チェロ弾きの哲学ノート

徒然に日々想い浮かんだ断片を書きます。

ブックハンター「OPSとチーム得点の相関係数」

2018-01-20 16:05:39 | 独学

 155. OPSとチーム得点の相関係数  (佐藤健太郎著 文芸春秋2017年10月)

 これは「数字の科学」14に書かれていたものです。これを紹介しますのは、私が野球に詳しいわけでもなく、数学に詳しいわけでもありません。

 この考え方は、実用性と応用性に富む考え方なので、紹介したいと思いました。

 現実の様々な事象に於いては、数学的に美しく割り切れるものは、少ないのですが、複数の事象をある数式にしたものが、ある範囲において、相関関係があり、実用性がある可能性は、残されていると考えます。

 では、「数字の科学」を読んでいきましょう。(OPS :on-base plus slugging 出塁率+長打率)

 

 『 プロ野球に於いては、ペナントレースの行方と並び、最多勝や首位打者といった個人のタイトルにも注目が集まる。これらは永遠の記録として残るし、契約にも大きく影響するから、選手たちも必死になる。

 しかし、これらは選手の評価基準としてどの程度妥当なものなのだろうか? 先発投手の勝ち星は、味方打線や救援投手の実力に大きく左右される。

 打率には、長打力や四球による出塁が反映されてないから、打者の能力のごく一部しか表していないともいえる。

 こうしたことから、米国では統計学的手法による選手の実力数値化の試みが行われてきた。その結果編み出された指標の一つがOPSで、長打率と出塁率を足し合わせて算出する。

 この両者は性質の違う数値なので、本来は合計すべきではない。湿度六十%と降水確率三十%という数字を足し合わせるようなものだ。

 ところがこのOPSという数値は、チームの得点数と極めてよく関連することがわかっている。二つのデータの関連性は相関係数という数字で表され、これが一に近いほど関連性が高い。

 解析してみると、打率とチーム得点の相関係数は0.七七六にすぎないが、OPSとのそれは0.九四一にも達する。試合に勝ちたいなら打率ではなく、OPSの高い打者を並べるべきということになる。

 OPSは0.八を超えれば一流、0.九以上なら球界を代表する打者とみなされる。本稿執筆時点で0.九を超えているのはエルドレッド、鈴木誠也、柳田悠岐、秋山翔吾ら九名。

 ちなみに王貞治はOPSが一.二を超えた年が五度あるというから、いかに傑出した打者だったか知れる。米国では、OPSを重視したチームづくりが成功して以来、データ分析が飛躍的に進歩した。

 今や、全ての投球や打球の軌道が正確に計測されており、野手の守備能力はもちろん、捕手がきわどい球をうまく捕球してストライクに見せる技量までが精密に数字ではじき出され、査定に生かされている。

 打率や勝ち星はファンの間では受け入れられているが、能力評価の際にはもはやあまり重視されなくなった。

 現代社会では、視聴率や内閣支持率といった数字が大々的に発表され、多くの人々が振り回される。しかしこれらわかりやすい数字は一体何を表し、どの程度実態を捉えたものか。考え直す余地は、大いにありそうだ。(第154回)