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検察庁法改正案、見送り浮上の報道。識者から「批判のトーンダウン狙い」の指摘も

2020年05月18日 13時15分16秒 | 政治のこと
検察庁法改正案、見送り浮上の報道。識者から「批判のトーンダウン狙い」の指摘も

検察官の定年延長を可能にする検察庁法改正案を巡り、政府与党内で今国会での成立を見送る案が浮上していると、複数の報道機関が伝えている。

共同通信などによると、世論や野党からの批判が強まる中で採決を強行すれば、政権へのダメージが大きいとの懸念があるため。与党内には、幹部ポストの定年延長に関する特例規定などを削除する案も出ているという。安倍首相は与党幹部らと協議し、近く最終判断するとみられる。 「隙を突いて強行採決」 識者から慎重な意見も
 
改正案には、内閣や法相が必要と判断した場合、検察幹部の定年を最長で3年延長できる特例規定も盛り込まれている。改正案は、国家公務員法改正案などと一本化した「束ね法案」として国会に提出されていた。

5月15日の衆院内閣委員会では、延長基準などを巡り議論が紛糾。野党の反発で採決が見送られた。その後、Twitterでは「#週明けの強行採決に反対します」のハッシュタグが拡散。18日には「#与野党こえて検察庁法改正を止めよう」がトレンド入りするなど、ネットでも改正案に反対の動きが拡大している。

ただ、識者からは慎重な意見もある。

 元検察官の郷原信郎弁護士は18日、「見送り案浮上」を報じた読売新聞の同日の記事に触れて、自身の Twitterで「『与党も、国民の批判を受けて、さすがに検察庁法改正を諦めたか』と思わせることで、批判のトーンダウンを狙ったものだと思います。批判が沈静化し、(新型コロナウイルスの)感染者減少で世の中の関心が『緊急事態宣言解除』に向かったところで、その隙をついて強行採決しようと狙っているのだろうと思います」と投稿した。
     
ハフポスト日本版編集部

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検察庁法改正」で、検察は、政権の意向を過激に「忖度」しかねない

2020年05月18日 12時15分38秒 | 政治のこと


検察庁法改正案」が衆議院内閣委員会で審議入りしたことに対して、ネットで「#検察庁法改正案に抗議します」のハッシュタグで、900万件以上のツイートが行われ、多くの芸能人や文化人が抗議の声を上げ、元検事総長など検察OBが法案に反対する意見書を法務大臣に提出し記者会見するなど、国民の反対の声が大きく盛り上がった。 

与党は、5月15日に強行採決の方針と報じられていたが、野党側から、武田良太担当大臣の不信任決議案が出され、審議は打切りとなった。18日からの週の国会での動きに注目が集まる。 

国会審議に、多くの国民が関心を持ち、活発な議論が行われることは大変望ましいことだが、本来、多くの国民にはあまりなじみがない「検察庁法」の問題であるだけに、基本的な事項についての疑問が生じることが考えられる。 

この法案の問題点については、【検察官定年延長法案が「絶対に許容できない」理由 #検察庁法改正案に抗議します】で詳しく述べたが、想定される基本的な疑問について、私なりに解説をしておきたいと思う。 


検察について基本的な疑問に答える
まず、第1の疑問として、今回、検察官の定年延長の問題が「三権分立」が問題とされていることに関して、 

安倍首相も言っているように、検察は行政機関でしょう。行政の内部の問題なのに、なぜ、立法・司法・行政の「三権分立」が問題になるの? 
という疑問があり得るだろう。 

それに対する端的な答は、 
確かに、検察も法務省に属する行政機関です。しかし、検察官は、起訴する権限を独占しているなど、刑事訴訟法上強大な権限を持っており、検察が起訴した場合の有罪率は99%を超えます。したがって、検察の判断は事実上司法判断になると言ってもよいほどなので、そのような権限を持った検察は、単なる行政機関ではなく、「司法的機能を強く持つ機関」と言うべきなのです。ですから、内閣と検察の関係は、内閣と司法の関係の問題でもあるのです。 
ということになろうかと思う。 


そこで考えられる第2の疑問が、 
検察に権限があると言っても、検察が起訴した場合は、間違っていれば裁判所が無罪判決を出すはず。検察の不起訴が間違っていれば、検察審査会が強制起訴の議決をする。だから、結局、検察がどう判断しようと結論に影響はないんじゃない? 
という疑問だ。 

この疑問には、刑事事件の捜査と処分の関係の理解が必要であり、以下のような説明が可能だ。 

検察官は、単に、刑事事件について起訴・不起訴を判断するだけではありません。検察官自ら取調べや他の証拠収集をした上で、起訴・不起訴を判断するのです。特に、政治家・経済人などの事件が告発されたりして「特捜部」が捜査する場合、もともと告発状だけで、証拠はないわけです。検察が積極的に捜査して証拠を集めれば起訴して有罪に持ち込めますが、逆に、検察が、ろくに捜査しなかったり、不起訴にするために証拠を固めたりすれば、「不起訴にすべき事件」になります。検察の不起訴処分に対して検察審査会に申立てをしても、証拠がないのだから「起訴相当」にはなりません。せいぜい「不起訴不当」が出るだけです。その場合は、検察が再び不起訴にすれば、事件は決着します。 


それに対して、次のような第3の疑問を持つ人もいるだろう。 
検察の捜査や処分に対して、政治的な圧力をかけようとしても、そもそも内閣には、検察官を解任する権限がないわけだから、検察の判断に介入することはできないんじゃない?内閣の判断で定年延長ができてもできなくても変わらないんじゃない? 

その点に関しては、検察も「官僚組織」であり、組織内で、上位の権力者に対する「忖度」が働くということが重要だ。次のような答になるだろう。 

検察も、法務省内に属する官僚組織です。法務省に人事権があるわけですから、どうしても法務省を通じて、内閣側の意向が検察に伝わり、それを「忖度」して、捜査や処分するということはあり得ます。それがどれだけ強く作用するかは、法務省幹部の考え方や姿勢によりますし、それを検察側でどう受け止めるかは検察幹部によります。法務省幹部が、内閣側の意向に基づいて、検察幹部に事件の捜査・処分について要請をすれば、後は、検察幹部の受け止め方次第ということになります。 
この第2の疑問と第3の疑問については、実例で説明しないとピンと来ないかもしれない。そこで、過去の事例の中から、解りやすい事例を挙げよう。 


甘利明氏に関するあっせん利得罪の事件
まず、第2の疑問に関して、検察官が告訴告発を受けた場合の「不起訴処分」に至るプロセスとして典型的なのは、甘利明氏のあっせん利得罪の事件だ。 
私は、この事件が週刊文春の記事で報じられた際に、あっせん利得罪が成立する可能性があるとコメントし、その後、詳細がわかった段階で「絵に描いたようなあっせん利得罪の事件」と述べ、2016年2月24日に衆議院予算委員会の中央公聴会で公述人として、「独立行政法人のコンプライアンス」を中心に意見を述べた際にも、この甘利氏の事件にも言及し、同様の見解を述べた(【独法URのコンプライアンスの視点から見た甘利問題】)。 

この事件が、その後、告発が行われ、刑事事件としてどのような経過をたどったのか、甘利氏がどう対応したのかは、(【甘利氏「石破氏への苦言」への”国民的違和感”】)で総括して述べている。検察の捜査と不起訴処分の意味を理解するための典型事例なので、是非お読み頂きたい。 


要するに、この事件では、甘利氏本人や秘書に多額の現金が渡ったことは明らかで、甘利氏自身もそれを認めて大臣を辞任していた。あっせん利得罪の刑事事件としてポイントとなるのは、甘利氏にURに対する「議員としての権限に基づく影響力」が認められるかであったが、URに関連のある閣僚ポストも経験した与党の有力議員としての甘利氏とURとの関係が、「議員としての権限に基づく影響力」の背景になっていると見ることが可能であり、甘利氏本人と秘書がS社側から多額の金銭を受領した事実を認めているのであるから、「議員の権限に基づく影響力を行使した」あっせん利得罪が成立する可能性は十分にある事案だった。 

ところが、弁護士団体の告発を受けて、東京地検特捜部が、この事件の捜査を行ったものの、UR側への家宅捜索を形だけ行っただけで、肝心の甘利氏の事務所への強制捜査も、秘書の逮捕等の本格的な捜査は行われることなく、国会の会期終了の前日の5月31日、甘利氏と元秘書2人を不起訴処分(嫌疑不十分)とした。その際、「起訴できない理由」に関して「検察の非公式説明」がマスコミで報じられたが、全く不合理極まりないものだった。 

その後、検察審査会への審査申立の結果「不起訴不当」の議決が出されたことからも、「国民の目」からも到底納得できないものだったことは明らかだったが、検察は再捜査の結果、再度、強引に不起訴とした。しかも、国会閉会の前日に、公訴時効までまだ十分に期間がある容疑事実についても、丸ごと不起訴にしてしまうなど、方針は最初から決まっていて、不起訴のスケジュールについて、政治的配慮したとしか思えなかった。 


検察審査会の議決を受けての検察の再捜査では、元秘書と建設業者の総務担当者とのやりとりが、同法の構成要件である「国会議員の権限に基づく影響力の行使」に当たるかどうかを改めて検討。審査会は「言うことを聞かないと国会で取り上げる」と言うなどの典型例でなくても「影響力の行使」を認めうると指摘していたが、特捜部は「総合的に判断して構成要件に当たらない」と結論づけたとのことだ(2016年8月16日日付け朝日)。 


この事件で、大臣室で業者から現金を受け取ったことを認めて大臣を辞任した後、「睡眠障害」の診断書を提出して、4ヵ月にもわたって国会を欠席していた甘利氏は、この不起訴処分を受けて、「不起訴という判断をいただき、私の件はこれで決着した」と記者団に述べ、政治活動を本格的に再開する意向を示した。 

この事件での検察の捜査・処分は、最初から、事件をつぶす方針で臨み、ろくに捜査しなかったり、不起訴にするために証拠を固めたりして不起訴にした典型的な例だ。当初の検察の不起訴処分は、「議員の権限に基づく影響力を行使した」とは言えないという点で、捜査が尽くされておらず、素人の検察審査会からも「不起訴が不当」とされたのだが、如何せん、捜査不十分なままでは「起訴相当」とは言えない、「もっと捜査を尽くすべきだ」ということで「不起訴不当」との議決が出たが、それを受けた再捜査をした上で、不起訴処分をされてしまうと、それで刑事処分は決着してしまうのだ。 

この事件では、検察の不起訴処分が、その対象とされた人物に犯罪の嫌疑を否定することの有力な根拠を与えたのであるが、それと同様のパターンになったのが、ジャーナリストの伊藤詩織氏が、安倍首相と親しいと言われる山口敬之氏を準強姦で告訴した事件である。検察は、警察から送付した事件を不起訴(嫌疑不十分)にした。これを受けて山口氏が、「検察の判断によって潔白が明らかになった」と堂々と主張した。しかし、その後、伊藤氏が起こした民事訴訟で、山口氏は一審で不法行為責任が認定されている。 


黒川官房長の「応答」
実は、甘利氏の事件の関係では、私は、事件が表面化した当初から、当時、法務省官房長を務めていた黒川氏と頻繁に携帯電話で連絡をとっていた。私は、黒川氏とは検事任官同期で、個人的に付き合いもあった。大阪地検の証拠改ざん問題等の不祥事を受けて法務省に設置された「検察の在り方検討会議」で、私が委員の一人として、黒川氏が事務局だったこともあり、話をする機会が多かった。それ以降、折に触れて、連絡を取り合っていた。 

この甘利氏の事件は、私は、検察不祥事で信頼を失った検察が、名誉回復を図る格好の事件だと思い、まさに、検察に、事件の組み立て、法律構成を指導し、エールを送るつもりで、事件に関するブログ記事を頻繁に発信していた。そして、黒川氏にも、電話で、私の事件に対する見方を伝え、「ブログに詳しく書いているから、読んでおいてくれ」と言っていた。黒川氏は「わかった。わかった。しっかりやらせるから」と、私の言うことを理解しているような素振りだった。 

一連のブログの中に、検察がURの事務所に対して捜索を行ったことが報じられた直後に書いた【甘利問題、「政治的向かい風」の中で強制捜査着手を決断した検察】という記事がある。結果的には、「告発を受けて捜査をせざるを得ない立場の検察が「ガス抜き」のためにやっているのではないか、という見方」が正しかったわけだが、このブログ記事で、私は、 

「政治的な強い向かい風」の中での強制捜査に着手にした東京地検特捜部の決断に、まずは敬意を表したい。そして、今後、事件の真相解明に向け、幾多の困難を乗り越えて捜査が遂行されていくことを強く期待したい。 
などと肯定的に評価し、期待を表明している。 

それは、URへの強制捜査のニュースを見て、すぐに、黒川氏に電話をしたところ、「取りあえずはここまでだけど、今後もしっかりやらせる」というような「前向き」の話だったからである。この時に限らず、私が黒川氏に電話して具体的事件のことを話した際、「自分は官房長なので、具体的事件のことには関知しない」などと言ったことは一度もない。ひょっとすると、私には「前向き」のことを言う一方で、自民党や官邸サイドには、真逆のことを言っていたのかもしれない。 

実際に、この事件に関して黒川氏が法務・検察の内部でどのように動いたのかは知る由もない。しかし、彼の言葉が、私を含めた「検察外部者」に、「検察の捜査・処分を、希望する方向に向けてくれるのではないか」との期待を抱かせる効果を持っていたことは確かなのである。 

緒方重威元検事長の逮捕・起訴と「官邸の意向への『忖度』」
そこで、検察の組織内で上位の権力者に対する「忖度」が働くのか、という第3の疑問である。「すべての事件を法と証拠に基づき適切に処理している」というのは建前であり、実際には、「忖度」が働くものであることを当事者が著書で明らかにした事件がある。 


2007年に、元広島高検検事長・公安調査庁長官の緒方重威氏が、朝鮮総連本部の所有権移転をめぐる詐欺事件で、東京地検特捜部に逮捕・起訴された。緒方氏は、著書「公安検察」(講談社)で、次のように述べている。 

当時首相の座にあった安倍晋三氏は、拉致問題をめぐる強硬姿勢を最大の足がかりとして宰相の地位を射止め、経済制裁などによって北朝鮮への圧力を強めていた。 


時の政権の意向が法務・検察の動向に影響を及ぼすことは、多かれ少なかれあるだろう。当事者として検察に奉職していた私もそれは理解できる。だが、今回の事件では、「詐欺の被害者」とされる朝鮮総連側が「騙されていない」と訴えている。強引に被害者を設定して私を詐欺容疑で逮捕、起訴するという捜査の裏側に、官邸の意向が色濃く反映したことは疑いようがない。まして私には、独自のチャンネルによって官邸周辺の情報が入ってくる。法律の知識がある人間なら誰もが耳を疑うような捜査に検察を突き進ませた大きな要因は、官邸と、その意向を忖度した検察の政治的意思であった。 

五三歳という若さで政権の座を射止めた安倍首相は、北朝鮮に対する強硬姿勢を最大の求心力とし、政権発足後も北朝鮮に関しては圧力一本槍の姿勢を鮮明にして人気を集めていた。当然のことながら、内政に関しても朝鮮総連に対して徹底的に厳しい態度で臨んでいた。 


そこに元検事長であり、公安調査庁の長官まで務めた私が登場し、まるで朝鮮総連の窮状に救いの手を差し伸べるかのような振る舞いに出た。これが明るみに出たため、安倍首相と官邸、さらには与党・自民党が激怒し、法務・検察は何としても自力で私を”除去”しなければならない必要性に迫られたのだ。それが実行できなかった場合、批判の矛先は法務・検察に向けられかねない。 

だから法務・検察は、東京地検特捜部まで動員して、徹底して荒唐無稽な容疑事実をつくりあげてでも、私たちを詐欺容疑で逮捕しなければならなかったのである。 
緒方氏は、元高検検事長であり、検察の組織内での捜査・処分の実情を知り尽くしている。その緒方氏が、「時の政権の意向が法務・検察の動向に影響を及ぼすことは多かれ少なかれあるだろう」と述べた上、検事長まで務めた緒方氏を検察が逮捕起訴した「大きな要因」が、「官邸の意向を忖度したこと」にあったと述べている。
 
同じ安倍政権下だが、当時の「第一次安倍政権」は、比較的短命で終わり、少なくとも「安倍一強」と言われる現政権ほどには政治権力は集中していなかった。しかし、当時でさえ、検察は、「官邸の意向を忖度して」検察幹部を詐欺罪で逮捕するに至ったというのである。 

もちろん、逮捕・起訴された当事者の言うことなので、すべて額面どおりに受け止めることはできないかもしれない。しかし、やはり、この事件の経過を見ると、通常、被害者側も処罰を望んでいるわけでもないのに、詐欺罪で立件する事件とは思えない。 
検察の「忖度」は、積極的に逮捕・起訴する方向にも働く
政治の意向への「忖度」が、検察の捜査・処分に影響を与える余地は、「事件をつぶす」という方向だけではなく、「人を逮捕・起訴する」という「積極的な方向」にも働くということを示しているものと言える。 


「内閣が検察幹部の任命権を持っている」と言っても、一度任命してしまえば、その検察幹部を辞めさせることはできない。これまでは、その職の終期は「年齢」という極めて客観的な事実によって決まっていた。それが、今回の検察庁法改正で、内閣の判断による検察幹部の定年延長ができるようになると、検察幹部の任期の「終期」を決められることになる。安倍内閣が、内閣人事局の設置によって他の官庁の幹部の任免を自由に決定できるのと同じような関係が、検察との関係にも事実上持ち込まれることになる。 

それは、政権への「忖度」が、検察の「暴走」につながってしまう危険もはらんでいるのである。


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安倍首相答弁は「中世の亡霊のよう」検察OB意見書:朕(ちん)は国家なり>ルイ17世

2020年05月18日 12時00分41秒 | 社会のことなど
朕(ちん)は国家である>ルイ17世

松尾邦弘元検事総長(77)ら検察OBが15日、法務省に対し、検察官の定年延長を可能とする検察庁法改正案に反対する意見書を提出した。その意見書の中で、安倍晋三首相(65)の国会での答弁を、フランスの絶対王政を確立したルイ14世が発言したとされる、「朕(ちん)は国家である」という言葉になぞらえ、「中世の亡霊のよう」と批判した件があった。

【写真】安倍首相、黒川検事長人事に言及「まだ決めてない」

意見書の1ページ目にある第1項の冒頭には、黒川弘務東京高検検事長が2月8日に定年の63歳に達し、退官の予定だったが、その直前の1月31日に、定年を8月7日まで半年間延長する閣議決定が行われ、同氏が定年を過ぎた現在も現職にとどまっているという事実関係が記されている。

そして2ページ目の第3項には「本年2月13日衆議院本会議で、安倍総理大臣は『検察官にも国家公務員法の適用があると従来の解釈を変更することにした』旨述べた」と事実関係を紹介。その上で「これは、本来国会の権限である法律改正の手続きを経ずに内閣による解釈だけで法律の解釈運用を変更したという宣言であって」と続けた。

そして、安倍首相の答弁について「フランスの絶対王政を確立し君臨したルイ14世の言葉として伝えられる『朕は国家である』との中世の亡霊のような言葉を彷彿(ほうふつ)とさせるような姿勢であり、近代国家の基本理念である三権分立主義の否定にもつながりかねない危険性を含んでいる」と批判した。

さらに「時代背景は異なるが」と、ただし書きを付けた上で、17世紀の政治思想家ジョン・ロックが著書「統治二論」で書いた「法が終わるところ、暴政が始まる」という言葉を紹介し「警告している。心すべき言葉である」とつづった。

 意見書は、森雅子法相宛てに書かれた。意見書を取りまとめた、元最高検察庁検事の清水勇男氏(85)は、保坂和人法務省大臣官房審議官に渡したと説明し「国会で大臣はいないけれども、戻り次第、きちんとお渡しするという確約を得た」と語った。【村上幸将】


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安倍政権が検察人事に介入した「黒川問題」の舞台裏 伊藤博敏

2020年05月18日 11時30分55秒 | 社会のことなど
安倍政権が検察人事に介入した「黒川問題」の舞台裏 伊藤博敏

奇襲”に出た官邸が閣議決定でごり押し 

[編集部]検察庁法改正問題が大きな社会問題になっている。ここに掲載するのは月刊『創』2020年5・6月号に掲載した伊藤博敏氏の署名記事だ。伊藤氏はこれまでも検察問題を追及してきたジャーナリストで、この問題についての第一人者の一人だ。以下、レポートをそのまま公開する。

「法務・検察」が、安倍晋三政権から検事総長人事に手を入れられ、タイムリミットの今年7月まで思い悩む状況が続いている。軍門に降って黒川弘務東京高検検事長を検事総長に就けるのか、それとも稲田伸夫検事総長が留任して、官邸の思い通りにはさせずに意地を見せるのか――。

 騒動の発端は定年延長問題だった。高検検事長の定年は63歳。今年2月8日に63歳を迎える黒川氏は、2月7日までに退任、次の東京高検検事長は、名古屋高検検事長の林真琴氏になるのが既定の路線だった。林氏は、自身の定年が今年7月なので、それまでに稲田総長が退任して、早くから「検察のプリンス」と呼ばれた林氏が検事総長に就任することになっていた。

 ところが官邸は“奇襲”に出た。1月31日の閣議で、国家公務員法に基づき、黒川氏の定年を半年、延長した。これがいかにごり押しだったかは、その後、1981年に提出された国家公務員法の改正案の際、当時の人事院任用局長が、「(国家公務員法は)検察官には適用されない」と述べていたことで判明。その答弁との矛盾を質された森雅子法相は、「承知してない」と答え、政府内できちんと検証されていないことが明らかになった。

 その後も、人事院の給与局長が「(検察官に適用されないというのは)現在も同じ」と述べるも、その後、撤回。今度は、安倍首相が「政府解釈を変更する」と開き直り、その泥縄の対応に国民は呆れた。

 そうまでして官邸が黒川氏にこだわったのは、官邸の意向を忖度する得難い法務官僚だったからである。法務・検察にも政界担当がいて、官房長、法務事務次官が務めるが、黒川氏はその職責に7年半もいて、ことに安倍官邸との信頼関係は抜群だった。

 定年延長までには伏線があり、「官邸は、黒川検事総長を望み、辻裕教法務事務次官を通じて、2月7日までに退任するよう稲田総長に迫っていた」(検察関係者)という。だが、4月に京都で行われる5年に1度の国連犯罪防止刑事司法会議(京都コングレス)を仕切りたい稲田氏は聞く耳を持たなかったし、総長人事を政治に渡すつもりもなかった。

「安倍一強」の官邸だが、さすがに総長を辞めさせる権限はない。稲田―林路線が決定的になったと、林氏が名古屋を離任する準備を進め、黒川氏が退任後の就職先を探している最中、定年延長が閣議決定された。
 ベテラン司法記者は、「1月15日の河井夫妻への強制捜査が引き金となった」という。

「『週刊文春』が報じた河井克行前法相と妻の河井案里参院議員の公職選挙法違反疑惑は、告発が出され受理した以上、捜査するのは当然ながら、国会開会直前、任意でも済むものを強制捜査することはないじゃないか、という怒りを菅(義偉)官房長官が持った。政界捜査のゴーサインを出すのは総長。それで、『やはり稲田じゃダメだ。黒川を持ってこい』ということになった」(同)


 河井法相は、菅氏を囲む「向日葵の会」の代表で、菅氏が法務・検察に打ち込んだ楔だった。同時に、案里氏は、第一次安倍政権後、安倍氏を「過去の人」呼ばわりした対立候補の溝手顕正元防災担当相に、安倍氏が送り込んだ刺客。河井夫妻への家宅捜索は検察が踏んではならない「虎の尾」だった。
 稲田氏が政界に距離を置き、意地を見せるとすれば半年後の黒川氏の任期切れまで居座るしかないが、そこまで政権との関係をこじれさせるのは官僚として難しい。そうなると黒川総長の誕生か。

 「黒川問題」を振り返ってみよう。


検察スキャンダルで調整能力を発揮
 
 まず前提として、検察庁は行政官庁である法務省の特別機関という位置づけながら、準司法的な性格を併せ持ち、政官界を捜査する地検特捜部を置いていることから独立性を認められてきたという歴史がある。

 ところが、2014年に「霞が関」の幹部級人事を握る内閣人事局が設置されて以降、他省庁並みに法務・検察の人事に官邸が口を出すことが多くなった。その端的な例が、黒川氏の重用である。

 黒川氏は、司法修習35期で83年、検事に任官するが、同期でライバルの林氏とともに、早くから総長候補と目される逸材だった。同じ司法修習同期で弁護士の郷原信郎氏の「黒川評」がわかりやすい。

「彼は交渉術にたけている。敵をつくらず、冗談を言いながら、一つの方向に話をまとめる類い稀な能力がある。『人たらし』だ。そんな検事はなかなかいない。政権にとっては非常によく仕えてくれた官僚だ」(「東京新聞」3月18日付)
 政権にとって必要な法務官僚だったが、検察庁にとっても非常事態の収拾に、その調整能力が必要とされた検事だった。「類い稀」と評される黒川氏の能力が発揮されたのは、10年に発覚した検察スキャンダルである。

 それまでの検察捜査の在り方が、全否定されたのが郵便不正事件だった。
 大阪地検特捜部は、09年、障害者団体の郵便法違反事件を摘発。これに厚労省の村木厚子局長(当時)が絡んでいたとして逮捕、起訴したものの、証言は不確かで指示は認められないとして、無罪判決が言い渡された。
 その直後の10年9月、「朝日新聞」のスクープで証拠物件のフロッピーディスクが書き換えられていたことが発覚。当事者の特捜部主任検事と上司の副部長、部長が逮捕され、検察への信頼は地に落ちた。

 同様に、東京でも特捜部の強引な「小沢一郎捜査」への批判が高まっており、大阪の証拠隠滅事件は、検察批判、特捜批判に拍車をかける結果となった。

 民主党幹事長だった小沢一郎氏の政治資金規正法違反事件は、小沢氏の秘書らが政治団体「陸山会」の政治資金収支報告書に虚偽記載を行ったとされるもので、東京地検特捜部は、10年1月、元秘書の石川知裕代議士(当時)らを逮捕。虚偽記載の指示が小沢氏からなされたものであるという見込みのもと、厳しく捜査したが、供述を得ることはできず、小沢氏を不起訴処分とした。

 この捜査の過程においても、担当検事の虚偽捜査報告書問題が発覚、市民団体から刑事告発を受ける事態に発展した。大阪とは違い、刑事事件に発展することはなかったものの、特捜捜査に問題があることが認識され、その後の「特捜改革」に繋がった。
  地に落ちた信頼を回復すべく、法務・検察は、10年10月、法務大臣の私的諮問機関として「検察の在り方検討会議」を置くことになった。この時、事務方を任されたのが黒川氏である。


特捜改革の最中に政界窓口に
 
 黒川氏は、任官後、東京、新潟、名古屋などの地検を回り、大臣官房秘書課長、大臣官房審議官などを歴任、10年8月から松山地検の検事正を務めていた。わずか3カ月で呼び戻されるあたりに、「検察の危機」を乗り切るに相応しい交渉術、調整能力を持っていると見なされていたことがわかる。

 以降、黒川氏は地方に出ることなく、法務官僚として検察改革を含む司法制度改革に関与することになる。一方で、検察庁は、10年12月、「捜査畑」の長い笠間治雄氏を検事総長に据えて、「特捜改革」に踏み出した。

 11年7月に発表された特捜改革は、組織改革を伴うもので、捜査権力を弱め、独自捜査を少なくし、他の調査・捜査機関との連携を深めることで監視機能を緩めない、というものだった。


 具体的には、政界などの独自捜査を行う特殊・直告班を2班から1班体制にし、脱税や証券監視取引犯罪などを担当する財政経済班を強化し、証券取引犯罪や警視庁の汚職犯罪などで連携する経済班と、脱税事件専門の財政班に分けた。

 同時に、狙い通りの調書を強引に作成、事件を無理に組み立てる捜査手法への反省から録音録画の「可視化」を採り入れることになった。それまでは、耳元で怒鳴り上げ、土下座を強要、顔に当たらない程度に辞書や灰皿を投げつけて恫喝、といった手法がまかり通っていた。調書至上主義のもとでは「自白」が欠かせないからだ。
 当時、笠間氏は親しいベテラン司法記者にこう語ったという。

「しばらく大きな事件はやらせない。まず、失われた信頼を回復させることが先決。可視化すれば立件は難しくなるかも知れないが、しばらくはリハビリ期間だ」
 特捜改革の最中に黒川氏は、政界窓口となる。11年8月、大臣官房長となり、12年12月の総選挙で民主党政権が倒れ、自公政権となっても官房長を続け、在任期間は16年9月までの5年に及んだ。さらに、次のポストが法務省トップの法務事務次官で、やはり政権とのパイプ役。19年1月、法務・検察ナンバー2の東京高検検事長になるまで次官職にあったので、都合7年半、ロビーイング能力を発揮したことになる。

 この間、検察にとって必要だったのは、「可視化」によって難しくなる自白調書の“代わり”になるものだった。カメラが回り、恫喝も誘導も難しくなった取り調べで、罪を認めさせ、捜査に協力させるにはどうすればいいか。求められたのが「司法取引」である。

  録音録画の法制化などは、法制審議会に諮問され、刑事司法制度特別部会などで話し合われた。その結果、最終案に録音録画の可視化とともに、円滑な捜査を可能にする司法取引、通信傍受の拡大も明記された。


「官邸代理人」としての黒川氏の存在
 
 法務官僚として、こうした動きを主導したのは黒川氏である。法務省は、国会に刑事訴訟法と通信傍受法の改正案を提出。いずれも16年5月に成立し、16年6月に証拠開示制度の拡充、18年6月に司法取引の導入、19年6月に電話やメールの通信傍受(盗聴)が可能になり、完全施行された。

 こうした刑事司法制度改革が、どれだけ捜査を変えたかはカルロス・ゴーン事件で明らかだ。すべての権限を一手に握り、背任や横領であっても合法的なしつらえをし、ブラジル、レバノン、フランスと、3ヵ国の国籍を持つゴーン被告を逮捕できたのは、外国人専務執行役など最側近が司法取引に応じ、内情を暴露したからに他ならない。

 また、改正通信傍受法によって、ほとんどの犯罪の電話やメールの通信傍受が可能になり、通信会社に記録を提出させられる一方、警察に居ながらにして盗聴もできるようになって捜査能力は向上した。

 捜査能力の向上に資する法改正に取り組みつつ、法務事務次官時代にはテロ等準備罪の創設を柱とした改正組織犯罪処罰法の成立にも尽力。政権にとっても使い勝手が良かった。ただ、それが、マイナスに働いたといわれているのが特捜捜査である。官房長、法務事務次官時代の7年半、ほとんどの政治家案件は不起訴処分で終っている。

「法務官僚である官房長や次官に、検察捜査に口出しする権限があるわけじゃない。だが、『官邸代理人』とまでいわれ、菅義偉官房長官や杉田和博官房副長官にガッチリ食い込んでいる黒川氏は、捜査状況を官邸に上げる。それが捜査現場へのプレッシャーとなって政界には踏み込めなかった」(検察関係者)
 それでも捜査には事欠かず、リハビリ期間中の特捜部には、公職選挙法違反、政治資金規正法違反などの証拠が残りやすく、着手しやすい案件が、多数、もたらされた。

 医療法人徳洲会を巡る徳田毅代議士(当時)の公選法違反事件、徳洲会事件を端緒に浮かび上がった現金5000万円を受領した猪瀬直樹元東京都知事の公選法違反事件、選挙区に似顔絵入りうちわを配っていた松島みどり法相(同)の公選法違反事件、後援会を東京・明治座の観劇に呼び、その差額負担が問題となった小渕優子経産相(同)の政治資金規正法違反事件、渡辺喜美・みんなの党代表(同)が、化粧品のDHCオーナーから8億円を受領しながら報告書に記載しなかった政治資金規正法違反事件……。

  政治家本人が立件されたのは猪瀬氏だけで、それも略式起訴。徳田氏は連座して退任したが、罪に問われることはなく、小渕、松島、渡辺氏らは不起訴処分だった。


官邸代理人」のほかに「腹黒川」という異名 

 極めつきは、16年1月、「都市再生機構に口利きをお願いした」と、業者が音声データや写真をもとに告発、あっせん利得処罰法や政治資金規正法に違反する疑いが濃厚なのに不起訴処分にした甘利明経済財政担当相(同)の疑惑だろう。この時も「官邸代理人」としての黒川氏の存在が取り沙汰された。

 検察内部の好意的に黒川氏を捉える人は、「甘利事件などの特捜案件に口を利いたというけど、黒川さんの職責は、官房長や次官で法務省には権限があるが検察にはない。逆に、東京高検検事長になって地検特捜部を指揮する立場になると、捜査に歯止めをかけるどころか積極派になった。秋元司内閣府副大臣を逮捕、起訴したカジノ事件でも、17年ぶりの政治家逮捕を容認した」という。

 確かに、「持っている」と評判の森本宏特捜部長は、就任後、リニア談合でスーパーゼネコン4社を摘発。その後、文部科学省キャリア官僚の贈収賄事件、日産元会長のカルロス・ゴーン事件、秋元司代議士のカジノ事件を手掛け、「政官財の監視役」という特捜の復活を印象付けた。

 このうちゴーン事件は司法取引を使ったという意味で、法務官僚としての黒川氏の功績であり、カジノ事件を指示したのは前述の通り。「捜査を止めるという評判の黒川さんですが、意外に現場の森本さんとの仲は良く、互いがうまく利用しあっている感じです」(検察担当記者)という見方もある。


「官邸代理人」のほかに「腹黒川」という異名を持つ黒川氏は、かつて「ワルは官僚の誉め言葉」といわれたように、面従腹背の人なのかも知れない。政治家に表面的には従いながらも、最後は自分を通し、官僚としての本分を果たす。黒川批判が気になるのか、「俺だって、問題が発覚すれば自民党代議士も逮捕する」と、漏らすこともあるという。

 そうあるべきだろう。森友学園問題に絡み、文書作成に関わった財務省近畿財務局の職員が自殺、その手記が公表され、国民はその悲痛な叫びに胸を打たれ、そう忖度させた安倍政権と不起訴処分にした検察に、改めて不審の念を抱いた。

  検察に対する国民の厳しい目は、期待の裏返しであり「権力の周辺にいるワル」を摘発できるのは検察だけある。総長になった時、黒川検察はその要望に応えることが出来るのか。問われるのはそこである。

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黒川氏が68歳まで定年延長可能になる自民・維新の検察私物化法案、石破氏が採決強行反対を表明

2020年05月18日 11時00分50秒 | いろいろな出来事

黒川氏が68歳まで定年延長可能になる自民・維新の検察私物化法案、石破氏が採決強行反対を表明 

検察定年延長、採決強行に反対 「安倍首相が説明を」―自民・石破氏
2020年05月11日21時16分

 自民党の石破茂元幹事長は11日のBS―TBSの番組で、
検察官の定年を引き上げる検察庁法改正案をめぐり与党側が週内の衆院通過を目指していることに対し、
 「(採決の強行は)あるべきではない」と反対の意向を示した。「安倍晋三首相が(国会に)出てきて説明すべきだ」とも語った。


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