一律10万円、与党圧力に安倍首相転換 所得制限不評、危機感広がる 追加経済対策安倍晋三首相が新型コロナウイルス関連の追加経済対策として、一律10万円の現金給付の検討に前向きな考えを表明した。
【図解】内閣支持率の推移
収入が減少した世帯に30万円を支給するとした緊急経済対策が不評を買い、内閣支持率も下落。危機感を持った自民、公明両党が圧力を強め、慎重な姿勢だった首相が押し込まれる格好となった。
「国民の苦しみや影響を敏感に受け止めなければならない」。公明党の山口那津男代表は15日、首相に一律給付を要請した後、語気を強めて記者団にこう訴えた。
2020年度補正予算案には30万円の現金給付が盛り込まれたが、住民税非課税や収入半減といった条件が付き、「複雑で分かりにくい」「受け取れない人が多い」との批判が与野党に渦巻いた。
公明党関係者は「ごみみたいな経済対策」と酷評。支持母体の創価学会は「閣外協力も視野に入れる」と激怒し、政府への要求を強めるよう公明幹部に迫った。自民党の二階俊博幹事長が14日に「一律給付」を急きょ打ち上げたため、慌てた山口氏が首相に直談判を申し入れた。
自公の党首会談を受けた両党の幹事長、政調会長協議で、公明側は補正予算案に関して「減収世帯30万円」を「一律10万円」に変更するよう主張した。閣議決定済みの予算案の修正を与党が求めるのは極めて異例だ。
首相はこれまで一律給付に否定的な見解を示していた。リーマン・ショック後の09年に1万2000円(若年者と高齢者は2万円)ずつ配った定額給付金は効果が薄かったと評価されたためだ。当時首相だった麻生太郎副総理兼財務相も「二度と同じ失敗はしたくない」と話していた。
しかし、全世帯への布マスク2枚配布など政権が打ち出すコロナ対策の評判は芳しくない。最近は内閣不支持率が支持率を上回る世論調査結果が相次いだこともあり、転換を余儀なくされた。財政出動に後ろ向きな財務省幹部も「やっぱりという感じ。これで終わるはずがないと思っていた」とあきらめ顔。第2次補正予算案の編成に向け議論が進む方向だ。
来週から始まる補正予算案の国会審議を前に与党から新たな経済対策を求める声が公然と上がったため、野党は政府を一斉に批判した。
立憲民主党の福山哲郎幹事長は記者団に「10万円給付は野党がずっと主張してきたことだ」と指摘。15日の立憲役員会では補正予算案の組み替えを求める意見が出た。同党の中堅議員は政府・与党の対応のちぐはぐさを挙げ、「政権末期だ」との見方を示した。首相官邸と気脈を通じる日本維新の会の馬場伸幸幹事長も、記者会見で「遅きに失した」と語った。
【図解】内閣支持率の推移
収入が減少した世帯に30万円を支給するとした緊急経済対策が不評を買い、内閣支持率も下落。危機感を持った自民、公明両党が圧力を強め、慎重な姿勢だった首相が押し込まれる格好となった。
「国民の苦しみや影響を敏感に受け止めなければならない」。公明党の山口那津男代表は15日、首相に一律給付を要請した後、語気を強めて記者団にこう訴えた。
2020年度補正予算案には30万円の現金給付が盛り込まれたが、住民税非課税や収入半減といった条件が付き、「複雑で分かりにくい」「受け取れない人が多い」との批判が与野党に渦巻いた。
公明党関係者は「ごみみたいな経済対策」と酷評。支持母体の創価学会は「閣外協力も視野に入れる」と激怒し、政府への要求を強めるよう公明幹部に迫った。自民党の二階俊博幹事長が14日に「一律給付」を急きょ打ち上げたため、慌てた山口氏が首相に直談判を申し入れた。
自公の党首会談を受けた両党の幹事長、政調会長協議で、公明側は補正予算案に関して「減収世帯30万円」を「一律10万円」に変更するよう主張した。閣議決定済みの予算案の修正を与党が求めるのは極めて異例だ。
首相はこれまで一律給付に否定的な見解を示していた。リーマン・ショック後の09年に1万2000円(若年者と高齢者は2万円)ずつ配った定額給付金は効果が薄かったと評価されたためだ。当時首相だった麻生太郎副総理兼財務相も「二度と同じ失敗はしたくない」と話していた。
しかし、全世帯への布マスク2枚配布など政権が打ち出すコロナ対策の評判は芳しくない。最近は内閣不支持率が支持率を上回る世論調査結果が相次いだこともあり、転換を余儀なくされた。財政出動に後ろ向きな財務省幹部も「やっぱりという感じ。これで終わるはずがないと思っていた」とあきらめ顔。第2次補正予算案の編成に向け議論が進む方向だ。
来週から始まる補正予算案の国会審議を前に与党から新たな経済対策を求める声が公然と上がったため、野党は政府を一斉に批判した。
立憲民主党の福山哲郎幹事長は記者団に「10万円給付は野党がずっと主張してきたことだ」と指摘。15日の立憲役員会では補正予算案の組み替えを求める意見が出た。同党の中堅議員は政府・与党の対応のちぐはぐさを挙げ、「政権末期だ」との見方を示した。首相官邸と気脈を通じる日本維新の会の馬場伸幸幹事長も、記者会見で「遅きに失した」と語った。