡市長はじめ多くの関係者のご臨席のもと、「みずばしょう」の開所10周年記念祝賀会が行われました。以下、会長挨拶を引用しておきます。

<はじめに>

介護老人保健施設「みずばしょう」の開所10周年を迎えるにあたり当たり、一言ご挨拶を申し上げます。開所から 10年、課題も少なくありませんが、「みずばしょう」は概ね順調に運営されています。これも開所から今日に至るまで献身的にご尽力・ご支援・ご協力くださいました会員をはじめ、職員、行政機関、地域住民並びに関係者の皆々様の賜物であり、心から敬意を表するとともに、感謝申し上げます。

<建設までの経緯>

 さて、平成 13年に当地区医師会は、鶴岡市より湯田川温泉リハビリテーション病院の管理・運営を委託された訳ですが、その頃から当時の会長である斎藤先生はじめ執行部は湯田川温泉リハビリテーション病院退院患者の受け皿として、医師会立の介護老人保健施設の必要性を痛感していました。一方で、建設に当たっては、立地が最大の案件となっていました。結果的に「やまぶし温泉ゆぽか」の隣地という自然に恵まれた好条件の土地を取得することできましたが、これはひとえに当時の羽黒町並びに地権者の皆様より厚いご支援・ご協力によるものであり、心から感謝申しあげる次第です。

<建設にあたってのコンセプト>

 建設にあたっては、①利用者本位であること ②環境に配慮すること、③地域に貢献することの3つのコンセプトに掲げました。

1)利用者本位であること、

全室個室とし利用者さんのプライバシーに配慮しました。また、ユニットケアを導入し、10人程度の少人数で、家庭的な雰囲気で生活・療養できる環境を整えました。また、老健施設は生活の場でもありますので、歯科診療や理・美容のために、鶴岡地区歯科医師会、地域の理容組合・美容室のご協力を得て、歯科診療室、理・美容室も設置し、有効に利用されています。

2)環境に配慮すること、

暖房システムにはパネルヒーターを採用し、風のない輻射熱による居心地の良い環境作りを心がけました。また、太陽光パネルを積極的に導入し、エネルギーの省力化にもとりくみました。隣の「ゆぽか」からは、温泉を分湯して頂き入浴時に利用していますが、お湯は一部床暖房や消雪にも活用されています。

3)地域に貢献すること、

地域への貢献、地域との交流は、「みずばしょう」が大事にしてきたコンセプトのひとつですが、夜警業務委託をはじめ多くの地域の皆さんに協力を頂いております。また、食事は地元業者に委託し新調理法を導入し、可能な限り地元食材を使っています。また、ボランティア活動においても、生け花、動物介在活動、手踊りなどを継続的に行ってもらい、利用者さんのリハビリの一助となっております。

「みずばしょう」といえばなんといっても夏祭りです。弁天太鼓、子供太鼓、手踊り、職員による出し物、打ち上げ花火、各種露天など盛りだくさんの内容で利用者さんのみならず地域の皆さんが心待ちにするお祭りに発展しています。特に「打ち上げ花火」は医師会員、取引業者さんからご寄付を頂き、田んぼの所有者、消防、警察など関係機関の協力の元、地元の花火師に上げてもらっていますが、全く笑わなかった利用者さんが花火をみて最高の笑顔を見せてくれたというエピソードもあるくらい参加者全員が一体感のある一夜を過ごすまでの一大イベントになりました。今後とも地域への貢献を大事にしていきたいと思っています。

<みずばしょうの役割>

超高齢社会が進んでいます。80歳以上にもなると、脳卒中、がん、認知症など、なんらかの障害を抱えた人が多くなります。このような人たちをどのように支えていくのかが地域での大きな課題です。住み慣れた自宅での生活が続けられればベストなのですが、独居、老老など介護力が低下するなか、自宅での療養の継続は困難な場合が多いのが現実です。

そこで、施設(サービス事業所)を利用することになりますが、施設には、みずばしょうのような介護老人保健施設、介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)、小規模多機能、グループホーム、有料老人ホーム、サービス付高齢者向け住宅など多くの種類があります。自宅、施設、病院も含め、患者さんの状況に応じて、適切に施設を選択することが、ケアマナジメントとして重要です。

これらのなかでも、みずばしょうにような老健施設は、中間施設と呼ばれ、在宅復帰のための施設であり、また、在宅での生活を支援する施設でもあります。特養はすむ所、老健はよくするところ、とも言われています。

みずばしょうでは、在宅復帰へ向けてのさまざまな取り組みを行うことで在宅復帰率30%を確保しており、地域の中で、在宅医療を支える中間施設として十分に役割を果たしているのではないかと評価しているところです。在宅復帰へ向けて尽力頂いている職員には心から敬意を表するものです。

今後とも、障害を抱えていても、最期までその人らしく、生きがいをもって生きられる地域に貢献でき施設であるよう努力していく所存です。今後ともご支援・ご協力のほどお願い申し上げ挨拶といたします。


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

No.533 (南庄内在宅医療を考える会)

2015-06-25 17:18:46 | 日記
---------------------------------------
南庄内在宅医療を考える会
日時:平成27年6月23日 19:00~
会場:医師会講堂
---------------------------------------


今年度の在宅医療を考える会は、在宅医のサポート体制づくり一本に絞って、計4回の議論を予定しています。第一回目は、お隣の酒田地区から岡田恒弘先生をお招きして、酒田の在宅医療当番医制度についてのお話を伺いました。岡田先生と在宅を担う医師たちで意見交換を行いました。

酒田はバックアップ医を当番制にしているとのことですが、2年間の運用で当番医の出動は一度もなかったとのことです。一方、旅行や学会などで留守にする医師にとっては安心感につながっており、それなりの意義はあり、今後も続けていくとのことでした。

岡田先生の発表スライド

https://drive.google.com/file/d/0BzItwTwB_6zeWGR4YWpuNFFvUmM/view?usp=sharing

ディスカッションでは、

全く患者を診ていないバックアップ医が看取りを行った場合でも診断書を書いてもいいのか、死亡診断書に記載した死亡時間以降の(医療)行為に対して保険請求できるのかなどについて活発な意見交換が行われました。

岡田先生からは、主治医からある程度の情報提供を受けていれば、診断書を書いても構わないのではないか、医師の確認があって法的には死亡なのであり、医師が確認認するまでの行為は保険請求ができると考えるのが自然ではないか(例えば、心配停止している人(実際は死んでいる)の蘇生行為を保険請求できないということはあり得ない!)とのコメントを頂きました。

次回は7月16日19:00~から、医師会講堂です。
在宅医療を安心して行うためのしくみづくりです。
在宅医療を行っている皆様の参加をお願いします。


会の後は、岡田先生を囲んで懇親会を行い、更なるディスカッションで相互理解を深めました。





-----------------------------
平成27年度 第1回 南庄内在宅医療を考える会開催のご案内

南庄内在宅医療を考える会
  世話人:石橋学、土田兼史、中村秀幸、三原一郎

 主治医不在時の在宅患者の死亡に対応する「ゆきちネット」が発足して2年余りがたちました。細々とした利用状況ではあるものの、それなりの成果はあげているようです。

 しかしながらこの「ゆきちネット」は、あくまでも在宅患者の予見可能な死亡に対応する仕組みであり、主治医不在時の在宅患者の容態変化全般に対応可能なバックアップ体制は、未だ構築の端緒すらつかめないでいるというのが当地区の現状です。

 一方酒田地区では、すでにそのような仕組みが動き始めたと聞いています。そこでその内容と実際の運用状況について、酒田地区の在宅医療の中心人物のお一人でいらっしゃる、岡田内科循環器科クリニックの岡田恒弘先生をお招きしてお話を伺い、当地区の在宅医療相互支援体制構築の可能性について考え、話し合う機会を設けることにしました。

 実は今年度の「在宅医療を考える会」はこのテーマ一本に絞り、しかも短期間の集中的な議論を通して、新たな体制の構築を目指したいと考えています。
(※第2回:7月16日(木)、第3回:8月21日(金)、第4回:9月17日(木)を予定)






  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

No.529 (庄内プロジェクトスキルアップ研修会)

2015-06-19 10:58:35 | 日記
6月17日、南庄内緩和ケア推進協議会(庄内プロジェクト)主催のスキルアップ
研修会が行われました。今回は、日本海総合病院 精神科科長、認知症疾患医療
センター長 渋谷譲先生をお招きして、がん患者や認知症患者の精神面でのケア
サポートについて学びました。


----------------------------------------------------------------
庄内プロジェクト緩和ケアスキルアップ研修会
テーマ:人生のエピローグを支援する〜がん患者や認知症患者のケアサポート〜
講師:日本海総合病院 精神科科長、認知症疾患医療センター長 渋谷譲先生
日時:2015年6月17日 19:00~
会場:荘内病院講堂
----------------------------------------------------------------

以下、FBの「庄内プロジェクト」サイトからの引用です。

鶴岡出身の渋谷先生には、毎年この多職種向け緩和ケア研修会に来ていただき、医療職以外でもわかりやすいお話をしていただいており、昨夜も地域の多職種、多数の参加がありました。

以下、講義内容

◎がん患者への精神的サポート
「難しいケースでも、聴くスキルを生かして、丁寧な対応を心がけることが基本」
・がん医療への不満を感じる最大の理由は、患者・家族への精神面に対する支援の不足である(がん患者意識調査、2010年)
・がん患者の精神疾患:大うつ病 3-12%、適応障害 4-35%
・不安への対応:患者の話を聴く、共感を示す、必要に応じて情報提供、誤解や悲観的予後の訂正をする
・怒りへの対応:医療者が非がないのに患者から怒りが表出されることがある。患者の怒りに巻き込まれ、自分を擁護する言葉に終始したり、診察時間を減らして顔を合わせないようにしたり、逆に怒りを向け返すと問題が深刻化することもある。話をさえぎらずに最後まで聴く、話の途中で反論しない、共感を示す、非があれば謝罪する
・「死にたい」への対応:希死念慮の背景には多彩な苦痛が存在する。身体症状、うつ病や絶望感、自律性の喪失や依存の増大、乏しいソーシャルサポート。話し合いを避けること自体が患者の苦悩を深いものにしてしまう可能性がある。思いや背景を理解しようとする準備があることを伝え、話し合う姿勢を示すことが重要

◎認知症患者のBPSD(行動心理学的徴候)への対応
「一人の大人に対して敬意と愛情を持って接する姿勢」
・認知症は、自己肯定感(自尊心)が傷つき、役割を失う病であり、しばしばこれまでの対人関係(社会的関係)が壊れ、対人関係性の悪化を背景とした精神的背景としてBPSDが生まれる
・パーソンセンタードケア:介護者は、患者に関する、価値観、個人の人生の歴史、過去の興味や技能、好き嫌いなどを持っておくことが必要
・接し方のコツ〜バリデーション
認知症の人の「経験や感情を深め、共感し、力づける」
自尊心を傷つけない、納得のいくように話す、情報は簡潔に伝える

◎会場からの質問
1)がん治療医より
抑うつ状態ではあるが、がんが進行し余命に限りがある状況では、いろんなことを決めていただく必要に迫られる場面を経験する、できればそのようなことは避けたいが、どうしたらよいか?
→抑うつの深刻な状態では、その人の本来の形での意思決定はできないと考えられる(やけくそで決めてしまうなど)、どうしてもしなくてはいけない場合は、その人となりや考え方を知っている主治医やスタッフ、家族で話し合って決定していくこともやむをえないのではないか

2)病院緩和ケアチーム医師より
精神科常勤医がいない総合病院で緩和ケアに携わると、深刻な抑うつ(焦燥感が強い、希死念慮がある)患者に遭遇し、タイムリーに精神科医に相談できず、悩ましい場面があるが、そういった場所で働く医師にこれだけはやっておいた方がよいということがあれば教えて欲しい
→とりあえず「不眠」と「混乱・興奮状態」への対応策を2−3個持っておくことで、患者・家族・スタッフの苦しみは軽減しつつ、精神科医が来るまでの時間を待つことができるのではないかと思う、そのような対処法や薬物的対応を持っておくのが良いでしょう。

◎オープニングアクション
講演の前に、鶴岡に新たにできた訪問看護リハビリステーション「アジュダンテ」の石井康記さん、リハビリ訪問看護ステーション「みどり」の中村千佳さんから、施設の紹介がありました。
鶴岡にふたつしかなかった訪問看護ステーションが、リハビリを得意とするステーションが新たにできたことで、在宅療養されている方々のQOL向上につながりそうです。

講演の終わりには、鶴岡地区医師会長の三原一郎先生から、渋谷先生に感謝状が手渡されました。

渋谷先生には、身近な総合病院精神科医として、これからもいろいろ教えていただくことがたくさんあると思いますが、これからもよろしくお願いします。

次回の緩和ケアスキルアップ研修会は9月の予定です。
改めてご案内します。

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

No.526 (日本医療マネジメント学会)

2015-06-15 08:50:51 | 日記

----------------------------------------------------------
第17回 日本医療マネジメント学会
会期:1015年6月12日(金)・13日(土)
会場:グランキューブ大阪(大阪国際会議場)
会長:パナソニック健康保険組合 松下記念病院院長 山根哲郎
-----------------------------------------------------------

仙台から大阪へ移動し、日本医療マネジメント学会へ参加してきました。

学会のテーマは、不易流行(松尾芭蕉)でした。以下、会長講演から。



来るべき超高齢社会に備えて、すばやく対応しなければならないことがある一方、医療の中には絶対に変わってはいけないこと、変えてはいけないことがあります。変わるべきものとしてこれからの社会構造の変化や経済情勢などにあわせて医療行政を進めていかなければなりません。医療の安全、質の向上、効率化などの改善策として、医療安全、医療連携、クリティカルパスなどの取り組みがありますが、まだまだ多くの課題があります。

一方、医療において変わってはならないもとして、医療人としてのモラル、生命に対する尊厳、患者さんへの思いやりや博愛の精神があります。医療人としての noblesse obligeなどの言葉でその責務が叫ばれていますが、このことの重要性をはっきり示していかなければなりません。

よい医療を永続的に提供するには、医療の質も量もどちらも重要です。現代医療は質より量を求める傾向にありますが、質は不易、量は流行であるとみて、どちらも重要であることを認識して医療を継続することが必要です。

医療人としてどうあるべきかを改めた考えさせられた、志の高いすばらしいお話でした。


当地区からは、以下の4題の報告がありました。

◇介護支援専門員に対する多職種連携研修会の効果
 ~アンケート調査から見えた現実~
 南荘内緩和ケア推進協議会 瀬尾利加子


◇食形態の情報共有と活用へ向けた同・多職種連携の取り組み
 とよみ管理栄養士事務所 小川豊美


◇がん患者の口腔機能管理を目的とした医療歯科連携の取り組み
 鶴岡市立荘内病院 鈴木 聡

◇シンポジウム:2025年モデルを見据えた地域連携を考える
 研究者の立場から(インフォーマルサービス、地域力)
 東北公益文科大学准教授 鎌田 剛


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

No.525 (日本医療情報学会春季学術大会)

2015-06-14 10:40:46 | 日記



仙台で行われた医療情報学会春季学術大会でのチュートリアルで、Net4U~Note4Uの話をしてきました。このチュートリアルの目的は、先駆的に地域包括ケアにICTを導入している事例から、すでに普及期に入った多職種共動を前提とする地域包括ケア環境の中で求められる完全管理についてディスカッションするというものです。


-----------------------------------------------
第19回医療情報学会春季学術大会
~地域包括ケア時代のシステム安全管理を考える~
日時:2015年6月11日 13:00~15:00
会場:仙台国際センター 2F 「橘」
-----------------------------------------------

講演資料


1、多職種協働の現場における情報取り扱いの現状
  これからの地域連携と各職種の役割
  国立病院機構愛媛病院 生駒真有美氏

2、地域包括ケアにおける情報システムの有用性(ビロードケアを例に)
  NPO法人 天かける 伊藤勝陽氏

3、地域包括ケアにおける情報システムの有用性(Note4Uを例に)
  山形県鶴岡地区医師会 三原一郎

4、パネルディスカッション
 座長:相澤氏
 コメンテーター
  生駒真有美(国立病院機構愛媛病院)
  伊藤勝陽(NPO法人天かける)
  伊藤龍史(エスイーシー)
  佐野弘子(iMISCA)
  三原一郎(鶴岡地区医師会)
  森田嘉昭(富士通)

以下は、パネルディスカッションからのメモです。

◇システム普及(使いたくない医師への対応)、
・病院が積極的に主導する必要がある(尾道)
・病院への紹介率の高い、あるいは在宅療養支援診療所をターゲットに勧誘(尾道)

◇セキュリティー
・セキュリティーだけではなく、プライバシーも考慮する必要がある
・介護職へ、医療情報をどこまで公開するか?
・在宅医療は、多職種で個人情報を共有しなければ成り立たないという部分もある
・個人情報(プライバシー)は、あくまで本人がコントロールすべき
・個人情報保護は一律なものではなく、それぞれで異なるもの
・システムを使う側には、十分な説明と同意が求められる
・サービス提供側だけではなく、患者さんの参加が今後の課題

◇システムの安全管理には、
・技術力と運用力が必要
・技術力は充実しているが、運用力が低いのではないか
・事故が起きた場合、ネガティブに考えるのではなく警鐘と受けとめ改善していく努力が必要
・監査、教育が重要

◇二重登録(転記)
・普及の障害になっている
・看護師は記載が多いので転記が負担になっている→軽減のためのシステムを開発中(鶴岡)
・画像だけでも良いのでは(紙に書いたものを写真に撮って添付)
・訪問看護のテンプレートを開発中(富士通)
・データの標準化で、転記を減らすことができる(エスイシー)


地域医療連携ネットワークサービス事例紹介(NEC提供)

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

No.524 (医師会勉強会 「サービス業としての医療」)

2015-06-06 11:51:36 | 日記


-------------------------------------------------------------------
医師会勉強会「サービス業としての医療」
講師:人とホスピタリティー研究所代表
   元 ザ・リッツカールトンホテル日本支社社長 高野 登 氏
日時:平成27年6月5日 19:00~
会場:東京第一ホテル 鶴岡
-------------------------------------------------------------------

医師会勉強会としては異例ですが、元ザ・リッツカールトンホテル日本支社社長 高野登氏をお呼びして「サービス業としての医療」と題した講演を拝聴しました。参加者が200名を越える盛会で、サービス~ホスピタリティーというテーマに、多くの皆さんが大きな関心をもっていることが伺われました。日々、患者さん、利用者さんと接しながらも、悩みが多いことの裏返しなのかもしれませんね。

講演のキーワードは、ホスピタリティーだったと思います。サービスとホスピタリティーの違いはなんでしょうか。サービスはあくまでサービス提供側が決めることです。他方、ホスピタリティーは、受ける側(お客様)が評価するものです。どんなホスピタリティー溢れるサービスだったとしても、お客様が評価しなかったらなかったに等しいのです。

また、あるインタビューでは、「何をするかがサービス、どう伝えるかがホスピタリティ。」とも語っています。「例えば、演台にはたいていペットボトルとグラスが用意されていますよね。そんなとき、ホテルマンに『ペットボトルのふたは取っておいた方がよろしいですか?』 、『水は半分グラスに注いでおいた方がよろしいですか?』こう聞かれたら、うれしくないですか?」この状況で、「ペットボトルを用意するのがサービス」。「それをどう相手にに届けるかがホスピタリティ」。


ホスピタリティーを発揮するには、関心をもち、気づくことが必要です。講演のなかでは、左利きの人のナイフとフォークのセッティングや車椅子での食事を例に、気づきとホスピタリティーについてのエピソードが紹介されました。

リッツでは、ホスピタリティーを「相手の心に自分の心を添えて対話する姿勢」と定義しています。ホスピタリティーを発揮するには、なぜ自分は今の仕事をしているのか、つきつめれば、どうしたらもっといい人生を自分もお客様も送れるのかを考え続けること(哲学)が前提になるとのことでした。また、ホスピタリティーを身に着けるには、腹落ちをする研修を繰り返すことが必要とのことでした。


心に残ったキーワード

.相手の立場で考える

・目の前のことに「関心」をもつ

・理解(understanding) と 気づき(awareness)は異なる

・哲学(=理念)ぶれない信念をもつこと (自分の哲学はなんだろう?)

・リーダーが成長しなければ回りは成長しない

・チームは目標・目的を共有する集団、(グループは単なる集合体)

・師匠とはあたらしい視点を気づかせてくれる人

・45秒ルール(45秒で伝わらなかった、それ以上時間をかけても伝わらない)

・心の筋トレ(繰り返す研修・練習が必要)

・今日から変わる!という意識


以下、講演メモ

・医療者の特徴

 医療者:若い頃からなりたいと思ってなった人が多い。
 仕事に対する 愛着、想いが強い、忠誠心が強い。
 一方で自分の職業に対する愛着は強いが、病院(組織)に対する愛着心には乏しい傾向がある
 他方、7年待ってでも行きたい「病院」へ就職する人もいる
 患者は、良いチームに気づく
 医師は病気とは向きあうが、患者(人)とは向き合っているのか?
 看護師から、ストレスの最大の要因は医師!という話も聞く。
 医師にとっては、多くの選択肢を提案できることは重要
 患者(人)と向きあうことで、患者との関係が進む

・関心

 誰の視点で、物事をとらえるか(自分でなく相手の視点)、
 目の前のことに「関心」をもち、「気づく」こと

 例:左利きの人への食器のセッティング
  ある左利きの人が、ホテルのレストランに来るたびに自分でフォークとナイフの位置を
  左右交換していた。それに「気づいて」、その人には前もって位置を換えておくの
  がホスピタリティー。

・理解understanding (頭で) と 気づきawareness(心で)は異なる

  両方が必要
 「大丈夫ですよ」と言ってあげることは、気づき
  正しく理解し、正しく気づくこと、

・哲学

 ブレないことをもっていること = 哲学 (理念)
 何のために仕事をしているのか、(哲学以外の仕事はしない)

 やるべきことは分かっていても、面倒だからやらないのが普通
 リッツは、他が面倒でやらないことを実直にやっている
  例えば、プールに落としたコンタクトレンズでも探す
  当たり前でないレベルでやること

・リーダー

 リッツが重要としているのは、リーダー
 増幅型リーダーと消耗型リーダー
  http://www.transformation-lab.com/2013/06/blog-post.html
 リーダーが成長しなければ、回りは成長しない
 リーダーが育つと哲学が成長する

・使命と業務内容

 例:タクシー運転手の対応
 タクシーの運転手にあなたの哲学はなんですかと聞くと多くは、「お客様を安全に目的地まで効率的お運びすることです」と答える。これは業務内容に過ぎない。例えば、長野中央タクシーの運転手は、「命がけでお客様の人生に向き合っている」と答える。これが会社の哲学である。


 例:あるタクシーで子供が服を汚した話
 子供が病気で病院へ送る途中、子供が気持ち悪くなり吐いて服を汚してしまった。親は、服を脱がせ、それをタクシーへ放置した。子供が恨めしそうにしていたことに気づいたタクシー運転手は、その後汚れた服をクリーニングし、病院へ戻り、先ほどお送りしたお客様へ渡して下さいと伝えたという。これは業務内容ではなく、使命感からでたホスピタリティーの例である。


・グループ と チーム

 グループは、単なる集合体。
 チームとは、同じ目標・目的を持つ集団(例:サッカーチーム)。

・伝える と 話す
 しゃべらない方が伝わることがある、
 パワポでは伝わらない
 自分が伝えたことで、相手が影響を受けるはうれしいこと
 
・師匠
 師匠とは新しい視点を気づかせてくれる人
 障害者の師匠がいる、彼には多くを気づかされた
 例えば、世の中に障害者はいない、健常者がつくったしくみが障害だ 
 例えば、ある障害者の団体が車椅子でホテルのレストランに食事にきた。
 食事テーブルの椅子を片付けて車椅子で食事をしてもらった。
 それなりに感謝された。
 でも、後で聞くと、折角のホテルのレストラン、ちゃんとして椅子で食べたかったと聞かされた。
 その後、車椅子の人には、どちらにするか聞くようにした。
 レストランの椅子で食事ができたことは大変喜んでもらえた。
 気づきを通してのホスピタリティーの例である。一方、知ってやらないのは罪である。

・関心をもち、相手の物差しで考えること!

・4・5秒ルール
 45秒で伝わらなかった、それ以上時間をかけても伝わらない
 相手の立場になって考えたか?が大事


・心の筋トレ
 繰り返す研修、練習が必要
 1-2回の研修で、良くなるわけない
 何すればよいか、気づくことが第一歩
 腹落ちをする研修を繰り返す
 今日から、変わるという意識!

リッツ・カールトンから学ぶ、ホスピタリティ

 

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする