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新型コロナ感染で嗅覚失う理由、ハーバード大研究者が説明>ウイルス感染で鼻上皮細胞が損傷か?

2020年04月08日 18時45分55秒 | 医学と生物学の研究のこと
新型コロナ感染で嗅覚失う理由、ハーバード大研究者が説明


 新型コロナウイルスは鼻の主要細胞を攻撃する能力があり、それから一部の感染者が嗅覚や味覚を失った状況を説明できる可能性がある。ハーバード大学医学大学院の研究者らがこう指摘した。 
研究者によるヒトとマウスのゲノムデータの分析で、鼻の奥にある特定の細胞には、新型コロナが体内侵入で標的とする明確な形状のタンパク質があることが判明した。これらの細胞の感染は直接的または間接的に嗅覚の変化につながる可能性があると、研究者らは28日に公表された論文で説明した。
 
世界各地の医師らは新型コロナウイルス感染症(COVIC19)患者が突然に嗅覚と味覚を完全もしくは部分的に失った原因不明の症例を報告している。嗅覚障害や味覚障害は今回のパンデミック(世界的大流行)に関係した「重大な症状」だと、米国耳鼻咽喉科・頭頸部(けいぶ)外科学会は22日に発表した。
 
同学会はこうした症状を感染のスクリーニング手段のリストに追加するよう提案。その他の既知の原因なくこうした症状が見られる人は自己隔離を検討し検査を受けるべきだとした。
 
ハーバード大の医学大学院神経生物学部のデービッド・ブラン氏とサンディープ・ロバート・ダッタ氏は、新型コロナ感染によって生じた鼻腔(びくう)の炎症が嗅覚を妨げる可能性があると指摘。または、ウイルス感染で正常な嗅覚機能に必要な鼻上皮の細胞が損傷する可能性もあるとの分析を明らかにした。その上で、嗅覚喪失の原因究明が診断をサポートし疾患の影響を判断する上で重要な意味を持つとしている。
 
さらに、患者の嗅覚障害が長引けば、栄養失調に加え、煙やガス、腐った食べ物など危険な臭いを感じることができないことに伴う損傷、鬱(うつ)病をはじめとする精神疾患につながるリスクを挙げた。
 
原題:Have Coronavirus and Can’t Smell? Harvard Scientists Explain Why(抜粋)


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政府の「緊急経済対策案」は、なぜ感染拡大の収束後の話ばかりが充実しているのか>観光・運輸業、飲食業、イベント・エンターテインメント 事業を

2020年04月08日 18時30分42秒 | 政治のこと
政府の「緊急経済対策案」は、なぜ感染拡大の収束後の話ばかりが充実しているのか

新型コロナウイルスの感染拡大を受けた緊急経済対策について、政府は、4月6日に開かれた自民・公明両党の会議で、所得が減少した世帯への現金30万円の給付や、児童手当の上乗せなどを行う案を示しました。しかし、この緊急経済対策案は、いくぶん理解しがたい部分があります。 

・具体的な記述がない
 4月6日に開かれた自民党と公明党との会議で、政府は新型コロナウイルスの感染拡大を受けた緊急経済対策の案を提示しました。治療薬として効果が期待される「アビガン」を年度内に200万人分の備蓄を目指すことなどを盛り込んだ「感染拡大防止策と医療提供体制の整備及び治療薬の開発」や、1世帯あたり30万円の現金給付などの「雇用の維持と事業の継続」についての対策が明らかにされました。 
 しかし、この案には明確な金額など規模が示されておらず、中小および小規模事業者などを対象にした給付金についても明示されていませんでした。「緊急」対策と言う割に、具体的な記述が少ないのです。 

・力点は「収束後」の謎
 この緊急経済対策案を通して読んでみると、曖昧な部分と明示されている部分の差が大きく、バランスの悪いものになっているように感じられました。 
 これを読んだある地方自治体の経済担当職員は、「非常に細かく書き込まれている部分と、粗々で内容がほとんどない部分の差が激しい。この案の一つ前のバージョンは、もっとひどく項目にも一貫性がなかった」と指摘します。経済対策であるため、経済産業省が中心になってまとめたのであろうと思われますが、それにしても「緊急」の対策が、これなのかという疑問が出てきます。 

 別の地方自治体の幹部職員は、「具体的な数字がほとんど示されていないだけではなく、後半部分の自画自賛調の書き込み方に閉口する」と厳しい意見です。こうした意見は、他にも聞かれましたが、その理由は簡単で、実はこの「緊急経済対策案」のほぼ半分は、「収束後」のことが書かれているのです。 

 「観光・運輸業、飲食業、イベント・エンターテインメント 事業を対象に、Go Toキャンペーン(仮称)」や「国立公園等の 自然の魅力を活かした誘客・ワーケーションの推進」の推進など、現段階で取り組む優先順位としては違うのではないかということが詳細に書き込まれています。 


 さらに、「今回の事態の中で進んだ、あるい はニーズが顕在化したテレワークや遠隔教育、遠隔診療・服薬指導等 リモート化の取組を加速し、我が国のデジタル・トランスフォーメー ションを一気に進めるとともに、脱炭素社会への移行も推進する」といった将来の希望のようなものが長々と書かれていたりと、なぜか、緊急事態である「今」の対策ではなく、「収束後」の対策ばかりが具体的なのです。 
政府が自民党と公明党に示した緊急経済対策案(画像・筆者撮影)
・この期に及んで、収束後の利権争い?

 後半部分は、従来行われてきた支援メニューや補助金制度の拡充がずらりと並んでいます。政治家の利権の確保が優先されているようで、今、現場で求められている支援策から大きくかけ離れています。 

 このような事態になっても、収束後の利権の確保に躍起なり、それを官僚たちが支援している構図が透けて見えていると言えます。結果的に、どこが「緊急」なのかはっきりしない従来からの延長上の施策が羅列され、最後には唐突に「生産性向上や復旧・復興、防災・減災、インフラ老朽化対策などの 国土強靱化等に資する公共投資を機動的に推進する」と書かれています。 

 「現場が緊急に求めていることの記述が薄い」と商工団体の職員は批判します。「中小企業や個人事業主の相談窓口には、不安を隠せない経営者たちが詰めかけている。旅行のキャンペーンの名称を考えている暇があるのなら、本当に緊急に必要とされていることは何なのかを考えて欲しい」とも言います。 

・資金力が弱く、被害を大きく受ける中小・自営業者への支援を優先すべき
 関東地方の飲食店経営者は、「従業員の休業補償をする雇用調整助成金も対象はあくまでも雇用保険事業者のみ。もともと家族経営の青色申告では、専従者として働いていても経営者の家族には雇用保険に入る資格すらありません。そのほかの救済策も適用されるものは実は少なく、個人事業主や家族で営業を続ける業種や専従者は不要だと言われているようです」と言います。政府は、こうしたフリーランス、個人事業主には最大100万円の現金給付、中小企業には最大200万円の現金給付を行う「持続化給付金」制度を発足させると明らかにしていますが、具体的な中身は4月7日以降とされ、支給も早くて5月半ばとなっています。 

 「2月以降、売上げは急減している。周りでも、諦めて廃業を考える経営者も増えてきている。収束後の観光キャンペーンも必要でしょうけれど、それで得するのはどうせ大手の広告代理店だけでしょ。そもそも、収束する頃には個人商店など事業者が激減しているじゃないですかね」と東京都内の若手飲食店経営者は言います。「官僚の人たちが、いろいろ言い訳を言いますけれど、政府や官僚に対する信頼が揺らいでいます。どうも若い世代は政治にも無関心だし、どうせ判らないだろうと馬鹿にされているんじゃないかと思ってます」とも指摘します。 

 「ほかにも、ちゃんと対策をやっている」という反論もあるでしょうけれど、この政府の作成した「緊急経済対策案」を見る限り、経営者や自営業者たちの不安が高まるのも理解できます。 

 製造業に関しても、生産拠点の国内回帰に関してなど、全般的に甘い見通しです。生産コスト競争と現地市場への期待で海外に流失した民間企業の生産拠点が「国家」のために戻ってくるということは望み薄でしょう。仮にそうしたことを望むのであれば、IoT、省人化やロボット化を盛り込んだ付加価値を高めたり、労働力不足に対応する投資に対して、大きなインセンティブを与えることが必要でしょう。 

 中小企業に対しても、困窮した資金繰りで貸し付けた資金をただ単に返済を求めたり、給付金にするのではなく、先々にIoT、省人化やロボット化など競争力増強に振り向けた場合に返済を控除もしくは免除される制度を取るなど、一歩踏み込んだ工夫が必要でしょう。 


・対策案のトリアージを
 この「緊急経済対策案」を読んでみると、言葉だけは勢いが良いことに気づきます。 

 「一刻も早い再起動」、「一気に進める」、「守り抜き、危機をしのぎ切る」、「経済の力強い回復への基盤を築く思い切った支援策」、「経済のV字回復のための反転攻勢」、「一気呵成に安定的な成長軌道に」 

 こうした勢いだけの空疎な言葉遊びの連続に加えて、「生産性革命」、「Go Toキャンペーン」、「新型コロナリバイバル成長基盤強 化ファンド」など奇妙なネーミング。 

 要するに、冒頭でわざわざ書かれているように「財政健全化への道筋を確かなものとしなければならない」というのが大前提で、歳出抑制から、まだ脱却できない。一方で、新型コロナウイルス問題は、ある意味、一種の戦争状態にある訳で、国会財政からの思い切った支出は避けられない。このどっちつかずの状態で、腰がすわらないために、一見前向きな威勢の良い言葉を並べて誤魔化しているのではないでしょうか。 

 今後、中国が急激に経済も産業も復興してくる可能性が高い。被害が少ない東南アジア諸国も、復興のスピードが速いでしょう。新型コロナウイルスの収束後に、元の世界経済の形に戻ると考えている人は少ないでしょう。大きく変化し、競争が激化することが予想される中で、今や国家の危機に瀕していると言えます。 


 緊急時に、何を優先して行うのか。対策案のトリアージが必要なのです。そうした視点から見れば、この「緊急経済対策案」は、非常に不安な内容です。収束後のことなど、キャンペーンのネーミングなど、もう少し先でも良い「不要不急」のことよりも、今、目の前の問題に対して、どう対処するのか、具体策を示すこと、それが求められているのです。「頑張っているんだから、そんなに叩くな」という声が聞こえてきそうですが、「緊急」事態なのですから、それに合わせた対応をお願いしたいのです。今回のものは、あくまで「緊急経済対策案」ですから、案ではなくなるまでには、相当改善されるものと期待しておきます。 



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買い占め」に走る人々を突き動かす強烈な不安

2020年04月08日 18時15分03秒 | 日々の出来事
買い占め」に走る人々を突き動かす強烈な不安

首都圏を中心に食料品のパニック買いが始まった。買いだめや買い占めと表現されているが、「不安に誘発されたパニック買い」が正確な表現だろう。

【データビジュアル】新型コロナウイルス 国内の感染状況


 東京都が3月25日夜20時から開いた緊急記者会見が直接的な引き金となった。都内で新たに41人が新型コロナウイルスに感染したことを発表し、小池百合子知事が現在の状況を「感染爆発の重大局面」と述べた。そのうえで都民に外出の自粛を強く要請したことが、多数の人々をパニック買いに駆り立てる主な要因になったようである。 
 3月23日の記者会見で「事態の推移によってはロックダウン(都市封鎖)など強力な措置を取らざるをえない可能性」に言及していたため、「いよいよロックダウン間近か」「食べ物が買えなくなるかも」と早合点したことも少なからず影響を与えたようだ。

  Twitterなどのソーシャルメディアでは、都内のスーパーマーケットやドラッグストアなどで軒並み行列ができているとの情報が飛び交った。カップラーメンやレトルト食品、米、ミネラルウォーターなどが品切れ・品薄となり、帰宅途中で夕食の材料を買おうとした会社員などが悲鳴を上げる事態となった。
 
■世界中で起こった買いだめ現象の後追い

 筆者の地元のスーパーでも20時頃には普段の2倍以上の客足でごった返し、カゴに大量のカップラーメンなどを積み込んでいる様子が見られた。Twitterでは「買いだめ」がトレンド入りし、困惑の声が広がった。翌26日になっても地域によっては朝からスーパーなどに長蛇の列を作ったようだ。

 これは世界中で起こったパンデミックに伴う買いだめ現象の後追いである。

  ただ、日本の場合は、まだ海外に比べて規制などはかなり緩い状態にあり、今回の小池知事の会見でも、26・27日の自宅勤務と週末の外出自粛を呼びかけたものにすぎない。しかし、数日前からテレビのワイドショーなどが「首都封鎖」「都市封鎖」などというおどろおどろしい文言で恐怖を煽っていたことが心理的な要因になったことが容易に想像できる(緊急記者会見が決まった段階で、内容を先読みして動いた者もいただろう)。

欧米各国で実施されている「ロックダウン」とは、要するに「外出制限」や「外出禁止」のことを指しているが、生活上必要な行動については例外にしているところが多い。例えば、アメリカ・ニューヨーク州では、スーパーやドラッグストアなどは営業しており、「食べ物が入手できなくなる」というようなことはない。

  だが、あるテレビ番組では「皆さんが巣ごもるためにモノを買いに走り、小売店からモノがなくなる」といった識者のコメントを紹介した。マスメディアは本来このような無責任な予測を発信する立場ではないはずなのだが、このようなパニック買いを誘発する下地がマスメディアによって作り出されていたと考えられる。 
 すでに3月25日夜の時点で、Twitterには棚がガラガラになった店舗の写真や動画をアップする人々に、さまざまなテレビ番組のスタッフがDM(ダイレクトメッセージ)でやり取りしたいと声を掛けていた。ほどなく「都内スーパーで買いだめ行列」といった見出しで大きく報じられ、それが新たなパニック買いを引き起こしている状況にある。これはトイレットペーパーの騒動とまったく同じ、買いだめ報道→(を見た視聴者による)買いだめ増加→買いだめ報道という不毛のサイクルである。
 
■衝動的なパニック買いにはほとんど意味がない

 当たり前だが、まだロックダウンすら正式に予告されていないにもかかわらず、さらにはロックダウンになったとしてもスーパーやドラッグストアなどが閉まる可能性は相当低いにもかかわらず、このような衝動的ともいえるパニック買いを進んで行うことにはほとんど意味がない。むしろ、店舗のマネージャーやスタッフ、流通を支える運送業者などに不必要な負担を強いることになるだけでなく、身体などにハンディを抱えた高齢者や障害者などの「買い物弱者」に無用のストレスを与えることになるだけである。Twitterでは車椅子のユーザーが上の棚にしか商品が残っておらず、手が届かなかったために店員に手伝ってもらったと投稿していた。


以下はリンクで>

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Zoom」でのビデオ会議中にポルノ動画爆撃が!被害を防ぐ方法は?

2020年04月08日 18時09分03秒 | インターネットにまつわるはなし
Zoom」でのビデオ会議中にポルノ動画爆撃が!被害を防ぐ方法は?

 新型コロナウィルスの影響でリモートワークが拡大するとともに、ビデオ会議サービス「Zoom」のユーザーが急激に増えている。そんななか、2020年3月下旬にアメリカの高校でZoomを使ってオンライン授業を行っている時に、事件は発生した。  

身元不明のユーザーが会議に乱入し、冒涜的な言葉や教師の自宅住所などを叫んだというのだ。この荒し行為は「Zoombombing」(Zoom爆撃)と呼ばれ、次々と被害が拡大した。会議中に第三者が画面共有機能でポルノ動画を再生したり、大学のプレゼン中に注釈機能で人種差別用語を書いたり、ポルノ写真を表示したりしたのだ。 


FBIもZoom爆撃について警告している
 この爆撃は、Zoomの不具合と言うよりも、開催者の設定の甘さが原因。Zoomは参加者がアカウントを持っていなくても、URLをクリックしたり、ミーティングIDでログインできるのが特徴。この手軽さが急速に広まった理由でもあるのだが、そのぶん第三者が乱入しやすくなる。 


今からでもできるZoomの設定で見直すべきポイントは?
 まず、ミーティングに参加するためのURLをSNSなどのネットに公開しないこと。公開するにしても、参加して欲しい人たちとの限定共有にすべき。  試しに、筆者がZoomのミーティングIDを自分のTwitterアカウントでツイートすると、ものの1分で外国の見知らぬ人が乱入してきて、英語で何かずっと話し続けてきて気持ち悪かった。リアルタイムでZoomのミーティングIDが投稿されているのを検索しているのだろう。これを取引先とのビデオ会議でやられたら、たまったものではない。  

パスワードがかけられていないミーティングには誰でも入室できた。ミーティングIDはたった9桁の数字のため、総当たりツールを使えば1時間にいくつもの不正アクセスできるミーティングを発見できた。とはいえ、すでにZoom側も対処済みで、現在はパスワードをなしにすることはできなくなっている。 

筆者が試しにミーティングIDをツイートすると1分で乱入者が現れた
 もちろん、ミーティングIDとパスワードをセットで公開してしまえば、誰でもアクセスできるので、繰り返しになるが共有先には注意すること。

不正に潜り込まれ悪用されても被害を最小限に抑える方法
 次に、何らかのルートでアクセス用のURLやパスワードが漏洩した場合に備えて、「待機室」機能を利用する。パスワードがOKでも、いきなり会議に参加できず、まずは開催者の許可をもらわなければならないのだ。こちらも、現在のZoomではデフォルトで有効になっている。解除は可能なので、念のため設定を確認しておこう。
「待機室」機能を有効にする

ユーザーがアクセスすると待機室に表示され、開催者が右側の画面で許可を出すと参加できる
 万が一、不正に潜り込まれたとしても、悪用したい機能が無効化されていれば被害は抑えられる。「ホワイトボード」や「注釈」「画面共有」「遠隔操作」といった機能は無効にしておこう。「チャット」や「プライベートチャット」で悪さをするケースも報告されているので、利用しないならこちらも無効にしておく。
ポルノ動画を流される画面共有などを無効にしておく

プライベートチャットも不要なら無効にしておく
 これで、Zoom爆撃は防止できる。超簡単にユーザーが集って会議できるということは、そのぶん変な人が乱入するのも簡単だということ。セキュリティと使い勝手はバーターなので、ある程度はきちんと自分でコントロールできるようにしておくことをするオススメする。



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コロナ経済対策」を誤れば、日本の“後進国”化がほぼ確定する件について

2020年04月08日 17時30分38秒 | お金のこと
コロナ経済対策」を誤れば、日本の“後進国”化がほぼ確定する件について


この20年間、デフレからの脱却に失敗し続けてきた結果、1995年には世界全体のGDPの17.5%を占めた日本のGDPは、2015年には5.9%まで低下。このまま放置し、さらに「コロナ経済対策」を誤れば、日本の“後進国”化がほぼ確定すると中野剛志氏は危惧する。なぜ、こんなことになったのか? 中野氏に、日本の「政策ミス」を聞いた。(構成:ダイヤモンド社 田中泰)

【この記事の画像を見る】

 連載第1回 https://diamond.jp/articles/-/230685
連載第2回 https://diamond.jp/articles/-/230690
連載第3回 https://diamond.jp/articles/-/230693
連載第4回 https://diamond.jp/articles/-/230841
イマココ→連載第5回 https://diamond.jp/articles/-/230846

● 「リフレ政策」が失敗した“当たり前”の理由

 ――前回、主流派経済学が「信用創造」を正しく理解していないために、間違った主張をしているとおっしゃいましたね?

 中野剛志(以下、中野) ええ。主流派経済学の何が痛いかというと、「貸出が預金を生む」という事実を知らないことなんです。ついでに言っておくとですね、「デフレ脱却のため」という触れ込みで、主流派経済学者が主張して実行された、いわゆる「リフレ政策」がほとんど効果がないのも当たり前のことなんです。

 ――そうなんですか?

 中野 もちろんです。「リフレ政策」とは、日銀は「インフレ率を2%にする」という目標(インフレ・ターゲット)を掲げ、その目標を達成するべく、大規模な量的緩和(マネタリー・ベースの増加)を行うというものです。

 マネタリー・ベースとは、銀行が日銀に開設した「日銀当座預金」のことです。銀行が保有している国債や株式を日銀が“爆買い”して、その対価として「日銀当座預金」を爆発的に増やせば、銀行は積極的に企業などに貸し付けることで、市中の通貨供給量(現金と預金通貨)を増やすことができると考えたわけです。

 通過供給量を増やしてデフレを脱却しようということ自体は正しいんです。デフレとは、貨幣の価値が上昇していく状態です。つまり、市中に出回っている通貨が少ないから、その価値が高まっているとも言えるわけです。だから、たしかに、市中の通貨供給量が増えればデフレを脱却することができるはずなんです。

 だけど、銀行は「日銀当座預金」を原資として貸し出しをしているわけではありません。繰り返しますが、「信用創造」によって貨幣が市中に供給されるのは、借り手が銀行に融資を申し込んだときなんです。

 ところが、いまはデフレなので借り手がいないわけです。だから、いくら「日銀当座預金」を積み上げても、貨幣供給量は増えません。実際、量的緩和で400兆円くらい日銀当座預金を増やしたはずですけど、ただ“ブタ積み”されているだけで、インフレ率は2%には遠く及ばないですよね?

 ――つまり、「信用創造」を理解していないから、誤った政策を実施してしまったと?

 中野 そうですね。信用貨幣論と信用創造を理解している人は、量的緩和をやる前からこの結末はわかっていました。だけど、2001年から2006年まで量的緩和が実施され、さらに2012年に成立した第2次安倍政権のもとでさらに“異次元”の量的緩和が実行されてしまったわけです。

  ――なんだか、ガックリくるお話ですね……。

● デフレ下では「金融政策」に限界がある

 中野 まぁ、そうですね。

 一応、付け加えておくと、量的緩和によって「日銀当座預金」が増えれば、金利を下げる効果がありますから、企業などが借入れをしやすくなるという側面がないわけではありません。だけど、もともとデフレで資金需要がないために超低金利なのだから、量的緩和による金利低下の効力はたかが知れています。つまり、デフレ下では、金融政策には限界があるということです。

 ――なるほど。

 中野 逆に、民間に借入れの需要があるならば、金融政策は有効に機能します。例えば、借入れの需要が多すぎて、銀行が貸し出しをしすぎている場合、つまりインフレの場合には、中央銀行が日銀当座預金を操作して金利を上げることで、貸出しを抑制することができれば、インフレを抑制できるかもしれない。

 だけど、デフレのときのように、民間に借入れの需要がない場合には、準備預金を増やしたところで、銀行の貸出しは増えようがない。信用創造によって預金通貨が増えるから、それに応じて日銀当座預金(マネタリー・ベース)が増やされるのであって、マネタリー・ベースが増えるから預金通貨が増えるのではないのです。

 このように、中央銀行は、インフレ対策は得意ですが、デフレ対策は苦手なのです。ところが、主流派の経済学の教科書には、中央銀行がマネタリー・ベース(日銀当座預金)を操作することで、貨幣供給量を増やしたり減らしたりしていると書いてあります。恐ろしいことに、経済学の教科書は、事実と異なることを教えているのです。これは、現代の天文学の教科書が天動説を教えているようなものでしょう。

  ――そうなりますよね。もしも、間違った教科書にのっとった政策を行って、効果がなかったということならば、それはきわめて残念なことですね……。 
● 間違った「経済政策」で、日本が“後進国”になる

 中野 非常に深刻な問題だと思いますよ。そのような間違った政策をやり続けてきた結果がこれです(図1)。

 これは、日本のGDPと財政支出とマネタリー・ベースの推移を示したものですが、ご覧のとおり、マネタリー・ベースはガンガン増えていますが、GDPはピクリとも動いていません。これを見れば、マネタリー・ベースの量はGDPとは全然関係ないことが一目瞭然です。

 こんなことは、2001年から2006年ごろまで日銀が量的緩和をしたときに、理解しなければいけなかったことなのに、その後、第2次安倍政権下で量的緩和を再開するってどういうことなんでしょうね?


 一方で、グラフにあるとおり、財政支出とGDPはぴったりくっついて推移しています。だったら、財政支出を増やせば、GDPも増えるんじゃないかって、小学生だって思いつきますよね?

 民間の資金需要がないデフレ下においては、財政支出をする以外に貨幣供給量を増やす方法はないんです(連載第3回、第4回参照)。つまり、デフレ下においては、財政政策が金融政策になるということです。にもかかわらず、この20年間、政府は一生懸命、財政支出を抑制してきましたから、デフレが進んでGDPも伸びないわけです。

 ――マネタリー・ベースが積み上がっているのが、なんだか哀しく見えてきます……。

 中野 まったくですね。そして、こんなバカなことをしている国は日本だけなんです。図2をご覧ください。

 これは、OECD33ヵ国の1997~2015年の財政支出の伸び率とGDP成長率をプロットしたものです。ご覧のとおり、財政支出とGDPには、強い相関関係があることが見て取れます。

 しかも、日本だけがポツンと最下位に位置しているわけです。日本が負け続けている理由は明らかで、財政支出を抑制しているからなんです。アメリカや中国に負けている理由をほかにいろいろ探してもしょうがないんです。

 ちなみに、1995年には日本のGDPは世界全体のGDPの17.5%でしたが、2015年には5.9%まで減っています(図3)。このままいけば、日本は先進国から後進国へ転落するということです。新型コロナウイルスがもたらす巨大な経済的打撃への対応を誤れば、後進国化は確定すると言っても過言ではないでしょう。

 ――かなり、ショッキングなデータですね……。しかし、アベノミクスでは金融緩和が第一の矢で、第二の矢で機動的な財政政策をすると言っていたのでは?

 中野 そうなんですが、実際には、第2次安倍政権下の公共事業関係費は、「コンクリートから人へ」というスローガンを掲げて大幅に公共事業を削った民主党政権の時とたいして変わりません。当初予算で見ると、鳩山民主党政権下の公共事業関係費の当初予算(2010年)よりも、むしろ低いくらいです(図4)。1990年代から進められている緊縮財政になんら変化はないということになります。

 そして、図5のとおり、先進各国のなかで日本だけが公共事業を大きく削減しているわけです。日本だけがデフレなのに、こんなことをやっていたら、“後進国化”するのも当然ですよね。

  ――気が重くなってきました……。

● 消費増税の「デフレ効果」は、リーマン・ショックを超える

 中野 しかも、日本は、財政支出を抑制し続けたうえに、「財政赤字をこれ以上、増やすべきではない。政府の借金の返済の財源を確保するために、消費税の増税が不可欠だ」などという通説のもと、この約20年の間に1997年、2014年、2019年と3度も消費税を上げたんです。

 その結果がこれです。

 日本は、1990年代初頭にバブル崩壊があって、資産価値が半分になるという激しいショックが起きたので、当然、物価がドーンと下がって、そのままデフレに突入するというタイミングの1997年に消費増税を行いました。その結果、ご覧のとおり、98年から消費支出がドーンと下がって、見事にデフレに突入したわけです。

 その後、時間はかかりましたが、徐々に消費が復活していきましたが、ようやくデフレから抜け出せるかなというタイミングだった2014年に、再び消費増税をしたので、再び消費支出がドーンと落ちた、と。

 グラフをよく見てほしいんですが、1997年と2014年の消費増税による消費抑制効果というのは、「100年に一度の危機」と言われたリーマン・ショック、「1000年に一度の大震災」と言われた東日本大震災と同じくらいの効果をもっていることがわかります。

 しかも、リーマン・ショックや東日本大震災よりも、消費増税のときのほうが、消費支出の回復に時間がかかっていることが見て取れます。つまり、消費増税は、リーマン・ショックや東日本大震災よりも強大な消費抑制効果を誇ると言えるわけです。

 2019年の消費増税の影響は、データが出始めています。2019年10月~12月期で、実質GDPは年率換算で7.1%減と大幅に低下。まだその全貌は見えていませんが、結果は火を見るよりも明らかでしょう。

 ――デフレが悪化すると?

 中野 当然ですよ。日本全体の総需要に民間消費が占める割合は約6割に上り、民間消費こそが日本経済の最大のエンジンなわけです。消費税によって、そこにブレーキがかかるのですから、需要が抑制され、さらにデフレが促進するのは当然のことです。しかも、2020年に入ってから、新型コロナウイルスの問題が起きて、さらなる景気悪化が不可避の状況です。「令和恐慌」が起きても、何もおかしくない状況です。

 ――怖くなってきました……。

 (次回に続く)

 連載第1回 https://diamond.jp/articles/-/230685
連載第2回 https://diamond.jp/articles/-/230690
連載第3回 https://diamond.jp/articles/-/230693
連載第4回 https://diamond.jp/articles/-/230841
イマココ→連載第5回 https://diamond.jp/articles/-/230846


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