人がいない」今だからこそ仕事が増える…コロナ禍にビクともしない人たち
イベントがなくなったから仕事も中止で……。こんな状況だからさ、恨みっこなしで」 3月某日、春先に開催予定だったイベントの中止を、主催者から一方的に通告された筆者。イベントの取材をして、それを元に各媒体に記事を書きわける。例年はこの案件だけで約10万円の収入があった。
中止となったイベント取材はこれだけではない。多くの大規模イベントの予定が消し飛んだ。まさか自身が「新型コロナウイルス」の余波に巻き込まれるとは考えたこともなく、あまりのショックに呆然とするしかなかった。
中国を皮切りに、今や世界中が「コロナパニック」に陥っている真っ只中、筆者だけでなく、世界中がその影響を甘受せざるを得ない状況が続いており、我が国の政府は公共料金支払い期限に猶予を持たせたり、融資機会の拡充といった策を発表しているが、本音としては「現ナマをよこせ」というのが第一であり、その次に「減税せよ」というのが、庶民の切なる思いに違いない。
その一方で、騒動の渦中にありながら、まるでビクともしない人たちがいる。極端な大金持ちが、物見遊山で庶民の暮らしを眺めているのかと言えば、そうではない。むしろ、その逆である。
コロナの影響で仕事増「今までなかった残業代が出た」
私の仕事はいわゆる“ビルメン”、ビルのメンテナンスですが、仕事にあぶれることはありません。ビル内の業者が出社停止になり休業状態でも、ビルのメンテナンスは毎日欠かせない。ということは、私には仕事があり続ける。月収は手取りで20万円くらい。むしろ残業が増えている」
こう話すのは、都内のビルメンテナンス業者に務める澤田豊彦さん(仮名・40代)。地方の高校を卒業後に職を求めて上京するも、ギャンブルや夜遊びにハマり、多額の借金を抱えた。
高給業界には見向きもされず、人手不足のビルメン業界になんとか潜り込んで早15年。給料が安く夜勤もあってキツいと言われる仕事。だが、ここにきて「絶対になくてはならない仕事」であることが明らかになったのか、仕事がなくなることはないという。 「私が担当するビルに入居する一流企業は、多くがリモート勤務に移行して人が少ない。その分、普段はできない“メンテナンス”の機会だということで仕事は増えています。今までほとんどもらったことがない残業代が支払われて……。勝ち組ですね」(澤田さん)
絶対に社会に必要な仕事だ」と再認識
コロナの影響で今、仕事が増えているという例は他にも。千葉県内の土木関係会社経営・福田隆さん(仮名・50代)が話す。 「土木関係ですが、人がいないということで様々な事業主からひっきりなしに声ががかかる。休業中のテーマパークの補修など、普段は人が多すぎて簡単に補修ができないような場所での仕事が前年同月比で200パーセント、倍です。これを機会に信用を勝ち取り、取引先になればと人員を増やして頑張っています。コロナの影響……そうですね、災い転じて福となす、という言葉を噛み締めていますよ」(福田さん) 福田さんは自社の業務を振り返りつつ、「絶対に社会に欠かせない仕事だ」と再認識した。そして、自信を取り戻すまでになったと喜びを隠さない。
また、こちらはコロナにもビクともしないというか、そもそも意識的に「仕事をしていない」という自称“底辺”、都内在住で一流大学卒のフリーター・横井俊介さん(20代・仮名)の意見。 「資本主義経済って弱肉強食なわけです。誰かが富めば誰かは貧する、陣取りゲームですよね。我々で言えば、同級生の誰々は大手銀行に入った、弁護士になった、なのに私はフリーター。結局、勝ち負けしかない。ですがコロナは人類に平等に“ネガティブ”を与えてくれる。“みんなで没落するしかない”状況、私にとってこれ以上居心地の良い環境はありませんよ」(横井さん)
あまりに楽天的な態度に、話を聞きながら張り倒したい衝動に駆られてしまったが……。 たとえどんな状況であれ、私たちは今、まずは眼前の困難に向き合うしかないのだ。