今回の庄内地域医療連携の会は、宮崎県立日南病院の木佐貫先生をお呼びしての医療連携の総括的なお話でした。
知識を整理する上でも、今後の地域医療を考える意味でも、大変勉強になりました。
配布資料から、講演の内容をまとめてみました。
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庄内地域医療連携の会 第4回 平成27年度
日時:平成28年2月26日 18:30~20:00
会場:山形県庄内総合支庁 4F講堂
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参加者:106名 (ケアマネ、看護師、保健師、MSW、薬剤師、事務、東北福祉大学生、医師など)
「地域医療連携講演会」
基調講演
「われわれがとりくむべきこと ~地域医療連携のこれまでとこれからをふまえて~」
演者:宮崎県立日南病院 医療管理部 医療連携科 部長 木佐貫 篤
座長:庄内地域医療連携の会 世話人 渡邊田鶴子(ほたる)
1、地域医療連携の基本概念
医療連携とは、地域の医療機関がそれぞれの役割(機能)を分担・発揮し、お互いにスクラムを組んで、患者や住民の健康と福祉を支えていく仕組み、あわせて質の高い医療を効率的に提供する。連携を成功させるたえみは、パートナーシップ(共存共栄)の関係を築いていくことが求められる。(WIN-WIN-WINの関係構築)
連携は誰のためのもの? → 患者さん(利用者)のためのものである!
患者が、最も適切な時期に適切な場所で適切な医療をうけることができることを保証されて、始めて安心して生活を継続することができる。
まとめ(1)
「施設完結型」の医療から「地域完結型」医療への転換が求められている。そのなかで医療連携はすべての医療介護機関にとって、避けられない重要なマネジメント項目になっている。
医療連携のメリットを、病院、診療所だけではなく、患者にも感じられるシステム作りが重要である。(WIN-WIN-Winの関係構築)
医療連携は、患者のために行うものであり、連携室には、コーディネートの役割が求められる。そのためにはまず「face to faceの関係づくり」から、そして「mind to mindの関係へ」
まとめ(2)
紹介率を要件とする診療報酬制度導入が、地域医療連携の大きな牽引力となった。平成18年4月の診療報酬改定で、前方連携主体の第一フェーズから、後方連携主体の第2フェースとなった。その後の診療報酬の動向にも国が医療介護連携推進をめざすことが見受けられる。
平成20年度から新しい概念に基づく医療計画がスタートし、平成25年からは5疾患5事業・在宅医療への取り組みが求められるなかで、医療連携がさらに大きな役割を果たすことが期待されている。(第3フェーズの医療連携の時代)
第4フェーズへの展開(2014年から):地域医療ビジョンを実現する地域連携。
データに基づき地域包括ケアをめざすシステム設計とそれを意識した診療報酬体系の導入。市民や他職種を巻き込みさらに地域全体を包括する連携
2、これからの地域医療のポイント
1)医療提供体制の新たな変革
*都道府県地域医療計画
5疾患5事業+在宅医療
*地域包括ケアシステム
ポイント1
・地域で支える(専門職ネットワーク)、地域が支える(住民による地域づくり)
・縦軸(医療と介護の一体化)、横軸(予防・生活支援とまちづくり)が組み合わさること、医療と介護を一体的に提供する体制づくり
ポイント2
・地域により事情は異なる
・医療と社会の多職種連携の概念がズレている
・医療福祉産業だけではできない→医療福祉産業とその他の産業間とのギャップ/断絶をどうつなぐか?
ポイント3
・持続可能性を維持(財政・ヒューマンパワー)
・意識改革(行政、提供者、利用者、住民)
・人材育成(システムを担う人材の確保)
*社会保障・税の一体改革
医療介護総合確保推進法
地域医療構想=「2025年の医療需要を予測して、そのときに必要な医療資源の過不足がないように、今から皆で話し合い準備しましょう」
医療介護総合確保基金
2)多職種からなる連携体制づくり
・医師をはじめとする多くの職種が参画
・地域連携パスなどを通じての目的共有、交流
・各職種の専門性を活かした医療・支援活動
・それぞれをつなぐ連携部門のネットワーク
3)地域医療連携の評価
4)連携を担う人材育成
5)地域住民・コミュニティとの連携
医療とは、医療を提供する側と医療を受ける側(住民)がお互いに理解を深めて行われるもの
一般住民への医療についての普及啓蒙
医療を受ける立場から支える一員として協力
地域住民・コミュニティーをいかに巻き込むか?
『つなぐ』がキーワード! 医療介護資源を「つなぎ合わせる」
「競争」から「共存・協力」そして「協働」へ
まとめ(3)
地域包括ケアには「専門職による医療・介護の一体化」「予防生活支援・まちづくり」の2点が要点となる。その成功のためには、さまざまな産業が関わるとともに地域におけるガバナンスが重要である。
成熟社会のなかでこれからの医療介護体制を考えていくためには、われわれが地域医療構想などを通して、住民とともに地域全体における未来像を共有していくことが大切ではないか。確保基金はそれらビジョンを実現するために活用したい。
まとめ(4)
医療介護福祉施設は多職種連携で協働し、限りある医療介護資源をつなぎ最大限活かす取り組みが必要である。その取り組みを評価することは重要で、かつコーディネートする役割を担う人材の確保も重要。すなわち連携を担うスタッフの役割はとても大切なもの。
医療はかぎりある資源であることを地域住民に理解していただき、インフラであるとう認識を共有したい。そして治す医療(cure)から治し支える医療(cure & care)へ。
3、地域包括ケアを進めるために
日南市における取り組み
・南那珂在宅ケア研究会
・日南市在宅医療・介護連携推進協議会
・日南市在宅医療介護連携推進室(Sunオリーブ)
・日南市在宅医療介護連携情報共有システム(Net4U)導入
・都道府県医療介護連携調整実証モデル事業
・ケア・カフェ
・在宅医療・介護れ痙に関するシンポジウム・市民講座
・地域医療リーダー養成講座(日南塾)
・メディカルサイエンスユースカレッジ
・地域医療出前講座
4、われわれが取り組むべき課題
地域医療構想の実現
地域包括ケアの実現
医療と介護の統合 まちづくり・地域づくり
これからは評価の時代
地域包括ケア時代における診療所・病院の役割
・自らの役割を把握し、伝えていく
・地域生活にとけこむかかりつけ医
・多職種とのつながり・市民からの信頼
・病院は地域医療を支援する立場
・地域全体の健康づくりを担う
講演会後はいつものように懇親会で、mind to mindの関係を深化させました。