お父さんのマリポタ日記。
マリノスのこと、ポタリングのこと。最近忘れっぽくなってきたので、書いておかないと・・・
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※高瀬隼子(1988年愛媛県生まれ。立命館大学文学部卒業。2019年「犬のかたちをしているもの」で第43回すばる文学賞を受賞し、デビュー。著書に「犬のかたちをしているもの」「水たまりで息をする」など。本作で第167回芥川賞受賞)



●「おいしいごはん」は人それぞれ

 食品などのラベルパッケージ会社の支店営業部という小さな職場での出来事を「食」を絡ませて描く。仕事はそこそこできるが出世に興味のない二谷さん、皆が守りたくなるような存在で料理上手な芦川さん、仕事ができてがんばり屋の押尾さんの3人の同僚の奇妙な恋愛関係を中心に展開されていく。

 時々、誰が主語なのか分からなくなり、ちょっととまどう。ただ表現の仕方は独特で面白い。少し思考を巡らせ、その図を想像すると腑に落ちる。

 主要登場人物の芦川さん、押尾さんの女性2人の性格は一貫しているのだが、男性の二谷さんがあやふやというか、「あれ、こんな事しちゃうんだ」ととらえどころがない。まあ、こういうのが現実では普通の姿なのかもしれず、実は共感できたりする。芥川賞の選考でも「一面的にいい、悪いではない、人間の中の多面性がよく描かれている」と評価された。

 「おいしいごはん」とタイトルにあるがレシピの類は出てこない。食事やスイーツを作るのは芦川さんだけ。押尾さんはみんなで食べるのは嫌と断言し、二谷さんはご飯を食べるのが面倒とさえ言う。しかし「うまいな」と思うものはある。「おいしいごはん」は人それぞれだ。

 冒頭に出てくる、昭和を感じる支店長の「そば食べたい。みんなで食いにいくぞ」という号令シーンですっと物語に入り、居酒屋で押尾さんが「それじゃあ、二谷さん、私と一緒に、芦川さんにいじわるしませんか」と言うシーンに心をつかまれ、3人の関係が気になって最後まで読み進めたが、終盤で描かれる職場でのシーンはあまり現実的でない気がしたかな。芦川さんの本音をのぞいてみたい。

 

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