日本医師会医療情報システム協議会で講演してきました。
Ⅳ。全国保健医療情報ネットワークについて
座長/運営委員(目々澤委員、若林委員、小室委員)石川広己(日本医師会常任理事)
【講演】
①全国保健医療ネットワークの構築に向けた取り組み状況について
南川一夫(厚生労働省医政局研究開発振興課医療技術情報推進室長)(15分)
②保健医療記録共有サービスの基盤整備にかかわる調査事業について
伊藤伸昭(日本医師会ORCA管理機構事業推進部部長) (15分)
③医療・介護連携モデル(八戸地域および鶴岡地域)
三原一郎(鶴岡地区医師会理事) (12分)
④レセプトデータを活用した医療機関連携(高松地域)
松本義人(高松市医師会理事)(12分)
⑤調剤情報を活用した薬局連携モデル(酒田地域)
島貫隆夫(日本海総合病院病院長)(12分)
⑥EHR PHR連携モデル(沖縄地域)
比嘉靖(沖縄県医師会理事)(12分)
<休憩 25分>
⑦全国保健医療情報ネットワークとMaster Patient Index (MPI)
MEDIS-DC理事長/自治医科大学客員教授 山本隆一(15分)
⑧全国保健医療情報ネットワークの実運用に向けて~情報の管理責任とセキュリティ技術~
東京工業大学像情報工学研究所教授 大山永昭(15分)
【パネルディスカッション】
鶴岡地区は、山形県の日本海に面する庄内地方の南に位置する。
人口、約14万人ですが、東北地方でもっとも広い面積を持つ地域という特徴がある。
医療資源としては、診療所の数は全国平均であるが、病院勤務医は全国平均の半分という
医師不足という悩みを抱えている地域でもある。
今回の事業の中核となる医療介護連携システムであるNet4Uについて簡単のその歴史を述べる。
Net4Uは2000年の経産省の医療情報ネットワーク化推進事業を受託し開発された、日本で最も歴史
のある地域電子カルテである。
2012年には、医療と介護を繋ぐヘルスケアソーシャルネットワークNet4Uとして全面改訂された。
その後、ID-Linkとの連携、患者家族支援ツールNote4Uなどの機能を追加し、現在に至っている。
そのような背景の元、今回の総務省事業の実証フィールドに選定された。
Net4Uは、鶴岡のみならず、全国8か所、850施設に、導入あるいは導入が決まっている。
本年度の総務省事業は、4つのテーマで全国各地で実施されたが、鶴岡地区は、八戸地域共々、
医療介護連携モデルとして実証事業に参画した。
なお、お隣の酒田地域は、調剤情報を活用した薬局連携として本事業に参画している。
医療・介護連携モデル事業のおもな目的は、医療介護連携データの標準化、および、介護業務システム
と医療介護連携システムの相互接続の標準仕様を策定し、それを実際の現場で運用しその効果を検証すること。
背景として、病院と介護の連携強化が求められるなか、介護事業所から病院への入院時情報提供書など文書に
よる情報提供が介護報酬で評価されているが、その作成、提供にはICTの活用が効果的と考えられていることがある。
実証事業の参加者は、病院2施設、居宅介護支援事業所3施設、診療所5施設、訪問看護ST2施設である。
これら施設を相互につなぐシステムとしてNet4Uを利用する。実証事業のフローであるが、在宅あるいは
施設に入所している患者が入院あるいは退院するポイントで入院時情報提供書、退院退所情報記録書などを
Net4Uにアップロードし、関係職種間で共有することでその有用性を検証するというもの。
その際、介護支援事業所では、業務システムで作成した文書を標準化したデータとして書き出し、
それをあらたに開発してアップローダーを利用し、Net4Uにアップロードする。
なお、居宅介護支援事業所以外からの文書のアップロードは、Net4Uに実装された文書作成機能を利用する。
結果です。
2か月の実証事業で延べ51例を登録した。
市立荘内病院事例は、入院:5例、退院:4例、9例、協立病院事例は、入院:22例、退院:20例、42例
協立病院とふたばは、同じ法人内の施設であり、入退院を繰り返す医療依存度の高い患者が多いという
ことがあると考えらる。
登録文書数の総数は138件、
居宅介護支援事業所(介護側)からの登録が多く、次いで病院、
病院からは、退院時サマリーの登録が多い、
これは、今回の事業が、介護事業からの情報提供がおもなフローになっているためと思われる。
また、訪問看護ステーションや診療所からの登録は、事業フローによるというよりは、以前から
やり取りの継続によるものがほとんどである。
登録した文書類は、90%は当日に閲覧されていた。
情報伝達の即時性が高いことが示された。
連携数の多い事例をピックアップし、介入前と介入後の情報のやり取りを比較してもの。
すでに、介入後は文書のみならず、所見、訪問記録、患者メモなどが記載が増加していた。
ヒアリング結果(ポジティブな意見)
病院に入院すると、Net4Uによる連携が途絶えてしまっていたが、今回のフローにより連携が継続
されることが大きかった(医師)
元々Net4Uで情報共有しているケースでは、アップロード機能による手間の軽減と病院との情報共有
のメリットを感じている(ケアマネジャー)
予定入院の場合、事前に情報が得られることは非常に有効(連携室看護師)
レスパイト入院患者については有効だった(訪問看護師)
訪問看護情報提供療養費3をNet4Uを利用することで算定している(訪問看護師)
ヒアリング結果(ネガティブな意見)
同意の取得に手間と時間を要した(連携室看護師)。
連携室事務の業務量の増加で大変だった(連携室看護師) 。
主治医がNet4Uに参加していない場合、事務職間だけの事務的な参照で終わってしまう(医師)。
病棟に直接顔をだすことが減ったことで、「顔のみえる関係づくり」でのマイナス面もあった(ケアマネジャー)。
実証事業から得られた成果
介護業務システムとNet4U間でのデータ内容を含めた相互接続に関する標準化を行い、
実際の現場で運用し利便性、有効性を確認できた。
登録された90%以上の文書は当日のうちに他施設から閲覧されていることが確認でき、
ICTを活用することで、情報伝達の高い即時性を確認できた。
事業でのフローを運用することで、対象文書以外のデータにおいても情報共有量が増加する
ことが確認できた。
実証事業から得られた課題
病院連携室と居宅介護事業所間のみのやりとりでは有効な情報共有につながらない。
→在宅主治医、訪問看護師の参画と積極的な利用が求められる。
Net4Uの病院内での利用が進んでいないため、病院内での情報共有に課題がある。
→病院での利用環境を含めた改善が必要。
入院時での同意の取得に手間と時間を要する。
→入院前からのNet4U登録が望まれる。