※浅田次郎(1951年東京生まれ。95年「地下鉄に乗って」で第16回吉川英治文学新人賞。97年「鉄道員」で第117回直木賞。00年「壬生義士伝」で第13回柴田錬三郎賞。16年「帰郷」で第43回大佛次郎賞)
●昭和な話に60代は弱い
還暦を前後にした登場人物たちが東北のとある新幹線停車駅から1時間に1本のバスに1時間揺られ、老いた母の住む山深い里へ帰ってみると、そこで待っていたのは見知らぬ母と人々。「よく帰って来た」と名も知らぬ母は喜び、地元食材を使った手料理でもてなし、寝物語も聞かせてくれた…。お互いが嘘と知りながらその役割を演じていくうち、まるで本当の母、故郷のような思いに陥っていく。
母は偉大なり。そしてふるさとも。設定は現代的なのだが、郷愁を誘う昭和なお話。こういうのに60代は弱い。どう決着が付くのかと思ったが、これしかない結末だった。泣けます。
岩手弁もよく読むとなんとなく理解できた。「どんとはれ」。
【追記】 24年8月にNHKでドラマ化。子供役に中井貴一、松嶋菜々子、佐々木蔵之介。そして、ちよ役に宮本信子。79歳だが、その演技力に驚かされた。原作のイメージ通り。この役はこの人にしかできなかった。
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