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就活ウェブテストでは何みられてる? 

2020年04月09日 17時45分22秒 | 雇用と職のこと
就活ウェブテストでは何みられてる? 配属先に影響も


エントリーシートや面接の陰に隠れておろそかにしがちなのがウェブテスト(適性検査)対策だろう。就活生の性格や能力などを企業が診断するのが目的だが、奇問や難問に直面する先輩たちも多かったようだ。どのように対策したらよいのか。就活探偵団が探った。

1月末、東京・お茶の水にあるオフィスビルの一角を訪れると、リクルートスーツを着た就活生が一人、また一人と出てきた。「途中から問題が難しくなってきて焦った」。その中の一人、金沢大学大学院1年の塚田学さん(仮名)は表情を曇らせながらこう語った。

ここは「SPI」という適性検査を受けるテストセンター。会議室のような場所にパソコンが備え付けてある。塚田さんのパソコン画面に出てきたのは「AさんやBさんらはそれぞれ次のように証言している。3人の人間関係について、必ずしも誤りと言えないものはどれか」。考えている間も制限時間を示すマークは刻一刻と動き、マウスを持つ手が震えた。

計算問題や文章の並べ替え問題を順調にこなせただけに悔しさがにじむ。「先輩から教えてもらった参考書を一周しましたが……。もう少し対策すればよかったかな」

社会人1年目の藤原浩介さん(仮名)は一昨年、ある大手IT(情報技術)企業の選考で受けたウェブテストが忘れられない。「入社後に活躍している私」というお題に合わせて、三角や丸、星などの図形を画面上に配し、イラストを完成させるという内容だった。「何を評価しているのか分からなかった」と話す。

 ■コンプライアンス意識も測る
 
このようなテストを提供する企業のホームページを見ると「コンプライアンス傾向」や「ストレス耐性」などを見ていることが分かった。テストを扱う販売代理店関係者に聞くと「能力検査とは違い、受検者が企業に与えるリスクなどをみているようだ」といった説明があった。従業員が不適切な動画を投稿する「バイトテロ」などが話題になるが、就活生のコンプライアンス意識を測るこういったテストは一定の需要があるそうだ。


ウェブテストは主に3~4月のエントリーシートの提出と同じ時期に面接前の予備選抜として実施されることが多い。私用のパソコンで受けられるものと企業指定のテストセンターで受けるものがある。


就活サイトを運営するワンキャリア(東京・渋谷)によると、対策本が販売されている主要なウェブテストは9種類。なかでもシェアの高い代表的なテストがリクルートマネジメントソリューションズ(MS、東京・品川)の「SPI」、日本エス・エイチ・エル(SHL)の「玉手箱」と「WebGAB」、ヒューマネージ(東京・千代田)の「TG―WEB」の4つだ。


 一部で英語の問題があったり、難易度の差があったりはするが、設問はいずれも計算問題などで論理的思考力を測る能力検査と「外向的」「内向的」などの性格の傾向を測る性格検査の2種類からなる。学校で受けるような知識の確認や応用をみる学科試験とは異なり、受検者本人がこれまでの人生で積み重ねてきた論理的思考力や本来持つ性格の特徴をみているという。

導入は増加傾向 
ウェブテストを導入する企業は増加傾向だ。リクルートMSによるとSPIの利用社数は増えており、2019年3月期は約1万3200社と過去最高だった。

背景には採用活動の通年化がある。インターンシップ(就業体験)経由の早期選考もあるため「学生によってエントリーの時期がバラバラになり選考期間が長引いている」(大手メーカーの採用担当)。多忙な人事担当者を補佐する目的で、ウェブテストを利用するケースが多いようだ。

マイナビの調査によると、3月に最も頭を悩ましている就職活動では「筆記試験やSPI対策」と答えた人は全体の12%を占めた。採用活動の前倒し傾向も反映してか、SPIの対策講座を提供する日建学院(東京・豊島)によると「ここ1~2年は10月から年末にかけて申し込みが増えている」という。

ウェブテストでは通常、「何点取れば合格」というボーダーは開示されない。「ウェブテストに落ち続けて選考に進めない学生もいる」(就職情報大手ディスコの武井房子上席研究員)など対応に苦しむ学生もいるようだ。

では就活生は具体的にどのように臨めばよいのか。都内のある私大のキャリアセンター担当者に聞くと「学生には参考書を2回繰り返すことを薦めている」という。個人差はあるが、1日1時間問題を解いて、1カ月ほどかかるそうだ。

リクルートMSでSPIの開発を担当する園田友樹開発部長は「受検前に問題形式を把握しておくとよい」と助言する。パソコンの操作をはじめ、計算や文章読解といったパターンを知らないと、本来の能力を十分に発揮できないからだ。


 ■対策本を解いても点数アップしない?
 
とはいえ、園田氏は「対策本をくりかえし解いても点数アップにはつながらない」と指摘する。過去に事前学習を実施した人と実施しなかった人で得点を比較したところ、両者の間で大きな差異はみられなかったという。勉強して点数が上がってしまわないように「対策本で既出のものは本番の問題から削除している」(園田氏)という。

ウェブテストの結果は入社選考で使われるだけではない。ある大手商社は採用時に社員が受検した「SPI」のデータを人工知能(AI)に学習させて、今後活躍する人材の予測に役立てている。入社9年目から15年目までが分析の対象だ。高い業績を残す「活躍人材」をあぶりだし、採用や配属、人材育成にいかす試みを進めている。


日本SHLの清田茂取締役は「入社時のテスト結果を社員の配属に活用する動きがここ2~3年で増えた」と明かす。テスト結果が入社後もついて回るならば、テストで「よい人物」を演じるのではなく、正直に受けておく方が巡り巡って自分のためになりそうだ。

(企業報道部 平岡大輝、橋本剛志)
 [日経産業新聞 2020年2月5日付



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新型コロナ 欧州のピークは1~2か月先か>終息には数年必要か:WHO上級顧問渋谷氏

2020年04月09日 17時30分30秒 | 国際情勢のことなど
新型コロナ 欧州のピークは1~2か月先か

新型コロナウイルスの感染拡大が続くなか、WHO(=世界保健機関)のテドロス事務局長の上級顧問を務める渋谷健司氏がNNNの単独インタビューに応じ、イタリアやスペインなどヨーロッパ各国で感染拡大のピークが来るのは、今後1~2か月先になるとの見通しを示しました。



WHO事務局長上級顧問・渋谷健司氏「(ピークは)イギリスにおいては、やはり5月6月以降だと思いますけれども、欧州においては、これから1~2か月の間、社会的隔離がゆるくなると、また感染(拡大)が戻る可能性が大きい。一般的にこうしたパンデミックが終息するまでに、人口の60~80%が免疫を持つまでは続くといわれています。(終息までに)数年かかるんじゃないでしょうかね」

また、渋谷氏は、イギリス政府が過去に感染していたかどうかを判別するため、大規模な抗体検査を行うと表明していることについて、「感染率を正確に把握するために必要だ」と評価しました。

さらに日本の現状について、「感染爆発がいつ何時起きるかわからない」として、場合によっては、ヨーロッパですでに実施されているような外出規制も検討するべきだと警告しました。


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コロナの陰で、安倍官邸「やり放題の官僚人事」その厚遇ぶりに呆れる

2020年04月09日 17時15分09秒 | 政治のこと
コロナの陰で、安倍官邸「やり放題の官僚人事」その厚遇ぶりに呆れる

当の官僚も「おかしい」と警告
 
 「今に始まったことじゃないが、おかしな役人人事が次から次へと行われている。新型コロナウイルスの話題で国民の目がそらされているのをいいことに、安倍政権はやりたい放題だ。何とかしないと、中央省庁全体がおかしくなってしまう」

【写真】イギリスでコロナを「神経質すぎる」と笑い飛ばしてた人もいたが…

 さるキャリア官僚が危機感もあらわに、そう警告した。

 これまでも安倍政権では、安倍晋三首相の“お友だち”や覚えのめでたい役人たちが、報酬のいい国家の要職に抜擢されたり、栄転したりしてきている。それが新型コロナウイルスの騒動に紛れて、さらにひどくなったというのだ。同キャリアが続けた。

 「検事総長の人事に絡んで、政権に近い黒川(弘務)氏の定年を脱法的に延長したことが問題視されているが、政権の奔放さはそんなレベルじゃない」

 最近の主要な人事を調べてみたところ、以下のようなことがわかった。まずは報酬のいい要職への抜擢――論功行賞とみられる人事。

 政府は3月17日、古谷一之官房副長官補を公正取引員会委員長に据える人事案を提示した。

 古谷氏は財務省主税局長や国税庁長官を経て、2013年4月に官房副長官補に就任したのだが、2017年の総選挙の際に「教育無償化」や「子育て支援」、「大型の経済対策」などの知恵を授け、自民党圧勝に貢献したとされる。

 今回の人事によって、古谷氏の報酬はアップ。年間約2800万円になるという。実際の勤務日数で割ると、日額10万円を超える。

 「退任する杉本(和行)前委員長は、菅(義偉)官房長官らが肩入れする楽天などにも果敢に切り込んだが、今後はどうなることか。検事総長人事と同じようなにおいも感じられる」

  先のキャリアは、そう語った。
 警察庁でも、どさくさに紛れ…
 
 横畠裕介内閣法制局長官も、同日の人事案で国家公安委員への就任が示された。

 検察官から内閣法制局に転じた横畠氏は、安倍首相が最重要課題としてきた安全保障法制で、法制局がこれまで堅持してきた「集団的自衛権の行使は違憲」との見解を捨て去り、集団的自衛権の限定行使を容認。法の成立をバックアップした。

 その横畠氏が就く予定の国家公安委員は「警察の目付け役」とされるが、実務はほとんどない。にもかかわらず、年間報酬は約2400万円。委員の資格要件には「任命前5年間に警察・検察の職歴のない者」とあるが、横畠氏は2011年に内閣法制局次長に就任しているため、セーフだったという。

 まだある。

 いまや政権の御用聞きと化しつつある警察庁では、問題のある幹部の「在庫一掃セール」に近い人事が断行されたというが、そのどさくさに紛れてカジノ管理委員会の事務局長に「パワハラ四天王」と言われている者のひとりが抜擢されていた。

 徳永崇氏のことだ。同氏は、青森県警本部長、警察庁官房審議官などを経て2019年4月にカジノ管理委員会設立準備室審議官に就いた人物だが……。

 「パワハラが絶えないひとで、とくに青森県警時代のことは有名です。ただ、その一方で上には従順ですから、政権としては……ということでしょう」

 警察キャリアの動向に詳しい警察幹部は、そう語った。

 ちなみに政権人事ではないが、「パワハラ四天王」の残りも次々に栄転したという。

 「徳永氏と同期の世取山(茂)氏がこの4月に東北管区警察局長になる内示が出ましたが、かねてパワハラがひどかったうえに、2014年にはついに自殺者を出した大事件に関与し、預金保険機構という外部セクションに飛ばされていました。にもかかわらず、ここまで偉くなるとは、正直思っていませんでした」(警察幹部)

 2014年の大事件とは、東日本大震災の影響が色濃く残っていた福島県警で、捜査2課の警部と上司の警視が相次いで自殺した悲劇のことだ。

 背景には、警察庁から出向していた捜査2課長の激しいパワハラがあったとされる。当時、警察庁刑事局・捜査2課長の立場から県警2課長に発破をかけるなど指導していたのが、世取山氏だったのである。

  そのほかの2人も、昨年の時点ですでに栄転済みであった


カジノ関連でも「由々しき人事」
 
 さらには、こちらも過去の人事だが、カジノに関連して由々しき人事が行われていたこともわかった。カジノ汚職事件への関与が取り沙汰されながらも、不問に付された財務官僚だ。

 名前が浮上していたのは、財務省から内閣府大臣官房に転じ、カジノ管理委員会設立準備室室長を経て、2019年4月に特定複合観光施設区域整備推進本部事務局事務局長に就任した中川真氏である。

 中川氏と言えば、元財務次官の娘をめとりながらも2007年に不倫騒動を起こして干されたが、第2次安倍政権で復活し、菅官房長官に重用されたことで知られる。ところが……。

 「中川氏は、『(カジノ汚職事件で贈賄側として登場した中国系企業)500ドットコム』が2017年に主催したシンポジウムに参加し、菅長官の言葉を引用しつつ、ギャンブル依存症対策における政府の取り組みなどについて語るなど、同社と関係があった。にもかかわらず、その後、事務局長に昇格している。なぜ、こうした人事が行われたのか大いに疑問だ」

 カジノ汚職事件の捜査にかかわった検察関係者は、そんな証言を寄せた。

 こうしたことが影響したのか、中川氏は2020年3月、スロバキア大使に転出した。これについて、前出のキャリアが語る。

 「論功行賞を兼ねたところ払いだろう。政府からは遠ざけられるものの、大使は何といっても厚遇。報酬も高いのだから」

 現在、大使の平均年収は月額110万円。ボーナスを加味すると、年収1800万円程度。これでも高給だが、ここに「在勤基本手当」と呼ばれるものが加算される。派遣先の国によって額は異なるが、スロバキアはギリシア並みの月額60万円。さらに、配偶者手当も支給される。大使の「在勤基本手当」の20%であるため、こちらは月額12万円。これらを合わせると、2600万円を超える。

 仮に小中学生の子供がいた場合には、一人当たり月額15万円弱の手当ても出る。パート労働者の月給並みの金額だ。

  以上のような経緯を見ると、目を光らせるべきは、検事総長人事ばかりではないことがわかる。

厳しく監視するべき
 
 ところで、ここで取り上げたのは、「特別職」と呼ばれる国家公務員に抜擢された人事だ(警察庁のものは除く)。この来歴等について調べてみると、官邸のHPに以下のような記載があった(注記は省略)。

 《国家公務員法の制定により国家公務員が一般職と特別職に区分されたことに伴い、「特別職の職員の俸給等に関する法律」が制定され、特別職の給与体系が創設された。

 創設当初の給与体系は、連合国の管理下にあって、行政の民主化が強調される中、政府から独立した機関、あるいは行政委員会の委員等に、給与体系上高い格付けがなされていた。中でも、検査官、人事官及び国家公安委員会の委員については、それぞれの設置法において、国務大臣と同額の給与を受けるべきことが定められていた》

 《特別職は、様々な理由により、任用における成績主義の原則、身分保障等の一般職に適用される国家公務員法の原則が適用されない諸々の官職であり、任用、服務等に関する制度についても官職ごとに様々である。(中略)様々な官職が含まれる特別職の幹部公務員を、あえて類型化すると、次の二つに区分することができる。

 ア 職務の性質から一般職の任用手続を経ないことを適当とする官職(内閣官房の特別職、大公使等)

 イ 職務遂行の独立性及び任用手続の透明性を確保する等の観点から任用に当って国会同意を必要とする官職(検査官、人事官、委員会委員等)

 ただし、こうした類型化は、それぞれの職務の性質に由来するものであり、職務の重要性や責任の重さに由来するものでは必ずしもないことから、上記のような特別職の類型化と、職責に応じて定められる給与の在り方との間に、直接的な関連性を見出すことは難しい》

 つまりは、戦後に国家公務員という制度が整えられて以来、「特別職」は独立性が重んじられてきたということだ。高額の報酬が支払われる根拠も、そこにあった。

  ところが、いまや論功行賞と言われても仕方ない、官邸の恣意的な任用が目立つ。制度の原点に立ち返って、厳に監視の目を光らせるべきである。
     
時任 兼作(ジャーナリスト)


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新型コロナ巡る2つの陰謀説を徹底検証する

2020年04月09日 17時01分48秒 | 医学と生物学の研究のこと
新型コロナ巡る2つの陰謀説を徹底検証する


新型コロナウイルスが世界中で猛威を振るっている。3月24日までに米国やイタリアなど少なくとも20の国・地域の政府が非常事態や緊急事態を宣言している。

 各国当局の発表に基づきAFP通信がまとめた統計によると、日本時間24日午前4時現在での世界の新型コロナウイルス感染者数は174の国・地域で36万1510人に達し、うち1万6146人が亡くなっている。

 感染症が流行すると、必ず流れるのが陰謀説である。

 陰謀説とは、社会の構造上の問題を、背後にひそむ個人ないしは集団の陰謀のせいにすることである(ブリタニカ百科事典)。陰謀説が真実であることは稀である。

 SARSの時は、中国の急成長やアジアの人口増加を恐れた米国が起こしたバイオテロ*1
だとする陰謀説や新型インフルエンザのワクチンであるタミフルの売り上げを伸ばすため、米政府と製薬会社が共謀して感染症を広めたとする陰謀説が流布された。 また、エボラ出血熱を発症させるエボラウイルスは、CIA(米中央情報局)が開発した生物兵器*
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ではないかとする陰謀説が流布された。 さて、今回の新型コロナを巡っては、これまでのところ2つの陰謀説が流布されている。

 一つは、新型コロナウイルスは、中国の生物兵器である、とするものである。

 もう一つは、新型コロナウイルスは、米軍が武漢に持ち込んだものである、とするものである。

 以下、2つの陰謀説の真偽について考察する。

 *1=バイオテロは、細菌やウイルス、毒素などの生物剤を意図的又は脅迫的に投射・散布することによって、政治的・経済的・宗教的なパニックを引き起こすことである。(バイオテロ対応ホームページ厚生労働省研究班)

  *2=生物剤が、国あるいは軍のレベルで開発され用いられた場合、一般的に、これを“生物兵器”という。小さなテロは病原体さえあれば可能である。 
■ 1.2つの陰謀説には共通した背景

 この2つの陰謀説には共通した2つの背景が存在する。

 一つは、中国政府は、新型コロナウイルスの発生源はいまだ確定していないとしていることである。

 中国国営新華社通信(3月15日)によると、習近平国家主席は新型コロナウイルスについて「病原がどこから来て、どこに向かったのか明らかにしなければいけない」と訴える論文を3月16日発行の共産党理論誌「求是」に寄稿している。

 確かに、厳密にいえば新型コロナウイルスの発生源は科学的にいまだ特定されていない。これからの研究を俟たなければならない。

 もう一つは、現在、覇権国・米国と新興国・中国の間で覇権争いが生起しているということである。

 米中貿易摩擦も5Gを巡る覇権争いもこのような文脈でとらえるべきである。すなわち、米中間では武力によらない“戦争”が進行しているのである。

 従って、米中両国には、相手国の国家機能を阻害し、国力の減退を計り、国際的地位の低下を求めようとする意思があり、かつその機会をうかがっていると考えても不思議でない。

 そして、今回の新型コロナウイルスの感染拡大の責任をお互いに相手国に負わせてダメージを与えようとする策謀を巡らしていることも推測されなくはない。

  上記2つの背景から、新型コロナウイルスを巡る陰謀説が流布されやすい情勢にあると言える。


■ 2.「中国の生物兵器」の真偽

 本項では、新型コロナウイルスは、中国のウイルス研究所から漏洩した生物兵器であるという陰謀説の真偽について考察する。

 今回の生物兵器説を最初に報道したのは米保守系マイナー新聞のワシントン・タイムズ紙であると報じられている。

 1月24日付ワシントン・タイムズ紙は、元イスラエル軍の情報将校であるダニー・ショハムデル(Dany Shohamdell)氏の発言を引用しながら、次のように報じている。報道記事の原文と仮訳は次のとおりある。

 「原文:Asked if the new coronavirus may have leaked, Mr. Shohamdell said: “In principle, outward virus infiltration might take place either as leakage or as an indoor unnoticed infection of a person that normally went out of the concerned facility. This could have been the case with the Wuhan Institute of Virology, but so far there isn’t evidence or indication for such incident.”」

 「仮訳:ダニー・ショハムデル氏は、新型コロナウイルスが(研究所から)漏洩したかとの質問に対して、“原理上、外部への浸潤は、漏洩または知らないうちに感染した部内者が施設の外に出ることによって起こるかもしれない。このようなことが武漢ウイルス研究所で起こったかもしれない。しかし、これまで、そのようなインシデントの証拠あるいは兆候は存在しない”と述べている」(筆者作成)

 ところで、この陰謀説が広まったのには、いくつかの状況証拠がある。

 1つ目の状況証拠は、感染拡大の中心地である武漢市には世界有数のウイルス研究所「中国科学院武漢病毒研究所」があることである。

 同研究所は、新型コロナウイルスの発生源とされる武漢の生鮮市場から約30キロの位置にある。これが噂に真実味を持たせたのである。

 さらに、中国政府は、積極的な情報開示を行なわず、それどころか、新型コロナウイルスの発生源は中国とは限らないと、否定していることが噂に拍車をかけた。

 2つ目の状況証拠は、上記ウイルス研究所に付属する「中国科学院武漢国家生物安全実験室」は、世界で最も危険な病原体を研究するウイルス実験室として広く知られている。

 同実験室はP4ラボとも呼ばれる。P4ラボとは国際基準で危険度が最も高い病原体を扱えるバイオセーフティーレベル(BSL)の最高防護レベルを表し、高度に危険な研究やいまなおワクチンや治療方法が知られていない病原体を専門的に扱う研究施設を意味する。

 3つ目の状況証拠は、中国は生物兵器を開発・保有する能力と意図を持っていると考えられていることである。

 ワシントンのシンクタンク軍備管理協会によると、「中国政府は、自国で生物(細菌)兵器を製造したり備蓄したりすることはないと述べているが、米国によると、中国の生物兵器活動は広範であり、既存のインフラにより、病原体を開発、生産および兵器化することが可能である(https://www.armscontrol.org/factsheets/cbwprolif)」とされている。

 上記の3つの状況証拠から、中国科学院武漢病毒研究所において新型コロナウイルスの研究が実施されていることと生物兵器を製造・保有している可能性は否定できない。

 さらに、ウイルス(生物兵器)が同研究所から漏洩し感染を拡大した、あるいは部内者が感染に気がつかないまま、武漢の市中を出歩いて感染を拡大させた可能性も否定できない。

 だが、ウイルスが研究所の外に漏洩したまたは感染した部内者が出歩いたという証拠(証言など)はどこにもない。

  将来そのような証言が出てくるかもしれない。従って、筆者は、この陰謀説は、現時点では、事実に基づかない憶測である可能性が高いと推測する。

■ 3.「米軍が持ち込んだ説」の真偽

 本項では、新型コロナウイルスは、米軍が武漢に持ち込んだという陰謀説の真偽について考察する。

 この陰謀説の発端は、中国外務省のZhao Lijian(趙立堅)報道官が、3月12日に、ツイッター上で、何の証拠も示さず、「米軍がコロナウイルスを武漢に持ち込んだかもしれない」と発言したことに始まる。

 ツイッター上の趙報道官の発言の原文と仮訳は次のとおりである。

 「原文: CDC Director Robert Redfield admitted some Americans who seemingly died from influenza were tested positive for novel coronavirus in the posthumous diagnosis, during the House Oversight Committee Wednesday. CDC was caught on the spot. When did patient zero begin in US?  How many people are infected?  What are the names of the hospitals?  It might be US army who brought the epidemic to Wuhan. Be transparent!  Make public your data!  US owe us an explanation!」

 「仮訳:米疾病対策センター(CDC)のレッドフィールド所長は、米下院の聴聞会において、米国内でインフルエンザが死因とされた死者の一部で、死後の検査で新型コロナウイルスへの感染が確認されたことを認めた。これによりCDCは困った立場に陥った。米国で患者第1号が発生したのは何時なのか。何人が感染したのか。病院の名前は何か。武漢に感染病を持ち込んだのは米陸軍かもしれない。透明性が確保されなければならない。米国はデータを公表しなければならない。米国は、我々に説明をしなければならない」(筆者作成)

 さて、趙報道官は、米疾病対策センター(CDC)のレッドフィールド所長の発言を受けて、米軍が新型コロナウイルスを武漢に持ち込んだという陰謀説を主張しているが、その根拠は示されていない。

 なぜ、趙報道官はこのような発言をしたのかを探るために、関連する報道を時系列順に列挙する。

 (1)CDCが記者会見(2月14日)で、「新型コロナの検査対象を大幅に見直す」という発表をした。

 すなわち、「インフルエンザに似た症状が確認された患者に対し、新型コロナウイルス検査を開始する」。

 その結果次第では「米国では今冬インフルエンザが大流行」と報道されていた感染症の実態は、「実は新型コロナが以前から流行していた」と覆るかもしれない。(PRESIDENT Online 2020年2月17日)

  (2)日本のテレビ朝日が2月21日に伝えたところによると、CDCが過去数か月間にインフルエンザで死亡した米国の患者1万人あまりのうち、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による肺炎患者が含まれていた可能性があると考えており、すでにニューヨークやロサンゼルスなどの大都市で大幅な検査体制の見直しが始まったという。
その後、このニュースは中国のSNSでたちまち拡散され、21日夜に新浪微博(ウェイボー)が初めて掲載してから現在までの間に、閲覧数は22万回を突破し、コメント1万4000件が寄せられた。

 そして中国の多くのネットユーザーは、「COVID-19は米国から来た可能性がある。どうりであれほど多くの米国人が『インフルエンザの症状』で亡くなったわけだ」と考えている。(人民網日本語版 2020年02月22日)

 上記の関連情報と趙報道官のツイッター上の発言により、中国の多くの国民は、新型コロナウイルスは米国から来た可能性を信じるようになったと筆者は考える。

 その他、新型コロナウイルスは、米軍が武漢に持ち込んだという陰謀説の根拠となる出来事や感情としては次のようなものが考えられる。

 1つ目の根拠は、2019年10月18日から27日に武漢で開催された世界軍人運動会に109カ国の軍人9308人が参加したことである。

 この中に数百人の米軍人が参加している。趙報道官の「米軍がウイルスを武漢に持ち込んだ」という米軍は、世界軍人運動会に参加した米軍人を指しているのであろう。

 さもなければ、米国が中国に対してバイオテロを仕かけたことになる。

 ところで、香港紙の報道によると、中国で新型コロナウイルスの最初の感染は11月17日であるとされる。

 この2つの事象には時間差があり、米軍人から感染したとは考えにくい。

  また、武漢で開催された世界軍人運動会に参加した米軍人から感染が広がったのであるならば、中国で感染が発生した時期に世界軍人運動会に参加した諸外国でも感染が発生していなければならない。 
 2つ目の根拠は、米国が中国に対してバイオテロを仕かけるかもしれないという中国が抱いている恐怖心である。

 しかし、筆者は、次のような理由から米軍が中国に対してバイオテロを仕かける可能性は全くないと考える。

 (1)米国・中国とも「生物兵器禁止条約」の締約国である。現在、米中は貿易摩擦などを巡り対立関係にあるが、米中武力衝突の蓋然性は大きくない。

 この時期、米国が国際法に違反してまで、バイオテロを起こすことは筆者の常識からは考えられない。

 (2)生物兵器は、特定の作戦地域の制圧を目的に使用されるものであり、一般にヒトからヒトへの感染のない病原体が適しているとされる。

 生物兵器としての可能性が高いといわれる炭疽症、天然痘、ペスト(腺ペスト)およびボツリヌス症などの4つの病原体は、人から人に感染しないため、2次感染の危険がない。

 これに対して、新型コロナウイルスは、「人から人への感染」が確認されており生物兵器に不適である。

 (3)生物兵器の使用は、自国民を守るためのワクチンまたは抗血清の保有が前提である。

 今回の新型コロナウイルスに多数の米国人が感染している状況から米国による生物テロは考えにくい。

 さて、習近平国家主席の「病原がどこから来て、どこに向かったのか明らかにしなければいけない」という発言と、「米軍が、新型コロナウイルスを、武漢に持ち込んだ」という趙報道官の発言は、愛国心の強い中国国民への訴求力があり、多くの中国国民はこの陰謀説を真実と思うかもしれない。

 一方、米軍が中国に対して生物テロを仕かけるわけはないという筆者の常識にてらして判断すれば、この陰謀説が虚偽であることは歴然としている。

 米国は、米国で新型コロナウイルスの感染者第1号が発生した時期を公表すれば、「新型コロナウイルスは、米軍が武漢に持ち込んだ」という陰謀説を一蹴することができる。

 にもかかわらず、米国が趙報道官の発言に反論しないのは、趙報道官の発言は反論に値しないと考え、無視しているのではないかと筆者は推測している。

 また、趙報道官の「米軍がコロナウイルスを武漢に持ち込んだかもしれない」という主張は、陰謀説というより、米国のマイク・ポンペオ国務長官の「武漢ウイルス」発言に対する感情的な反論に過ぎない。

  そして、現在、米中間で感情的な非難合戦が繰り広げられている。

■ 4.終わりに

 今般、中国から発生した新型コロナウイルスの感染が世界的に拡大する中、新型コロナウイルスは、中国の“生物兵器”であるとする陰謀説が流布された。

 今日、わが国では、北朝鮮の核兵器の脅威の増大により、生物兵器の脅威があまり語られなくなった。

 しかし、新型コロナウイルスの感染拡大が世界各国の国民生活や社会経済活動に与えた影響の大きさを考慮すれば、感染力と殺傷力が強く、かつワクチンのない生物兵器の脅威は、核兵器以上と言えるかもしれない。

 以下、生物兵器の脅威について簡単に述べる。

 1975年に発効した生物兵器禁止条約は、生物兵器の開発、生産、貯蔵などを禁止するとともに、既に保有されている生物兵器を廃棄することを目的とするものである。

 しかし、同条約には検証機構についての規定がないため、多くの締約国が、同条約に違反して、製造が容易で安価である「貧者の核兵器」と呼ばれる生物兵器を保有していると疑われている。

 また、テロリストなどの非国家主体が、生物兵器または生物剤を取得・使用することが新たな脅威として懸念されている。

 特に、日本の安全保障にとって大きな脅威である北朝鮮は大量の生物兵器を保有しているとされる。

 防衛省の資料によると、一定の生産基盤を保有し、弾道ミサイルに生物兵器を搭載し得る可能性も否定できないとある(『我が国を取り巻く安全保障環境』2018年9月)。

 また、若干古くなるが、2009年10月付のAFP通信は、「韓国国防省は、議会に提出した報告書の中で、北朝鮮が生物兵器に使われる13種類のウイルス・細菌(筆者注:、炭疸菌、ボツリヌス菌、コレラ菌、出血熱、ペスト菌、天然痘、チフス菌、黄熱病ウイルスなど)を保有している可能性があることを明らかにした。

 また、同報告書は北朝鮮を、世界最大の生物兵器保有国の一つだとしている、と報道している。

 わが国は、テロ国家・北朝鮮の大量の生物兵器に備えなければならない。

 従って、今般の新型コロナウイルス感染症対策の教訓を踏まえ、北朝鮮の生物兵器による攻撃事態にも適切に対応できるよう、必要な態勢の整備を促進する必要がある。

  また、東京五輪を控え、テロリストなどの非国家主体からのバイオテロの脅威への対応も急務である。




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新型コロナ>直売所、農家が存在感 

2020年04月09日 15時36分27秒 | いろいろな出来事
新型コロナ] 直売所、農家が存在感 消費者の食支える

新型コロナウイルスの感染拡大で7都府県に緊急事態宣言が発令される中、食料供給を担う農家や農産物直売所の存在感が各地域で増している。農業資材が手に入りにくいなど一部で支障が出ているものの、農家は田畑に向かい営農を続け、直売所は食卓を支える。消費者からは「直売所は地域のインフラだと改めて実感する」「医療関係者と同様、農家の存在がありがたい」などと感謝の声が相次ぐ。     
生育を確認する農家の鎌田さん(右)と稲葉店長。端境期で野菜の出荷が少ないのが残念だという(同)        
 


変わらず開店 「安心」 東京・JA町田市
 
 東京都のJA町田市の直売所「アグリハウス忠生」。緊急事態宣言の発令から一夜明けた8日も、感染防止対策を徹底しながら開店した。農家は前日と変わらずに出荷をし、従業員はマスク着用して接客に励む。新型コロナウイルスの感染が急速に広がった3月末以降、野菜の多くは午前中で完売。店内で精米できる米の売れ行きは、平年比3~5倍の盛況ぶりだ。ただ、米を中心に在庫は十分にあり、同店は800種に及ぶ豊富な品ぞろえをなるべく切らさないよう体制を整える。稲葉信二店長は「地元農家が出荷し、近所の消費者が買い求める地域密着の直売所。遠くに出掛けるのが怖いという人も多い。直売所が平素と変わらず地域で開店していることが今、地域の人の安心感につながっている」と強調する。

 常連客の浅沼千鶴子さん(74)は「食べ物はあって当たり前のものではないんだと、改めて実感した。緊急事態宣言が出ても、野菜を変わらず作ってくれる農家と直売所に、心から感謝しているの」と、野菜を買い物かごに入れながら語った。親戚に呼吸器系の医師がいるという浅沼さん。買いだめはせず、外出は自粛しながらも、不安な日々を過ごす。「国難の時に、医者と農家は地域や市民のインフラで、大切な存在だと痛感した」と感謝の言葉を口にする。

 同市で1ヘクタールで野菜を栽培する鎌田勝さん(52)は、予定していた苗を販売するイベントが取りやめになり、育てていた苗の出荷の大半が見通せなくなるなど心労も多い。それでも「農畜産物はすぐに増産できない。緊急事態宣言が出ても農家がやるべきことは変わらない」と、管理作業の手を動かし続ける。新型コロナウイルスは、食料安全保障や食料自給率などの問題を表面化させたともいえる。鎌田さんは「もっと前から真剣に農業問題を考えておくべきだった」と訴える。

  野菜を栽培する田中貴子さん(42)も「農作業は、屋外での作業が多く、感染の恐れが少ない。それに農家は今、重要な役割を担っている」と、安定的な食料供給への思いで口元を引き締める。自宅などで過ごさなければならない子どもたちの心身の健康が気掛かりという。「外出自粛を呼び掛けられるのも、農家が変わらず作った野菜や米を自宅で食べることができるという前提があるからだと思う。こうした生活が長期化する中でも、野菜を作り続け、子どもたちの健康に寄与したい」と考える。

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